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文にあたる

今日は、最近読んだ本のご紹介です。


「文にあたる」 牟田都子 著


校正者が校正の経験を綴ったエッセイ。
私たちが知らない校正者としてのやりがいや苦悩が詰め込まれています。

校正という仕事が知れるのはもちろん、仕事への向き合い方を考えさせられます。


「費やされた時間は建築物の筋交いのように見えないところで文章を強靭にする」

『文にあたる』牟田都子


校正の中には、「校閲」と呼ばれる事実関係を調べる仕事があります。
新聞やノンフィクションの作品ではこの事実確認は極めて重要ですが、小説やエッセイなどは作品の世界観や物語の展開が優先され、どこまで正しさを追及するかは編集者や著者に判断が委ねられます。
校閲者が事実確認をし、正しくないと判断して指摘しても、編集者と著者は直さずそのままにすることもあるそうです。
私が校閲者であれば、「無駄だったな」とか「指摘するべきではなかったかな」と落ち込むかもしれません。
「事実と違うのに」とちょっと怒ってしまうかもしれません。
しかし、指摘することは無駄ではないと言うのです。
例えば、読者に誤りを指摘されたとしても、「あえてこう書いた」という説明がはっきりとできるようになるのです。
校正者と編集者と著者の3者のやり取りを繰り返し、ひとつひとつ選択をしていくことで作品が作り上げられていくという過程があるということに感動しました。
自分が行動することで、それが目に見える形で結果が現れなくても、何かを支えられるかもしれない。そう信じて仕事ができたら強くなれると思いました。



私がこの本を読もうと思ったのは、校正というお仕事に興味があり、ずっとやりたいと思っているからです。
実際読んでみて、やっぱり面白そうだなという気持ちと、私には無理かもしれないという気持ちが両方生まれました。
何日間も粘り強くたった数行の文章に向き合うことができるだろうか。疑う力が弱い私に校正者が務まるのだろうかと。
資格の勉強をしているとき、正直時間がかかり過ぎると思いました。言葉と向き合うことは楽しいが、仕事として成立するのだろうかと。
本当に大変なお仕事だなと実感しました。
その分、お仕事のやりがいも感じられて、それもまた魅力でした。

校正というお仕事を知りたい方、お仕事との向き合い方について考えたい方、言葉が好きな方、本を読むことが好きな方に、ぜひおすすめの作品です。


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