見出し画像

知識ゼロから Zoomオンライン演劇を 生配信で上演した話①

オンライン演劇 リーディング『音の世界』生配信の、裏側。

(有料設定をしてますが、最後まで公開しています)

ようこそ。こんにちは。読んでくださって、ありがとうございます。

この『音の世界』を上演するにあたって、
Celebration of Possibilities というユニットを立ち上げた、西村壮悟です。
肩書きは、演劇人、俳優、演技コーチ(マイズナーテクニック)、父親です。

『音の世界』では、企画・演出・出演をしました。
出演以外は初めての挑戦。自分がやりたいからやりました。


このシリーズでは、オンライン演劇 リーディング『音の世界』にまつわる様々な話を書いていきます。


演劇をよく知らない方にも興味を持ってもらいたくて配信を企画したわけでもあるので、noteでも同様のスタンスでいきたいです。
同時に、自分が得た知識を他の演劇人にシェアするのも目的のひとつなので、ところどころ専門的な話もするはずです。


オンライン演劇 リーディング『音の世界』とは?

『音の世界』は5月27日と31日に、ZoomーYouTube Liveで生配信にて上演されました。

上演は終了しましたが、6月末まで、アーカイブ映像を公開しています。ぜひ見てください。本編30分ほどの短い作品です。



配信する時間に俳優たちがZoom上に集まって、リアルタイムで演じました。
録画ではないです。

「ドラマをカットなしで撮って生放送する、みたいな感じ」
と言えばイメージできるでしょうか。

本番ではミスもありました。
配信開始直前にちょっとしたテクニカルトラブルが起こり、「時間どおり開演できるか?」と焦った瞬間もありました。
それもこれも、その時間に生配信だからこそ、のことです。

公演情報はこちらです。あらすじや出演者紹介も読めます。


そもそも、オンライン演劇とは何か?

自粛で劇場が閉まった3月以降生まれたもので、稽古場や劇場に集まらず、オンライン上で演劇作品を作り、オンラインで上演(動画配信)する、表現方式です。

直接人と人が集まらず、画面を介して上演するものが「演劇」と呼べるのかは、人により考えが分かれるようです(観客、作り手ともに)。


なぜ、オンラインで演劇?

自粛要請で劇場が閉鎖され、演劇界全体が活動を停止しました。僕も出演予定だった舞台がなくなり、教える仕事も継続困難になりました。


そんななかでも、何か演劇や演技に関することをやりたい。


すると、Zoomでオンライン読み合わせにトライする機会が。

村井義幸さんと、このツイートを見た戯曲組さんと、三人でZoomに初挑戦。青空文庫の岸田國士の『ここに弟あり』を読みました。
このときは「まぁ、一緒に読むくらいならできるな」くらいの手応え。
この第一歩があったから、Zoomでお芝居を上演することができました。
村井さんと戯曲組さんには感謝です!それからこのツイートをRTしてくれた黒澤世莉さんにも。

しかし、あらためて見るとこのときから『音の世界』上演まで2ヶ月かかったんですね。
動きが早いわけでは全くなかったですね・・・。

そして自分でも戯曲を読む会を開催。
もともと「本よむかい」という会を不定期で開催していました。

自分がやりたいんやったら、
そんな場を欲している人がいつでもいるんやから、
やってまえ。



読み合わせができることは分かっていたので、試したいことが生まれました。
ーある程度作品を理解したうえで、セリフの意図をハッキリ明確に出すことを意識したら、どこまで面白くなるか?


Zoomで戯曲を読んでみての考察

まぁ、これはオンラインじゃなくてもお芝居では普通に、必要な意識です。

ですがそこには、こういう考察がありました。

オンラインの画面越しでは、演技で大事な「相手を受ける」ということが難しい。
小さな画面のなかの相手の表情から相手の内面は読み取りにくく、相手が纏う空気は感じられない。
(しかも皆たいてい目線はテキストに向かっている)
相手の言葉が唯一の手がかりと言ってもいいが、
音声もリアルよりは劣っているので、言葉の下にある意図や感情も聞き取りにくい。
どうしても、受信より発信中心になってしまいがち。

ー ならばいっそのこと、発信をもっと強く意識してやれば、
伝わるんじゃないか?


俳優にとって怖いことのひとつが、オーバーアクティングです。
「大げさ」と思われるのが、ものすごく嫌。
自分が「本当だ」と思えるのがひとつの基準で、ともすると等身大の自分の演技に収まってしまいがち。それでは相手役や見てる人には伝わらないこともあります。
オンラインでは余計伝わりにくいのならば、
そこは大げさでもいいから思い切ってハッキリ「こうだ」とやってみればいい。
自分の気持ちに嘘がないかと内向きになるより、失敗を恐れず相手を動かそうとすればいい。



良い戯曲には、セリフのなかに登場人物の行動が書かれています。
感情や心理描写だけでない。
他の登場人物を動かしたい、役の人物はそのために言葉を喋ります。
そう設計された戯曲を選んで、ちゃんと読解をしていけば、オンラインでも面白いものが出来るかもしれない。
そんなことが分かりました。
(というか、そう書かれてない本は、劇場でやってもあんまり面白くないでしょうが)


WSか創作か。それが問題だ。

他にも、戯曲読解やマイズナーテクニックのオンラインWSのトライアルもZoomで開催しました。
アナログな演劇界も、今オンラインレッスンが増えています。
(僕が留学したイギリスでは、たいていの演技コーチのWebにはオンラインレッスンの案内がありました)

個人的なことを少し話すと、娘の保育園も休園なので、日中は僕が面倒を見なければいけません。
時間をなんとか作って、何ができるか、何が面白いか、色々と試していました。
この色々試した時間が、初めてZoomで読み合わせ~『音の世界』上演まで二ヶ月かかった理由のひとつでした。

お金に結びつけるなら、質の高いオンラインWSプログラムを作るほうが早かったかもしれません。

でも ブログにも書いたように、創作することを選びました。


「仕事がなくなった俳優からそれなりの金額を取るWSを今するのは気が進まない」
これは何かWSができるか考えていたときに実際あった思いです。
仕事、あるいは副業も影響を受けているこの時期に。かと言って、無料で提供し続けるのも違うので、教えることにモチベーションが高まりませんでした。

もちろん、これは僕の個人的な考えです。
今を学びの時間にあてたいという人も沢山いるし、WSやオンラインレッスンを開催している人を否定するつもりもないです。
ただ、僕がいまひとつ気乗りしなかっただけの話。

SPAC芸術監督の宮城總さんの言葉にも共感しました。
こうやってメッセージを発信してくれる方がいてくれるのは本当にありがたいです。


この時間を使うなら、創作がしたい。演出をやりたい。
そっちの方が自分にはチャレンジだし、スリリングだ



演劇を作るのが難しいときだからこそ、
演劇を作りたい。


今ある制限のなかで、Zoomという新しいツール(おもちゃ)で創作し(遊び)たいという欲求が強くなりました。


理由はほかにも

「手軽に予算をかけずに挑戦できる」ことも、
正直言うと、後押しをしました。
劇場費は演劇公演の予算の多くを占めますが「失敗したら何百万の借金を負う」なんて状況で人はそうそうチャレンジできるものではありません。
一方、Zoomの会員費¥2000/月。
つまり、失敗がしやすい!
飛び込みやすいわけです。

「何かやるから見て欲しい!」もありました。
演劇が上演されなくなったということは、
演劇を楽しみにしてくれていたお客さんたちが、観る機会を失った、
ということです。
そんな方たちに楽しんでもらえる、中身のあるものを届けたかった。

そしてもうひとつ。
「演劇をよく知らない方にも興味を持ってもらいたい」
演劇はお客様に決まった時間に会場まで来ていただいて、お芝居を生で観ていただきます。
これが魅力でもあり、ハードルでもあります。
映像であれば、直接劇場まで観に来れない人/観に来ない人にも、
見てもらえる。
この違いは圧倒的です。
新たな観客にリーチできる可能性があることも魅力のひとつでした。

しかし実際のところ、演劇を普段観ない層に訴求するための宣伝活動は全くできませんでした。
また、なるべく気軽に見てもらうために今回の配信を無料(カンパ制)としたのですが、そのために出演者たちに十分な報酬を払えないことも、今回残った課題です。


今回は、Zoomで何か演劇作品を作ってみようと動き出した経緯を書きました。
次は、製作・稽古のなかでどんなことをしたのかを書きたいと思います。


(記事は最後まで読めるようにする方針ですが、もしも気に入ったら是非、
購入というかたちでご支援をお願いします。あるいは下記ページでもカンパをしていただけます)

こちらの公演情報でも、あらすじ等が読めます。


ここから先は

0字

¥ 300

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

ご支援ありがとうございます!いただいたお金は今後の活動費に当てさせていただきます。