効果を期待できるタイプは? 科研費「請負人」ではないけれど。(2/4)
科研費等競争資金の文書対応をしていながら、科研費取得の「請負人」にあらず、と前項にて申し上げました。少し勇気がいりましたが、何をしているのかを具体的に説明するには、必要なことであると考えております。
その大きな理由としては、資金の獲得は、結局は研究計画そのものの質に依存するからです。このようなことを書くと、身も蓋もない感じになってしまいますが、ここはきちんと説明しておきたい部分でもあるので、以下で述べます。
競争資金の申請書における大事な要素は何でしょうか。研究計画の質、内容が資金の目的に合致していることや、申請者が計画遂行のための十分な能力があることの裏付けとなる実績など。これら重要な情報を、文書上で明確かつ論理的に示すことがカギとなると当方は考えます。
下図は、縦軸に①研究計画の質と、横軸にその内容をきちんと伝える②文章の質--を取って説明したと思います。資金獲得に最も近いのは、研究計画も文章の質も高い、☆印が書かれている右上のカテゴリーだと考えられます。
これに対し色をつけた部分が、当プロジェクトに参加することで、より高い効果を期待できると。色が濃くなるほどに、高い効果を期待できるカテゴリーとなります。色が最も濃い部分は、研究計画・内容の質が一定程度ありながら、文章に改善の余地が多く存在するケースです。言い換えると、文章をきちんと書ききれていないために、研究計画のポテンシャルが査読者に伝わらないリスクが高いということになります。
以前の当欄で、当プロジェクトのきっかけとなったエピソードについて触れました。書いてあることが分かりづらく、とても損をしていると感じたのです。研究計画は分野横断的な内容であり、依頼者に聞き取りをして最終的に理解できた内容は、全くの素人の私も読んでいてワクワクしました。もちろん、その計画自体のクオリティが高いのかどうかは分かりませんでしたが。少なくともこの文書の筆者(および共同研究者)は、文章の書き方で大きな損をしていたわけです。ちなみに、編集を依頼してきたのは筆者(研究代表者)の方ではなく、共同研究者の1人でした。その方は、申請文書の書き方に課題を感じていたものの、直接に指摘することは遠慮している様子も伺えました。
当然のことながら、研究計画の質について当方としては判断しようがありませんし、すべきでもありません。しかし、研究計画の質については、申請書である筆者ご自身がある程度わかっていることではないでしょうか。当方としてましては、プロジェクトにご参加いただいた方の文書に対しては、常にベストを尽くして筆者が意図するところをきちんと文字に置き換えるべく、伴走させていただいております。
いっぽう、上記マトリックスで無色の部分はどうでしょうか。中身が薄い場合に、文章でカバーすることははっきり言って難しいです。むしろ、文章で粉飾してしまうと、中身の薄さが目立ってしまうかもしれません。
それでも、文章を練っているうちに、筆者の頭の中で議論そのものが練られ、研究計画が深まる可能性はあるため、「?」としておきました。「理系研究者のための文系伴走者」でのエディットは、当方からさまざまな質問や指摘を投げかけながら進めますので、その際に筆者の方の中で言語化されていない情報が引き出されることがあるためです。文章をまとめるということは、単に字を書くことではなくて、ロジックを構築していくことなのです。
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