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#10 ポシュロウの人たち【濱田 唯さん】

「最後に何枚か写真を撮らせてください!」


そう言って私はカメラを取り出した。

 
カメラを向ける、向けられるというちょっぴりの恥ずかしさがお互いありながらも、唯さんは軽やかな足取りで街を歩き、優しい笑顔で、堂々と写真にうつった。
 



その姿はまるで唯さんの言う「ゆるさ」そのものだと思った。
 
 
 

今回はそんな、監修者のひとりである濱田唯さんにお話しをお伺いしました。


濱田 唯(Hamada Yui)
ソーシャルワーカー/大学教員/相談室バオバブ運営者

アメリカミネソタ州でソーシャルワークを学ぶ。帰国後、精神障害者支援のNPO団体に勤務。独立後、相談室バオバブを開始。現在は大学教員として働きながら、個別相談、精神医療の権利擁護事業などに参加。

【好きな事】
海外一人旅。外国の屋台でビールを飲むこと。あと焚き火。

【苦手な事】スケジュール管理。


”唯さんとポシュロウの在り方”

山本:
改めて唯さんが何者なのかというのを表現いただくとしたらどんな感じでしょうか。
 

唯:
私の肩書は「ソーシャルワーカー」で、
精神保健福祉分野のソーシャルワーカーになります。
経歴としては、精神障害のある方の通所型作業所に9年勤めて、それを2年前にやめてフリーランスになって、精神医療の権利擁護団体の事務局をやりながら、自分で相談室バオバブというものを始めました。そして今年の4月からは大学で教員として働くようになって、今まで委託でもらってた仕事も全部やりたいと思って、ポシュロウも含めて全部やり続けております(笑)
 

山本:
休みあります?(笑)
 

唯:
とんでもないことになってしまって(笑)

これをどういう風に自分の中でバランスとっていくかっていうのは今考え中です。
でもありがたいことに、好きなことを仕事にしている感覚があります。個別相談を受けて、権利擁護について考えて、さらに大学生に教えることができるようになって。このまま全部続ける道を、現在模索中です。
 
 
山本:
じゃあ今絶賛、アジャスト(調整)期間という感じなんですね!
どうですか?自分の中で、そんな風に新しいこと取り入れたり、アジャストしていく期間も楽しかったりするんですか?
 

唯:
はい!私はキャリアに関しては行き当たりばったりが強くて、ご縁があるものは受けていきたいというのはあるので、どうしてもパンパンになるということがあって。
今回も教員というもののご縁をいただいて、それもやってみたいし、これもやってみたいし、「わっーー!!汗」みたいなのは、いつも通りと言えば、いつも通り。
でも後から整っていくだろうなとは思っています(笑)
 
 
山本:
僕も結構、こういう目的に向かってこういうプランで、こういうキャリアつくります!というよりは、いわゆるプランドハップンスタンスと呼ばれるような、行き当たりばったりというか、ご縁みたいなものと自分の在りたいを重ねていく感じなので、とても共感します!
そんな中で、ポシュロウの動画監修に入っていただいているわけですが、
実は和美さんから最初ご紹介だったんですよね。どんな感じの紹介だったんですか?
 

唯:
「直さん合うと思うよ~、どう?」みたいな(笑)
 

山本:
そんな感じ?(笑)
 

唯:
その時に和美さんにポシュロウの説明をされたけど、実はあんまり覚えてなくて(笑)
なんかわかんないけど楽しそう!みたいな、仕事の紹介というよりは、人の紹介という感じでした。
 

山本:
そうだったんですね(笑)
 

唯:
しかも私は、誤解されるとあれなんですけど、ベースとして就労支援にあんまり興味がなくて。前提として、人は、辛いなら働かなくて良いと思うくらいの感じだから、
あんまり就労支援に携わったことがなくって、もしかしたら興味ないかも知れないなと思ってました。
で、会ってみたら、直さんはいい人だから、とりあえずやってみようと思って。
そしたら、こんな面白いコンテンツだったのか、みたいな感じです。
 

山本:
へえ!それはなんだか嬉しい感想だなぁ。
改めて具体的なポシュロウの内容を聞いていただいてサービスとしてどう感じましたか?
 

唯:
最初は、就労支援というものだから、きちんと目的を明確にして、そこにいくためにステップアップ!みたいなものをコンテンツとして想像していて。
でもそしたら、最初から雰囲気が良い意味でゆるいというか、「無理に頑張らない」みたいなところをすごく感じて。
私のコンセプトと合っているなと。そういう形のコンテンツに私は関わりたいなと思った記憶があります。
 

山本:
僕もそういう意味では、最初に唯さんとお話したときに、ポシュロウってこういうサービスになるかもな、と明確になったというか。
唯さんと話して「自分の大切にしたいのはここだよな」と改めて自分のベースに立ち返れた気がします。
 

唯:
それは良かった!
私自身、それまで就労支援というものをあまり好きじゃなかったんだけど、個別相談を始めてから、世の中には、すごく仕事をしたいんだけど、あと一歩のところでそれができなくて、いつ折れてしまうだろうと不安を抱えながら働いている人がたくさんいるっていうのに気付いたんですよね。
だからそういう人たちが、今力を入れている場所と違う場所に少しに力を入れるとか、そこは力入れなくて良いからちょっと置いておくみたいなことにちょっと気付ける機会があったらいいなと思っていたので、それも含めてポシュロウに参加できてよかったなと。

山本:
僕はカレーが好きなので、しばしば稚拙にカレーに例えてしまうんですけど(笑)
カレーって、ただ旨味とか、辛味でおいしくなるわけではなくて、本当においしいものにしようとすると、甘味とか、酸味とか、苦みとか、いろんな味をさせることで、カレーとしてコクや深みがでるんですよね。

話を戻すと、唯さんの元々あった、就労支援ってあんまり興味ないかもっていう視点って、ポシュロウにとってはすごい深みを与える、いいスパイスというか、隠し味の一つなんじゃないかと、思います。
いろいろあって良いと思うんですが、就労支援!!みたいな人だけが集まっていたら全く違ったものになっていた気がしますね。
 

唯:
ちょっと苦しくなっちゃうかも知れないですよね。
 

山本:
思想のベースを社会モデル(*障害は人にあるのではなく、個と環境と相互作用によって生まれているものであるという考え方)で在りたいと思いつつ、結局社会に寄せていく方法はこうです!みたいな、そういう怖さがずっと僕の中にはあって。唯さんのような方が入っていただいているのは改めて良かったなと。



”ポシュロウはどう届くのか”

山本:
ちなみに唯さんには今絶賛、メンタルヘルスや、人との在り方みたいな文脈で、「自分らしくどうあるか」のアイデアに繋がる動画コンテンツを作成いただいてますが、難しいところはありますか?
 

唯:
それ話したい!!(笑)
 

山本:
ぜひ!(笑)
 

唯:
私の中で、自分が持っている、自分が生きやすくなるためのアイデアだったりスキルだったりを言語化し始めたのが、この2年間で。
 
そういうのって誰も興味ないと思っていたけど、しゃべってみたら興味ある人いるんだっていうところが、すごく面白くて、どんどん言葉にしていきたいなって思っていた時にもらえた仕事だからすごく良かったんです。
それで、個別相談ではこの場合ってどう?とか、こんな辛いことがあったけど、そのときはどう考えたらいい?っていう、その人の状況に合わせて、こういうアイデアを提供できるんですよね。
 
でもポシュロウって不特定多数の人に知ってもらうものでもあるから、考え方って段階があると思うので、どこ段階に合わせたらいいんだろうっていうのが、難しくて。見る人によっては、全然意味がわからない動画になってしまったり、すごく嫌な気持ちになる人がいたら心配だ…という思いがあります。でも、ありきたりなことだけ伝える動画にはしたくないし。迷いながら作っています。
 

山本:
たしかに。
そうですよね、そこは私も同じく難しいと感じるポイントですね。
 

唯:
制度とか、決まっているものは、必要な人がとっていけばいいけど、考え方って、取り方で全然変わってしまうところがあるから、こちらの意図が伝わると良いなと思います。
 

山本:
私も当事者の方にも見てもらいながら、進めてはいるものの、ほんと探り探りですし、言葉選び一つにしても難しいなと。
 

唯:
そう、例え話一つにしても難しい。
 

山本:
こういう人が見たらどうかとか、もうちょっと違う表現あるかなとか、日々いろんな監修者の方とも一緒に頭を悩ませています。
唯さんはどうやってそういう言葉とかをチューニングしたりバランスしているんですか?
 

唯:
私も色んな人に相談しています。「これってどう感じますか?」って。
それで「ちょっと強いんじゃない?」とか「それってこういう意味?」とか全然意図したものと違って伝わっていたりすると、「あ、これは練り直そう」って感じでやってます。
あとは直さんのオッケーもらえたら、もう勝負!って感じです(笑)
 

山本:
なるほど(笑)
そういう意味では、僕はどの監修の方の台本も必ず目を通して、どうかなって色々想像するんですけど、
必要なフィードバックはしますが、でもやっぱり監修の方の選んだ言葉が大事だなと思ったりもするので、一周回って、そのままでいくことも多いです。
動画としてデザインとかは一定揃えるけど、その奥にいる人をちゃんと感じれるものにしたいですね。



”ポシュロウの「働く」とは”

山本:
逆にポシュロウに関わっていての面白さ、楽しさはどうですか?
 

唯:
自分で作った台本が、ちゃんと動画と音声で帰ってくるっていうのは、私の中では大きな喜びでした。すごい感動した!

またこれまでは、自分のアイデアだったりスキルについて言語化したものを私のコンテンツの中だけで伝えていたけど、また別のプラットフォームでやらせてもらえるのも嬉しいですし。
私が直接伝えないで、また違った別の良い表現と、良い声が入って、こんな素敵なものになるんだというのは、すごい面白いですね。
 

山本:
そういう意味では、間接的になるからこそ、自分の表現したいこととのギャップとかはないですか?
 

唯:
特にないですね。あんまりそこにはこだわりがなくて。
作ってみたものが、どんな風になるかとか、どう受け取ってくれて、どんな風に表現されていくか、ただ興味津々という感じです。
 

山本:
そこもその時の化学反応というか、ご縁みたいなものを楽しまれているわけですね~!
ポシュロウをつくるうえで意識していたり、大切にしていることはありますか?
 

唯:
「働くこと」を「しんどい」だけの行為にしたくないなと。
さっき話したように、しんどかったら無理して働かなくて良いというスタンスが前提にあって、でも働きたい、働いてて楽しいけどあと一歩、という人に対して、自分と上手に付き合うことができるようになったら、力を抜いて、もっと心地よく働けるようになるかもしれないよ〜というメッセージを伝えたいです。

 
山本:
たしかに。「自分らしくないことで頑張らない」っていうのが「自分らしく働く」ための近道かもですよね。

 
唯:
作成したコンテンツのひとつに「一匹狼のススメ」というものがありますが、その中にもあるように、一人でご飯食べたいときは食べて良い、疲れることは無理してしないで、働くということができればいいとか。
 

山本:
まさに。最初にリリースする動画でああいうコンテンツが作れたのは僕の中では大きくて。いわゆる就労!みたいなコンテンツだけでなく。ポシュロウらしい「自分らしく働く」を考えられるコンテンツだなと思います。
 

唯:
働くって集団に適応していかなければいけないイメージがあるけど、必ずしも集団に合わせなきゃいけないわけではない。集団で過ごすことと、働くことはまた別だなと思っています。

”ポシュロウの「ゆるい」未来”

山本:
ちなみに唯さん自身が未来のポシュロウに期待することってどんなことですか?
 

唯:
そうですね~「なんか就労支援のゆるいアプリあるよ!」って言われたい(笑)
集団で頑張るのがちょっと大変だなぁという人が、一人で、お家で、ゆるくやれるっていう感じのものになっていくんじゃないかなと思っています。
そして動画で見たことによって、何か気づきを得て、それをその人がまた他の人に「こうやって考えたらいいんだよ」とか伝えられるみたいなことになってくと、良いなと。
 

山本:
うんうん、いいですね!!
ちなみに唯さんの中で「ゆるい」って言うのは別の言葉に置き換えたりするとどんな意味があるんですかね。
「ゆるい」って僕もすごく好きな言葉ですが、人によってはその価値みたいなものがわかりづらかったりするのかなと思ったときに、どう言語化しなおすと良いのかなと思って。
 

唯:
ほんとです。それ私もすごく知りたい(笑)
こうでなければいけないみたいなものではなくて。
柔らかい、どんな形にもなるとか?
大きい人にも小さい人にもフィットする感じとか?
あと、つまんで伝える、ここだけちょっとちぎって伝えることができるとか?
 

山本:
わかります。なんでしょう。「ゆるい」ってダラダラしてるとは違って、有機的に形を変えられるというか。
 

唯:
そうそう、「ゆるい」と「何でもいい」は違って、中身はしっかりしてないと、ゆるくいられないんですよね。
なんかそういう、良い例えはないですか?
中身硬いけど、外側柔らかいみたいな例え。さっきのカレーみたいな(笑)
 

山本:
そうだなぁ(笑)
でもカレーって別にシャバシャバのスープでもいいし、ドロッとしててもいいし、炒めものみたいなものもあるし、日本的なカレーだけではなくて、本来は自由で「ゆるい」ものなんですよね。でもスパイスを使って食材を調理するという軸はあって。だから肉じゃがはカレーではないという感じで。
 

唯:
カレー好きだな(笑)

でも、そうそう、そういうことなんです。
ゆるくいるためには自分の基礎がしっかりしてないといけないんですよね。
ゆるくいるために抑えるポイントが自分の中にあって、それをポシュロウで表現させてもらってますね。


 山本:
そういえば、井川さんに先日「直さんは、最後はちゃんと頑固なところが良いところですよね」って言われたのと、
和美さんにも対談の際に、僕らは軸があるけど、アウトプットが柔らかいって話をしてくださって。
その二人の話は僕の中で嬉しくて。
さっきの話ともなんかつながる感じがありますね。
 

唯:
すばらしい!!
和美さんも、本当に柔らかいけど、近づくと「私はこういうやり方がいい」っていう軸がしっかりある。
でも発信しているところで、人当たりとか、全部をこう包み込んでくれる感じ。あれはすごいなぁと思います。
 

山本:
ね!すごいですよね。

ちなみに和美さんとの対談記事を書く中で「今まさに文化を作っている」という感覚がひとつ自分の中であったのですが。
「ポシュロウの文化」という意味でキーワードになりそうなことって「ゆるさ」の他に思いつくものありますか?
 

唯:
文化をつくるって良いテーマですね。
ポシュロウの文化、そうですね…。

尊重とか、愛でる?
 

山本:
愛でる?
 

唯:
「自分を愛でる」というイメージがポシュロウの中にあって。
自分を愛でるのは相当大変なんだけど、
それを聞いた時に嫌な感覚になるのか、自分もできそうと思うのか、そこも含めてちょっと体験してほしいです。
 
あと、ロゴとかデザインもあいまって、柔らかさや、おしゃれとか。
いわゆるこれまで福祉のイメージではない、少しポップな感じ。
そういうのはイメージとしてあるかも知れないです。
 

山本:なるほど~!いいですね。
こんな風に、いろんな方との対談の中で、普段自分が使わない言葉で表現してもらうことで、ポシュロウの輪郭がどんどん見えてきますね。


唯:
これまでで、この人の思っているポシュロウと自分の思ってるポシュロウのイメージ全然違ったということはないですか?
 

山本:
あー、それは今のところないかもですね。
 

唯:
それって、同じ感覚を共有できる人たちを集めたんですか?それとも話しているうちに共感してイメージ共有できたんですかね。
 

山本:
どちらもあるかもしれないです。
唯さんたちは、一定ベースの考えに共通点があって、つながっていった側面があるのかなと思いつつ、社内とかは、ポシュロウの感覚ってこれまであまりなかったと思うので、たぶんすごい新鮮な感覚だったと思うんですけど、対話する中で理解が進んだり、共感があったのかなと思います。
 

唯:
いいですね!直さんが思い描いている部分が皆さんに伝わったという事ですね!
 

山本:
ありがたいです。
これからきっと、支援として、ビジネスとして、いろんな局面がきっとあるだろう中で、そうやって私自身が伝えてきたことから、ブレたりすることもあるかも知れないので、そのときは唯さんよろしくお願いしますね(笑)
 

唯:
その時はぜひまたお話をさせてもらって。
「なんかちょっと変だね。どうしたのかな、最近?」って声掛けさせてもらいますね(笑)
 

山本:
お願いします!ある意味、それってポシュロウとして段階が進んでいるということでもあるかもしれないので、その日を楽しみにしています(笑)

【編集後記】
唯さん、対談改めてありがとうございました。
この記事にタイトルをつけるなら「そうだ、福祉界のカレーライスをつくろう」とかそんなタイトルになりそうだなと思いながら記事をまとめていました。
きっと、唯さんは「おもしろい!それだ!」とか言ってくれそうだなと、そんなことも妄想しています。
唯さんは以前「転がりながら生きる」というお話をされていましたが、ポシュロウは今まさに、転がりながら生きている真っ只中で。
唯さんがポシュロウにいることで、転がることを楽しめたり、転がることで見えた景色を大切にできたり、できた傷さえも「なんかこれかっこいいな!」とか言って、勲章みたいにしながら、少しずつ大きくなっていけるのだろうと思います。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
                                山本


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