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村上春樹の文体がなぜ読みやすいのか


村上春樹の小説『街と不確かな壁』を読み終えた翌朝は退屈だ。リディア・デイヴィス『話の終わり』を読んでいる。そして村上春樹の文体ではいったいなにが起こっているのか——村上春樹の文体が読みやすいと言われる所以ゆえん——について考えていた。

村上春樹の文体にはかならず他者が存在しているのだ。しかも「他者」が主人公である、ということがその当時革新的だったのだと思う。さまざまな登場人物から見て「他者的存在」にあたる主人公が、さまざまな登場人物の話を聞く。村上春樹の小説の主人公は受け手であることがほとんどだ。さまざまなことを受けとるがために主人公は奇妙な世界に足を踏み入れてしまう(こともある)。だから村上春樹の小説はたまに「巻きこまれ型」なんて言われることもある。

「村上春樹の文体がなぜ読みやすいのか」について引き続き考えてみる。村上春樹の小説はセンテンスが短いことで知られているけれど、短いのはセンテンスだけではなくてセンテンスよりも上の単位(段落パラグラフ)もまた短く、細分化されているために端的でわかりやすい。しかもそれが対話的に展開されていくのだ。Aさんが延々と考え続けるのではなくて、BさんとAさんとのあいだでなんらかのやりとりがおこなわれることによって思考は深められ、物語は展開していく。


今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。 これからもていねいに書きますので、 またあそびに来てくださいね。