セリフのない演劇
半年前のことです。ある劇団の海外公演に俳優として出演していた私は、オーストラリアへ渡りました。作品を観ていただくうえで俳優と観客の間や、作る過程に生じる俳優同士の言語の壁に苦しめられました。しかし同時に私は、演劇は言葉を超えうるのではないかと、小さな手応えのようなものも感じていました。
次回、作・演出をする際には、あの時の手応えをかならず確信に変えたい。そんな折に、『夢の旧作』をつくることが決まり、私は作品のコンセプトを「セリフのない演劇」に設定しました。台本はあるのに、セリフがないのです。
俳優の肉声と肉体、そして数編の詩から世界を紡ぎます。私は、劇場では非日常を提供すべきだと考えており、これは私が演劇をつくるうえで常に気に留めていることです。『夢の旧作』には、そのような非日常が詰め込まれています。近くて遠い、まるで夢のような劇世界をどうぞお楽しみいただければ幸いです。
詩がどうして演劇になり得るのか
劇場でぜひご覧ください
私は割合に感受性が強い世代を生きています。携帯小説全盛期に少年期を過ごし、今やネットで新旧問わずさまざまな情報に触れることができます。自分で作った作品をSNSで簡単に発表することもできます。些末な日常はあっという間にドラマへ変貌します。
しかし、そのぶん以前の演劇と比べて、「小さく」なっているような気がしてならないのです。身近な演劇が悪いという意味では決してありません。ただ、演劇がいちようにスケールダウンしていく現実に、ひとりの演劇人として危機感を抱いているのです。
私はこれまで作・演出をした10作弱のすべてで「愛」について考えてきました。たとえば、恋、友情、親子、偏ってしまった愛のかたち……。『夢の旧作』ではスケールアップを試み、テーマは「憂国」へ。つまり、人類への愛の讃歌。
私は人間を信じたいのです。信じる力は人間にのみ与えられた能才。言語に頼ることなく、相対する観客と向き合い頑迷に人間を信じぬく姿、刮目していただきたい。
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【公演情報】
SAF vol.13参加作品
ぺぺぺの会 『夢の旧作』
作・演出
宮澤大和
出演
石塚晴日/佐藤鈴奈/宇田奈々絵/熊野美幸/小杉 天俊/後藤佑里乃/瀬川花乃子/新堀 隼弥/原田かづね
日時
7/29㈪
19:30~(無料公開ゲネ)
7/30㈫
12:00~/15:00~/18:00~
8/5㈪
19:30~
8/6㈫
12:00~/15:00~/18:00~
場所
シアターグリーン
〒171-0022 東京都豊島区南池袋2丁目20−4
03-3983-0644
チケット
前売 1800円
当日 2000円
ご予約
詳細
今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。 これからもていねいに書きますので、 またあそびに来てくださいね。