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あいつには運動で勝てない、勉強はわたしも嫌い。『となりのせきのますだくん』――絵本を思い出すところ#11

絵本の中の風景へ想いを巡らすとき、それを手にした幼い頃の記憶もまた、絵本の思い出の一部になっていく――そんな「絵本を思い出すところ」を編集者とカメラマンが探していきます。



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毎朝、あいつは走って教室にやってきた。
すわる席はわたしのとなり。



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「こっからでたらぶつからな。」
一言でいうなれば理不尽。



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あいつは教室でバタバターってして、
みんなが迷惑そうな顔をする。



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運動では勝てない、
勉強はわたしも嫌い。



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おいしいはずの給食も、
どんな味か覚えていない。



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楽しいことはいっぱいあったけど、
いつも頭に浮かんでくるのは
苦手だった、あいつのことばかり。



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あいつ、今何してるのかな。
どんな顔してるのかな。



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久しぶりに会いたいような気がする。



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『となりのせきのますだくん』 作・絵/武田美穂
きょう、がっこうにいけないきがする。だって……。みほちゃんは、同じクラスのとなりの席にすわる「ますだくん」が怖くて仕方ありません。「ますだくん」は、みほちゃんにいじわるばかり。何かあると、すぐに「ぶつぞ」って言います。
作者である武田美穂さんの実体験が元になった、小学生ならではの感情がみずみずしく描かれた傑作絵本です。漫画のコマ割りのような構成が斬新で、主人公みほちゃんの繊細な心の動きを巧みに表現しています。
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/3450012.html

(文・編集/齋藤侑太 写真/白井晴幸 ロケ地/戸倉しろやまテラス

ポプラ社 齋藤侑太
1985年、茨城県生まれ。2012年、ポプラ社入社。営業職、社内デザイナー、幼児向け書籍の編集を経て、2020年から絵本の編集を中心に担当。
白井晴幸
東京都生まれ。2010年、多摩美術大学卒。作家として活動する傍らカメラマンとして本の装丁や風景、建築などを撮影している。≪Website