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「おにた」の麦わら帽子も見つかりそう。『おにたのぼうし』――絵本を思い出すところ#9

絵本の中の風景へ想いを巡らすとき、それを手にした幼い頃の記憶もまた、絵本の思い出の一部になっていく――そんな「絵本を思い出すところ」を編集者とカメラマンが探していきます。



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2月、冬のよく晴れた日。
不思議な風景が広がっていた。



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ずらりと並んだ麦わら帽子のなかに、
こっそりやって来た鬼の子「おにた」の姿。



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「寒干し*」される帽子たちにまじって、
陽の光を浴びる「おにた」も
気持ちよさそうに見える。



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工房の中は、帽子でいっぱい。
「おにた」の麦わら帽子も見つかりそう。



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大切に使われてきた型やミシンで、
ひとつひとつ丁寧に作られていく。



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つめたい雪から「おにた」を守ってくれた、
角かくしの麦わら帽子。
ごちそうを届けた「おにた」の優しさを思い出す。



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鬼だって、いろいろあるよね。
「おにた」の気持ちがわかったよ。



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*「寒干し」とは?
麦わら帽子は、材料を水に滞らして柔らかくしてから縫製するため、縫いあがった後に天日干しをします。特に冬の寒い乾燥した時期に行われることが多いため「寒干し」と呼ばれ、地面一面にずらりと並べられた麦わら帽子は埼玉県春日部市の「季節の風物詩」となっています。

『おにたのぼうし』 文/あまんきみこ 絵/いわさきちひろ
節分の夜のこと、行き場のない小さな鬼の子「おにた」は、鬼と気づかれないように古い麦わら帽子をかぶって、雪がふるまちを歩いていきました。豆のにおいがしない家を見つけて「おにた」が部屋にもぐりこむと、そこには病気のお母さんを看病する女の子がいました。お腹の空いた女の子をみて、「おにた」はごちそうを届けてあげようと、玄関の入り口をたたきました。
女の子を思う「おにた」の心優しさと、「おにだって、いろいろあるのに。」とこぼすせつない情景を、岩崎ちひろさんの水彩画が見事に表現しています。鬼の心と人間の心、どちらの気持ちも味わってほしい名作です。
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/3020002.html

(文・編集/齋藤侑太 写真/白井晴幸 撮影協力/田中帽子店

ポプラ社 齋藤侑太
1985年、茨城県生まれ。2012年、ポプラ社入社。営業職、社内デザイナー、幼児向け書籍の編集を経て、2020年から絵本の編集を中心に担当。
白井晴幸
東京都生まれ。2010年、多摩美術大学卒。作家として活動する傍らカメラマンとして本の装丁や風景、建築などを撮影している。≪Website