新年度、ついついがんばりすぎていませんか?心がふっと軽くなる、物語はいかがでしょう🌸~はれ晴れ池をさがして~
4月。新入学生や新入社員のみなさん、そしてそのご家族のみなさん、おめでとうございます!
新しい出会いの時期ですね。特に大きな変化がなかったという方でも、新年度の始まりということで「この1年こそは~!」と気合を入れている方も、多いかと思います。
記事を書いている私もそんなひとり。新年度にあたって、過去1年間の「振り返り」を会社に提出して、この1年はどうがんばるんだ~と「目標設定」を求められ……がんばるよ、がんばるんだけど、ちょっと一息欲しい!
そんな時にふと読み返したくなったのが、昨年の編集担当作、『はれ晴れ池をさがして』。宇佐美牧子さんによる小学校中学年~対象の読み物です。
がんばることはきっと良いことですが、「がんばらなくちゃ、がんばらなくちゃ」とずっと思っていると、疲れちゃいますよね。そんな時に、この本が届けてくれるメッセージが、がんばりすぎちゃうお子さんはもちろん、大人のみなさんの心もきっと、軽くしてくれるのでは…と思い、今回、記事を書くことにしました。
ラストには作者の宇佐美牧子さんからのメッセージも。
結布さんによる愛らしい挿絵とともに、ご紹介いたします。
がんばりすぎて疲れたなあという時に、読んでみていただけたら幸いです。
あらすじ
物語の主人公は、しっかりものな小学5年生、七美。七美には言葉がうまく話せない弟・リクがいます。リクがすこしでも話せるようになるために、お母さんはいつも一生懸命。七美はそんな家族を支えるべく、毎日家のお手伝いや、リクのお世話をがんばっています。
そんなある日、七美はある絵を目にしたことをきっかけに、昔おばあちゃんに教わった「はれ晴れ池」の存在を思い出します。
心からの願いを叶えて、心を晴らしてくれるという「はれ晴れ池」。この池に願えば、リクがうまく話せるようになり、お母さんも楽になるに違いない……。
そこで、絵の作者の孫で、同級生のカイと一緒に「はれ晴れ池」を探すことにしました。
作者の他の絵を調べて「山桜」というヒントを見つけたり、地元の山に目星をつけたりと、順調に進む「池さがし」。
でもその一方で、七美のがまんや寂しさに気づいてくれなかったり、七美との約束よりもリクのスクールを優先したりするお母さんに、七美は次第に、モヤモヤとした感情を溜めていきます。
そしてリクと留守番をするために、カイとの「池さがし」の約束を断ったとき、カイが放った一言が七美の心を揺さぶりました。
「いい人ぶってるだけじゃね?」
「損しないようにいってやってんのに」
いつも弟のため、お母さんのため。
お母さんのためにカイとの約束を断ったことも、そのせいでカイとけんかしたことも、今までお母さんのためにがんばってきたことも。全部、損だったのかも……。
「池さがし」も、結局はお母さんやリクのため。これって私の「心からの願い」って言えるのかな?
「損」という感情に心が乱された七美。でも、「損」という言葉を口にしたカイ自身にも、自分の姉にまつわる葛藤があり、さらに七美のお母さんとリクにも、それぞれに七美へ向けた温かい思いがありました。
物語は最後、七美が家族の本当の思いやリクの成長を知り、「自分ががんばらなくちゃ」という思いからも解放されて終わります。
上の子でも下の子でも、兄弟姉妹のために何かを我慢したり、家族を思うあまり自分の気持ちを隠してしまうことって、ありますよね。
お話に登場するお母さんもお父さんも、リク自身もみんな一生懸命で、誰が悪いわけではありません。それでもふと七美が感じてしまった「わたしばっかり、損しているのかな」という気持ちは、経験されたことのある方も多いのではないでしょうか。
特に子どものころは、いっぱいいっぱいになっていると、ひとりきりのように感じて「自分のがんばりや、気持ちにだれも気づいてくれない」…と感じがち。でも実は気にかけてくれる人がいるし、自分だけががんばらなくてもいいんだと感じられると、ちょっと気持ちが楽になりますよね。この物語はそんなメッセージを、まっすぐに届けてくれます。
この「損している」という感情は、作者の宇佐美牧子さんがずっと描きたいと思っていらしたテーマだったそうです。その感情に担当編集の私も共感をして、この作品が誕生しました。
最後に、宇佐美さんからのメッセージもご紹介いたします!
宇佐美牧子さんメッセージ
🌸🌸🌸
誰かのためにがんばりすぎて自分が苦しくなり、損したなあって思ったことって、家族間だけでなく仕事でも友人関係でも、一度くらいありますよね。
一生懸命になることは素敵なことだと、私は思います。ただ、自分の気持ちとのいいバランスがとれていれば。そのいいバランスをとる方法が、自分の中にぱっと胸が晴れ上がるような願い事があるかどうか、だと思うんです。願い事がすぐにうかぶ人は、自分の気持ちと向き合えている証拠だから。
本を読んだ読者の方が、がんばり過ぎずにがんばろう! と思ってくれたら嬉しいです。それは、私自身の目標でもあります。
(宇佐美牧子)
🌸🌸🌸
気負った心が、はれ晴れと解放される。家族の思いと自分の本当に気持ちに気づく成長物語。
このお話を通して、七美のようにみなさんの肩の力が少しでも抜けたら嬉しいです。
全国の書店やネット書店にて販売中です。ご興味を持たれた方はぜひ、お手に取ってみてくださいね。
(文・編集担当 上野萌)