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【詩集】俗なる生活

「罪深き」

私は罰を欲する
清らかな手による熱い罰が
いまもっともほしいもの
私の罪と恥とは充分に見つめてくれたはず
こんな私をどうか
許さないでほしい


「人間とは何か」

人間とは何か
ただ欲望するもの
これまでを見てきたきみには
理解に難くないはずだ
僕がきみと出会ったのも
欲望の合致なのか
みんな病いからの回復を欲望するが
どうも達成は見込まれない
ここにある全てがひとつの”今日”だとしたら
どうしようか
人間とは何か
欲望を欲望されたもの


「冷たい幸福」

この前きみがくれたもの
実に冷たかった
きみは街の雑踏でいなくなったけど
ぼくはまだ森の神社の周りをうろうろしている
閉じ込められてしまったから
どうせ外に出ても
冷たい幸福がぼくの頬を引っ叩く


「夏は」

焼けるような夏は
いつだ
私は焼かれる用意はある
だが
肝心の夏が
来ない


「挨拶」

久しぶりにあなたに会ったよ
ずいぶんと大人になったね
もうおれより身長が高いかも
きょうは別に何かあるわけではないんだ
ただ、ただ
おれはなんにも変わんないよな
しょせんはおれだもん
お別れに手をふるのはもう古いよね
せっかくだからおれを殴ってから
去ってほしい

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