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コミュニケーション能力とは何か?

人たらし”という言葉をご存じだろうか?

人たらしとは誰とでも仲良くなれる才能を持ち、どんなグループや組織に入っても上からは可愛がられ、下からは慕われ、同僚からは気心の知れた仲間として扱われる、そんな人間を指す言葉だ。読者の周囲にも、男女問わず一人はそのような愛されキャラの顔が浮かぶのではないだろうか?

人生で成功を掴む人の多くがこの人たらしの能力を持っている。フィクションの世界では一人のスーパーマンが世界を救うことはできるが、ノンフィクションの世界では人間が一人で出来ることは限られている。現実世界で何かを成すためには沢山の仲間を作ることが必要不可欠だ。女は愛嬌男は度胸という言葉があるが、男女問わず何かを成す人はみな度胸と愛嬌の両方を兼ね備えている場合がほとんどなのだ。

親族や地域のコミュニティを破壊し自由になった現代人は、自らの力で他者とつながれなければならない時代となった自由を得る代償として人々はコミュニケーション能力を磨くことに苦心することになったのである

昨今マジックワードのように使われているコミュニケーション能力とは、性別を問わず多くの人々と仲良くなれる力、つまり人たらしの能力を指しているのである

陰キャのトー横ツイッターでは、常に異性にどうすればモテるのかの話題で盛り上がっているが、どちらかといえば同性コミュニティで上手くやっていく能力の方が人生の幸福度に直結する。

いくら異性にモテても同性の仲間と上手に関係を築けなければ、会社や学校、趣味や地域コミュニティで孤立してしまう。特に働いて稼ぐことがアイデンティティの一部にもなる男性にとって、ホモソーシャルで孤立してしまうことは凄まじいマイナスだ。飯が食えなくなれば女どころの話ではない。

女性は男性と違い結婚することで経済的に男性へ依存することが出来る分、同性コミュニティでハブられても何とかなるように感じるかもしれない。しかしそれは誤りだ。

なぜなら育児タームに入れば同性とのコミュニケーションが必要となってくるからだ。ママ友付き合いやPTA、姑や実母との関係など、女社会でいかに摩擦を作らずに上手く関係を築いていける能力が、健やかに育児をこなしていくために求められるのだ。

では、具体的にどうすれば人間は人たらしの能力を高め、周囲から愛されて受け入れてもらえる人間になれるのだろうか?

Amazonで電子書籍を検索すれば、愛されキャラになりたい人々のニーズにこたえるべく、様々な書籍が発売されいる。そこには周囲から受け入れられるための様々な方法が書かれている。

他人に誠実に向き合う、約束を守る、嘘をつかない、嫌われてもいい勇気を持つ……

これらの言葉の多くは真実である。しかし、これらの言葉はどこか抽象的であり、『結局は気持ちの問題、持ちよう……ってコト?』という結論に至ってしまいがちである。

こういった時に有効なのが、実際に人たらしとして成功している人間から学ぶことである。何事においても現実に結果を残している人間から学ぶことは非常に有益だ。

では人たらしの最高峰が集結する場所はどこなのだろうか?それはズバリ”政治”の世界だ。政治家は有権者や選挙をサポートする人々に担いでもらえなければ当選することが出来ない。つまり、人たらしの力なくしては政治家にはなれないのである。

某与党のトップにまで登り付けた経験のあるビッグボスの長男も、父親の選挙基盤やコネもってしても国会議員としての椅子すら確保出来ず、地方議員としてくすぶってるうちに人生を終えてしまった。親の七光りだけでは政治の世界で活躍することはおろか、当選することさえも難しいのである。

選挙戦というのは、結局のところ人たらし能力を競う壮大な舞台装置である。もちろん政策の中身や理念が重要であることは間違いないが、いかに多くの人々の心を掴むことができるかが勝敗を分ける。いくら崇高な政治理念をもった候補者も、有権者たちからこの人に賭けてみよう、この人を応援したい、と思ってもらえなければ絵に描いた餅に終わってしまう。

そして選挙の世界で最も人たらし能力が炸裂したのが、2016年に行われた米大統領選挙である。そう、あのトランプ大統領が誕生した選挙戦だ。

筆者がトランプ元大統領に興味を抱いたのは、彼が共和党代表選を勝ち上がり、共和党代表候補の座を手に入れた時からだ。当時は共和党の代表はルビオになると予想されていた。ルビオは貧しいキューバからの亡命移民を両親に持ち、努力によって政治家の地位を手に入れたたたき上げの政治家である。

若くて物語もあるルビオが民主党のヒラリー候補に挑む、多くのメディアのそんな予想を覆したのがトランプだった。政治家としての経験もなく、昔テレビやプロレスに出て話題だっただけの不動産屋のおっさんが、メディアや共和党内部の予想を覆して国民からの人気のみで代表の座を掴み取ったのである。

トランプはその勢いそのままに、マスコミ、金融、ITメガカンパニー、ハリウッドを味方につけるヒラリー候補と対決し、見事な勝利を挙げた。政治家としての経験年数や支持基盤、選挙資金の格差などから、当時はメディアの98%がヒラリー候補の勝利を予想していた。まさに大金星であった。

なぜ圧倒的劣勢だったトランプが大統領になれたのだろうか?それはひとえに、トランプ陣営の選挙活動が優れていたからに他ならない。

トランプの選挙活動について知るうえで非常にお勧めなのが、アメリカで大統領選を取材した金成記者による著書『トランプ王国』である。トランプ王国に記されていたトランプ旋風の中には、人に好かれ推されるために重要なことが詰まっているのだ。ちなみに同じ著者の『記者、ラストベルトに住む』『トランプ王国2』も非常に面白いので併せておすすめしたい。

国民を熱狂されたトランプの選挙活動とは一体どのようなものだったのだろうか?トランプが最も選挙活動で重要視していたのが……

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