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なぜ東京の出生率は0.99になってしまったのか?

日本の少子化が止まらない。

最新の調査の結果、日本の出生率はなんと1.20まで低下し、さらに日本最大の都市、帝都東京の出生率に至ってはなんと0.99と1を切る非常事態となっている。東京に隣接するさいたま、千葉、神奈川といった首都圏内の都市の出生率も、軒並み全国平均以下となった。

日本中から若者を吸い込みながら拡大を続ける東京、結婚適齢期の男女がひしめき合って暮らしているにもかかわらず、なぜこれほどまでに低い出生率になってしまっているのであろうか。その最たる原因が非婚化である。

現在でも既婚者世帯の子供の数は概ね2人弱で推移している。結婚している夫婦の過半数は子供を2人以上育てているのである。それでも東京の出生率が0.99まで低下してしまうのは、結婚する男女そのものの数が減っているからなのだ。

なぜ東京の若者たちは結婚しない、できないのであろうか?

その大きな要因の一つが育児のハードルの上昇だ。東京に住みながら子供を授かり育てることは、非常に高いコストが必要になってしまっているのである。結婚する最大の目的の一つが自分の分身である子供を授かり、夫婦で育てていくことだ。しかし東京ではその子育てに必要なお金や労力が青天井で上がり続けているのである。結婚しても子供を育てていくことができそうもない、育てていく自信が持てないとなれば、結婚へのモチベーションを持てないのも無理はないだろう。

育児のハードルを上げる要因の一つが、ファミリー向けの分譲マンション価格の高騰だ。今や旦那1人の住宅ローンではとても手が届かない金額となっている。子供2人以上を抱えて生活するための住居を欲するなら、ほとんどの家庭はフルタイム共働きをしつつ、夫婦でペアローンを組まなければならない

主として子育てを担当することの多い女性にとって、子供を授かった後もフルタイムの仕事を辞められないという事実は、結婚そのもののハードルを大きく上昇させてしまっている

https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01657/

男性も高収入の仕事に就けなければ、フルタイムの仕事をこなして家族を養いながら、共働きの妻をサポートするため育児に精を出さなければならない。仕事も手を抜けず、育児でも気を抜けない。男性が子供を持つことに及び腰になってしまうのも無理はないだろう。

さらに追い打ちをかけるのが、高まり続ける中学受験率だ。地方都市では私立中学受験率が1割から高くて1.5割程度なのに対して、東京首都圏の私立中学受験率は25%に迫る勢いで急上昇を続けている。東京の一部地域では中学受験は当たり前の時代なのだ。

https://www.sankei.com/article/20230724-GOPYPJKYJNIG7O4JNZ2VOLBU3I/

有名私立中学への合格を目指す塾は学費が高い。苦しい住宅ローンの支払いをしながら、子供の塾費用まで捻出している家庭がどんどん増えているのである。学校の友達がみな私立中学へ進学すると言い出した時、我が子にだけお金がないので公立の中学へ進学しろと言えるだろうか?当然、無事合格できた暁には、私立中学の学費も納める日々がスタートする。

さらに中学受験の負担はお金だけではない。子供の勉強のサポートを両親がしてあげなければならないのである。

筆者の身近に子供2人を大阪の有名私立中学へ進学させた友人がいるが、平日は専業主婦の妻が子供たちの勉強をつきっ切りでサポートし、休日は父親も参戦して家族全員で受験を勝ち抜いたとのことである。このハードワークを東京の夫婦はフルタイムで働きながらこなしていかなければならないのである。

育児の負担増は私立中学受験だけに留まらない。SNSの発達により新生児や乳児、幼児の"丁寧な育児”が広まり、それが親の義務となっているのだ。一昔前のような育児では雑だとして認められない空気が強まっているのである。

子供たちのためにも育児の質が向上することは素晴らしいことだと筆者も考えている。事実、昭和の頃に頻発したような水難事故や交通事故による子供たちの被害は確実に減少している。

https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r02kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_01_2.html

しかし、その質を高める流れが加速し過ぎてしまい、今や怪我などから守るための見守りといった安全対策や、病気などを防ぐワクチンの定期接種などだけでなく、頭蓋骨の矯正や歯科矯正、知育や幼少期からの英語教育などもやって当然と言わんばかりの風潮になっているのである。

田舎であればまだ多少緩い育児でも許されることもあるが、先進的な東京では少しでも手を抜く育児は親失格の烙印を押されかねない生活するためにフルタイム共働きをしながら、育児にも全力投球しなければならないのが東京なのだ。

そしてトドメとなるのが核家族化だ地方から大学進学や就職で上京して移住する若者が非常に多い東京では、結婚後に育児をジジババにサポートしてもらうことができないのである。筆者の周囲でフルタイム共働きをバリバリこなしながら子供を2~3人育てて余裕ある生活をしている夫婦のほとんどが、ジジババ育児ヘルプを利用している。

地方というサバンナの王、マイルドヤンキー家庭が子供を3人も4人も育てられるのは、両家のサポート、クアッドジジババヘルプを利用できるからに他ならない。ベビーシッターサービスなども東京では受けられるとはいえ、とても需要を満たすだけの供給が追い付いていないのが現状だ。

上記のように東京で結婚して子育てをしていくことは、平均以下の稼ぎしかなく、実家も頼れない男女にとってはあまりに高すぎる壁となってしまっているのだ。結婚後の生活に夢を見られない男女が溢れてしまうのも無理はないだろう。

しかし、育児のハードル上昇だけが異次元の出生率0.99の原因ではない。もう一つの大きな要因が存在しているのだ。

それが"東京ピーターパンシンドローム"である。


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