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ソムニウム(38)銀色のイオタ


冬の朝
雪の駐車場に
銀色のイオタが降りてくる
黒猫と一緒にメドゥーラを踊る
五年前に出会い
三年暮らした
コーヒーを入れて一緒に飲む
スペルト小麦のパスタが食べたい
車で街へ買い出しに
川の上でジゼルを踊る
カモメが群れ飛ぶ
ボロネーゼを作る
フォカッチャと食べる
うまいうまい
雪が街を埋めていく
窓辺に座って二人で見る
黒猫が跳ねて遊んでる
火葬車を呼んで
山の公園へ行って
あの子が燃えるの待ちながら
ガゼボでオデット踊ったね
イオタの睫毛が銀色に光る
細い煙を思い出す
今日はこれを取りにきた
小さな緑のヒマラヤ水晶
一緒にいこうか?
訊いてみる
二年前と同じように
がぶ、
とイオタに肩を噛まれる
痛い痛い痛い
けらけら笑う
窓を開けて雪の中へ
黒鳥を踊る
もうこない
螺旋を描いて空へ昇る
雪が溶ける
春になる
海へ行って灰を撒く


(終わり)


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