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貞子出づるクリスマスイブ🇰🇭【スーパースターを目指すカンボジアの若者たち】第20話

🇰🇭ボリャ

カンニャが退職した後、そのポジションをカバーしていたのがミッキーとノリ。

ただミッキーには、ご両親が住むオーストラリアに戻らなくてはならない日が近づいていました。

ノリは素晴らしい管理能力を持つ人材ではあったけれど、あくまで本業は「スーパースターを目指すアーティスト」なので、ノリの負担を考えて、新しいマネージャーを探そうってことになりました。

そこで、SNSでマネージャーを募集してみた結果、一人の女の子が応募してきてくれました。

ボリャといいます。

ボリャも、レベルはカンニャに劣る面もありますが、日本語・英語・クメール語の使い手です。

カンニャが感情豊かな女性だったのとは反対に、ボリャは割とドライな性格。常に淡々と業務をこなし、そのせいなのか、日本語もなんだかAI風です。

●ボリャ、エアコンを修理に行くの巻

「レナさん、お早うございます。エアコンの修理代は75ドル。どうする。」

「ボリャさん、75ドル、了解です。」

「はい、レナさん。こんにちは。午後3時にエアコン持ってくる。」

●ボリャ、役所に行くの巻

「レナさん、私は役所に行く」

「ボリャさん、大丈夫ですか。帰りが遅くて心配です」

「役所、大変ですね。今、出来た。良かった。今、私は事務所へ戻っている。」

●ボリャ、会社の携帯を買いに行くの巻

「レナ、お早うございます。申し訳ありませんが、SIMカードってある?」

「ボリャさん、大丈夫ですか。帰りが遅くて心配です」

「色々な場所を探しており、遅く成り、ごめん。今、良い品質を見つけた」

レナは次第に、ボリャさんのAI風な日本語にツボるようになっていました。

話は変わりますが、ポラリックスたちはホラー映画が大好き!

しょっちゅう、夜な夜な事務所に集まって、みんなでホラー映画鑑賞をしていました。

みんなのお気に入りは、日本のホラー映画。

レナは、ポラリックスにいろんなホラー映画を見せられて感じたらしいけど、日本のホラー映画ってどこの国のホラーより格段に怖いんだって。

ケンは全く怖くないんだけど、レナはホラー映画が大嫌い。

「ねぇ、レナも一緒にホラー映画観ようよー!」

「無理っ!自分たちで勝手に観てよ。」

「あーあ。俺、もうすぐオーストラリアに帰らなきゃいけないのに・・・レナと一緒にもう映画を観られないかもしれないのに・・・レナは一緒に観てくれないんだ。あーあ。」

レナがホラー映画鑑賞を断るたび、ミッキーが「もうすぐオーストラリアに帰る帰る詐欺」を仕掛けて、毎回、それに騙されてたわ。
レナ、将来、振り込め詐欺に引っかかったりしないように注意してね。

この日の映画のタイトルは・・・「リング」
言わずと知れた、日本ホラー映画の金字塔。

ケン以外の面々は、みんな「ぎゃあああああ」と各々のクッション、ぬいぐるみ、クジラ(犬)に抱きつきながら貞子の恐怖におののき、やっと、貞子の呪いが解けたかとホッとした時・・・

レナが叫びました。

「みんな、油断しないで!まだあの有名なシーンが出てきてないっ!!」

そしてついに、貞子、テレビより出てくる!!

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!ごめんなさいっ!!」

みんな半泣きで貞子に謝り倒しているのを、ケンが小馬鹿にしていました。

「お前ら何やってんだ」

その夜はクリスマス・イブでした。

乾季の涼しい空気の中、グースカ眠る、ケン、レナ、私、クジラ。

レナはふと、足元に人の気配を感じました。

暗闇に浮かぶ、ロングヘアーのシルエット・・・
で・・・でたッ!!
間違いなく、貞子だ!

レナは幽霊なんか見たことない人生を送ってきたけど、常に、幽霊を信じて生きてきました。
なぜなら、幽霊を信じない人のところに幽霊は来る、そう思っていたからです。
それなのに、ついに出てしまった。
恐怖のあまり、我を見失ったレナは、貞子に向かって普通にこう言いました。

「Who are you?」

「ボリャです」

「へっ?」

「ボリャです。サソリ、かわいい。」

貞子の正体は、酔っ払って事務所を徘徊中のボリャさんでした。
シルエットが本当に似てるんだコレが!

ボリャさんは、フフフ・・・と笑いながら、ケンたちの部屋を出て行きました。

滅多なことでは起きないケンも「あいつ、超怖いんだけど」と震えていました。

翌日、事務所の住人であるロイに事情聴取したところ…

昨晩、リング鑑賞後にみんなは家に帰るのが怖くなり、パブストリートへ飲みに繰り出した。

みんな酔っ払って、ヘアン、ロイ、なぜか事務所の住人ではないボリャも一緒に帰宅。

3人で雑魚寝をするも、ボリャの寝相があまりに悪く、ロイが脱走。

しかし
「私の隣で寝ろ」
とボリャがロイを追いかけ、ロイは恐怖で怯えながらなんとかボリャをまき、
「ロイはどこだ」
とボリャは事務所じゅうを徘徊し、ケンとレナの部屋に侵入、一緒に寝ていた私を撫でていたところ、レナが起きた・・・という話でした。

初代マネージャー、カンニャも酒乱。
2代目マネージャー、ボリャも酒乱。

愉快な芸能事務所ね。

カンボジアの貞子(ボリャ)に震えた夜

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