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転生したら天国だった件 第二話 サトウ、捕まる

突然、神の使いとして天国に転生したサトウ。

なんとか初回のミッションは乗り越えたが、今後はどうなる?!

というわけで、第2話。お楽しみください。

第1話を読んでない方はこちらからどうぞ。

前半 https://note.com/poitopoi/n/nd78cd2f63eb0

後半 https://note.com/poitopoi/n/nda12b8d4f1b7


登場人物

  • サトウ

    • 主人公

    • 事故に巻き込まれて、他界。天国に転生しミッションをクリアすることになる

  • アボック

    • サトウをサポートする妖精

  • アーサー

    • サトウのペットで、現在のパートナー

  • 天の声

    • 天国でミッション挑戦者に指示をする





第2話


「もういいじゃああああ~~~~ん」

「許可できません。なんでそんなに貴方はルールを守れないのでしょうか。」


サトウは、アボックに何度もおねがいしていた。


「いいじゃああああ~~~~ん。ちょっとくらい~~~。」

「だからダメですって。」


何をお願いしていたかって?


そうです。プロテインです。

???と思われた方、無理もありません。

実は、この物語の主人公であるサトウは生前フィジークで世界大会を目指していた身。
※フィジークというのは、簡単にいうとボディビルの細マッチョ版。

そんなサトウなので、カラダの筋肉量、体脂肪率はとても重要にしているようで。

サトウは空腹だから食事をとりたいのではなく、タンパク質を摂取して筋肉を増やしたいらしい。

ここ1~2時間程度、サトウはアボックにおねがいしているが、そもそも天国には食べ物というが概念から存在していない。アボックもできないものを頼まれて困っているところ。


「ねええ、アボックさん~~。アボック様~~~。おねがいしますよぉ~」

「ないものはないんですって。すみませんけど。あ!そうこうしているうちに、次のミッションですよ。ほら、聞き逃しますよ。」



天の声)「サトウさん、今回のミッションです。苦しんでいる子供を救ってきてください。舞台はフィリピンの田舎町。そこで「あること」に苦しんでいる子供を一人以上、救ってきてください。成功すれば、Soulポイント1ポイントを渡します。失敗すればSoulポイントを1ポイント失うことになります。では、5秒後に転送します。5・4・3」


「そういえば!!ずっと忘れていたけどアーサーは?アーサーはどこいったの??天の声さん!」



天の声)「2・1・0。がんばってください」



「そんなぁぁあああああ!アーサー!!!シュッ」






「アーサー!!!アーサー??アーサー!いる!」

フィリピンの田舎町に到着したサトウの目の前には、アーサーがいた。どうやらアーサーとは、ミッションの際だけ一緒に入れるようだ。

何はともあれ、アーサーと再会できたサトウ。フィリピンの街を歩きながら、とりあえず困っている子供を探すことにした。

とりあえず、歩き回ると大きなスーパーのようなもの(モール)が見えてきた。モール周辺は出店が多く、道端で露店が広がっている。モールに近づくにつれ、人が増えてきた。

モール周辺には観光客、地元の人たち、露店に入る人たち、みすぼらしい恰好をした子供たちであふれている。


「そういえば、以前フィリピン来たことあったなー。この辺、昔来たとこに近いのかな?」

サトウがはじめての海外旅行したのはフィリピンだった。英語が話せる場所、かつ安く1か月くらい現地に滞在できる場所、と探してフィリピンに決めたらしい。

サトウが歩いていると、一人の子供に話しかけられた。親指と人差し指をこすりながらサトウが理解できない言葉で話しかけてきた。
その子供の着ている服はボロボロだが、痩せこけているわけではない。

「お金がほしいのか?申し訳ないけどお金はあげられない。(お腹も減っているわけではなさそうだし・・・)」

初めての海外旅行で飛行機に乗った際、CAから渡された注意事項にこう書いてあった。
【子供が物乞いやお金を要求をしてくることがあります。その場合は何もあげないでください。特にお金は絶対渡さないでください。お金を渡した子供以外の子供も集まってくることがあります。また、お金を渡した子供が他の子供に襲われて命を落とす危険性があります】


「お金は渡せないけど、、、あ、そうだ。あそこにあるフルーツの盛り合わせなら買ってあげるよ!」
子供は不思議そうな顔をしながら、サトウについてきた。フルーツを渡された子供は一度断ったが、サトウがゴリ押しで渡してくるので、致し方なく受け取った。

そんな対応をしたからか、サトウには物乞いの子供は寄ってこなかった。

その代わり、若い女性がめっちゃ寄ってきた。
日本人はフィリピンの女性にめちゃめちゃモテる。特にピンク系のお姉さんたちに。お金を要求してきた子供にフルーツをプレゼントした様子をお姉さんたちに見られていたこともあり、サトウの周りにはお姉さんがよってきてしまった。

危うくお姉さんたちと遊びそうになったが、下心を振り払い、困っている子供を探すことにした。

「お姉さんたち、ごめんね~~!本当は遊びにいきたいけど、今それどころじゃなくて~!また今度ね~~!」

女性たちを振り払い、とりあえず困っている子供がいないか探すため、サトウは人が多そうなモール内を詮索してみることにした。

モールに入ると、モール周辺の景色とは全く違い、飲食店やそれなりに高そうな洋服屋が並んでいる。モール内を散策していると、やけに人が多いファストフード店を発見した。

店内には、子供も多く、その子供たちの大半は小太りだった。サトウはここの子供たちはもしかしたら栄養失調で命の危険があるのか、、?と思い、行動を始めた。

「ねえ、君たち。こんな栄養のないものを食べてはいけない!あそこにあるフルーツやスーパーに売っている野菜を買ってあげるから一緒に食べよう!」

いきなり話しかけたものだから、子供たちは怪訝そうな顔でサトウのことをじっと見ている。特にリアクションがないので、サトウはさらに話し続ける。

「ファストフードはさ、健康によくないよ。ほら、お兄さんと一緒に野菜やフルーツを食べに行こう!」

そうこう話しているうちに、警備員と思われるがたいのいいお兄さんに囲まれてしまい、モールをつまみ出されてしまう。

(いきなり知らないお兄さんに話しかけられ、かつ外国語でまくりたてられる。考えただけでも少し怖い。)


再度モールに入ろうと何度か試みたが、警備員に完全にマークされてしまい、どうしても入れない。サトウはどうしようもなく、モールを後にした。

外をとぼとぼ歩いていると、徐々に夕方になり夜の町が賑やかなってきた。何も考えず、そのまま町を徘徊していると、昼に話しかけてきたお姉さんたちに話しかけられた。
もしかしてこの子達が事件に巻き込まれて命の危険にさらされるのか?と危惧したサトウはお姉さん達にこう言った。

「こんなことしてちゃいけない!やめなさい!なんでこんなことをしているんだ?!」

気持ちが入ってしまい、気がついたら大声で話していたらしく、周りに人が集まっていた。ここでも、がたいのよいお兄さんに囲まれ初めて、仕舞いには警察が来て連れて行かれてしまった。


思い返せば、英語を話せないサトウは、日本語で怒鳴るような大声で話した。こんな外国人は怖いに決まっている。

現地語で数時間警察に絞られていた。ただ、なにやら騒がしい。何かまた事件が起きたようだ。サトウが絞られてる部屋の脇を何人もの警官が走り去っていく。
この事件のおかげなのか、サトウに付き合っている暇がなくなったようで、なんとかサトウは開放された。
数時間絞られていたので疲れ切ってしまい元気もなく、とぼとぼ歩いていると、突然炸裂音が聞こえた。



パァーン!パァーン!




悪い予感がして、サトウは炸裂音が聞こえるほうに走った。


人波は炸裂音から離れるように動いていくので、サトウはその荒波に逆らいながら進んだ。何人もの肩にぶつかりながら、大声で謝りながらなんとか進んだ。



パァーン!パァーン!パァーン!


再度その音は町に響き渡る。その音をきっかけにさらに多くの悲鳴が響く。

サトウはさらにその足を速め、全速力で音の源に向かった。


何度か転びながら、どうにかその音の発信源に到着した。
到着とほぼ同時にまたその音は聞こえた。



パァーン!



頭を下げ中腰でさらに進むと、向かった先には先ほど話しかけてきたお姉さんたちが物陰に身を隠していた。見渡す限り血痕はなく、幸い死傷者はいないようだ。


道の真ん中にはその日の朝フルーツをあげた少年の仲間の一人がそこにいた。その少年の手には拳銃があり、呆然と座っていた。


何かあってからでは遅いと思い、サトウはその少年のもとに近づいていった。その少年は驚きながら、少し安堵したような表情を見せたが、サトウが近づくにつれサトウのガタイのよさに少し恐怖を感じ始めたようだった。


少年は銃口をサトウに向けた。

「大丈夫だよ!お兄さんは何もしないよ。落ち着いて。」


日本語で言った。それが悪手なのだが。

徐々に近づいてくる体の大きい大人に恐怖しない子供はいないだろう。特に知らない言語で話しかけてくる男性には。


そのまま、少年は引き金を引いた。



サトウはまたか、、、と思った。が、銃声は聞こえない。代わりにその少年の焦ったような声が聞こえた。


サトウは一気に拳銃を奪い取り、道の端に投げ捨て、そのままその少年を抱き寄せた。

抱き寄せた途端、緊張の糸がほどけたのかその少年は泣き出した。少年が落ち着くまでサトウはその少年を抱きしめたまま、頭を撫で続けた。

少し時間が経つと、見覚えがある警察官が来て少年は連れていかれた。

どうやら少年が持っていた拳銃は昼にサトウを連れて行った警官から盗んだらしい。拳銃が盗まれたことが発覚し、警察署が騒がしかったのだ。


天の声)「サトウさん、お時間です。天国にお戻しします。」

「あぁ、ダメだったか・・・今回は誰も救えなかった・・・」



サトウ、天国に戻される。










天の声)「サトウさん、無事今回もミッション達成です。おめでとうございます。合計で2Soulポイントになります。次回のミッションまで天国でお待ちください。」


「はい?!!え?誰も救えなかったよ?!」

「どうやら救ったみたいです。ほら、何か誰かにあげませんでしたか?」


「・・・いや~~。そういえば、フルーツはあげたけど。。」

「はい、そのフルーツです。」





ここでネタばらし。実はミッション開始直後にフルーツを無理やりあげた少年の妹のことを救ったのだ。

路上で生活する子供は食に困っているのではなく、栄養に困っている。

今回はフルーツ、つまりビタミンをあげた。
あの少年の妹が栄養失調だったのだ。

日々働けば子供たちでも小銭程度を稼げる。

発展しているこの世界において小銭であっても食べ物は買える。栄養を無視すれば。

具体的に言えば栄養を無視した体に非常に悪い成分だけを使ったお菓子など。

栄養を無視した食べ物であっても空腹にはならない。食べないよりはましだろう。
子供なら想像しやすいが、栄養より目の前の空腹を優先してしまう。


その少年と妹も例外ではなく、安いお菓子で毎日空腹をしのいでいた。
その結果、栄養失調だった。



さらにいえば、もし少年にお金を上げていたら、発砲事件の被害者はあの子だったのかもしれない。





「まあ、助かったなら無理やりあげたのもよかったな~。」
「そうですね。ただ貴方は強引すぎます。無理なものは無理ですかね。」


「あ、やっぱプロテインは無理か」
「はい、何度言っても無理なものは無理です。」








今回はこれで終わり。

いかがでしょうか。

次のミッションはどんなものになるのか。
次回もサトウの活躍をお楽しみに。

それでは、第3話でお会いしましょう。

ではまた。





Special Thanks(順不同)
クマさんあっきぃさんたつくさんサトウさん

※作成にご協力、アドバイスいただいたみなさんです。本当にありがとうございます!


作者 DAO Heaven ポイポイ




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