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【毒親】はじめに:体内を循環する「毒」

1.注入される「毒」に気づかぬ幼少期

幼少の頃、お姫様は憧れの対象でいつかはそうなりたいと思っていた。光り輝くアクセサリーにヒラヒラと裾が舞うドレス。手入れの行き届いた長く美しい髪に花が咲くような微笑み。そう言った外見の美しさだけでも十分素敵なのに、童話の世界で生きるお姫様は内面も素晴らしい。持ち前の「愛され要素」を武器に困難を解決し、幸せをつかみ取る。そういったすべてが宝石箱を覗き込んだようにキラキラしていて、自分もそうなれるのだろうと漠然と夢を描いていた。

憧れのお姫様は童話の中に数いれど、人生で初めて衝撃を受けたのは、美少女戦士セーラームーンという作品だった。童話のお姫様はあくまで「異世界の存在」だけれど、美少女戦士達は「現代の日本の(自称)ごく普通の中学生」。自分もなれるかもしれない中学生のお姉さんが美少女戦士に変身して戦う様は可憐で、目が離せなくなった。モチーフも月・コスメ・薔薇といった美しいもののオンパレードで、女の子の憧れが凝縮された存在だった。美少女戦士達は恋や友情・勉強や正義に奔走しており、彼女達もまた「愛され要素」を持った素敵女子達だ。

わたくしの乙女心はそういったエンタメ作品で培養されていくけれど、現実はそういったキラキラしたものからは程遠かった。物が散乱し異臭の放つ汚部屋には、時折男の怒号が響く。わたくしはそういった環境で育った。幼少の頃はそういった「普通からの乖離」は少なく、また幼かったので気づけなかった。けれど、小学校3,4年生頃からじわじわと「普通からの乖離」に気づいていく。――そして、お姫様や美少女戦士達と違い「愛され要素」のない人間だと理解していく。

「普通からの乖離」を理解したわたくしは、いつの日からか空想の世界へとよりいっそうのめり込んでいく。主人公の女性が何者かの手助けにより変身したり異世界転移(転生)したりして活躍する話が特に好きで、いつかそんな「わたくしを変えてくれる存在」が登場しないかと夢見ていた。18歳までは東北の片田舎で過ごしていたので、その様はまるで源氏物語の世界に憧れる菅原孝標女のようだったと思う。

2.循環する「毒」に気づく青年期

転機が訪れたのは19歳になる春。大学進学と共に上京し、汚部屋や怒号から離れることはできた。けれど、汚部屋育ちのわたくしは片付けの上手な仕方がわからず油断すると室内にゴミが溜まる。精神的にも不安定でたまにとてつもなく悲しくなったり推しやお酒に依存したりする。――そして、気を緩めるとブクブクと太っていく。

大学卒業後のある日、ネットサーフィンをしていた。その中でわたくしの不安定さは育った環境にあるのだと気づいた。そう、「毒親」の元で育ったのが原因だ。

「毒親」の定義は次の通りだ。(参考URL

毒になる親の略で、毒と比喩されるような悪影響を子供に及ぼす親、子どもが厄介と感じるような親を指す俗的概念である。

親から受けた悪影響。

汚部屋を生み出したのはで、彼女は家事全般が苦手だ。食事の栄養バランスが隔たっているせいで、父・わたくし・弟は小太りだった。(母は「鶏がら」と揶揄される程に痩せ細っているけれど、それはあまり食べないから)汚部屋住人なので臭いを指摘されることもあった。母の生み出す「毒」は複合的なので、プチネグレクトと称するのが適しているかもしれない。

わたくしや弟の前で母を殴る面前DVをしていたのはで、そのせいかわたくしは大人の男性が苦手だった。

面前DVの父プチネグレクトの母の相性は最悪かもしれない。怒りっぽい父は汚部屋や美味しくない料理で益々イライラしてDVをしたくなり、DVをされた母はメンタルが落ち込んでただでさえ苦手な家事ができなくなる。夫婦間で「毒」を浴びせ合っているのだから。

そしてプチネグレクトの被害者でありDVの傍観者であるわたくしと弟は、双方からの「毒」を浴びる。母からの「毒」を浴びたせいで臭いと言われ、学校で友人を作るのが難しかった。また、父からの「毒」が原因で人を怒らせることが面倒なことだと知る。そんな中で、人とのコミュニケーションの取り方がわからなくなり、殻へと閉じこもっていく。わたくしのメンタルの不安定さはここからきているのかな、と思う瞬間がある。高校生くらいから徐々にコミュ力の低さは改善しているけれど、まだ自信はない。

血は争わないと言う。だからわたくしも片付けは苦手だし、強烈に人を非難しそうになることがある。だけど、母のように足の踏み場がなく異臭が放つ程の部屋にはならないよう努力している。また、食事もなるべく栄養のバランスを考えて取るようにしている。父のようにカっとして言葉を荒げそうになることもあるけれど、なるべく冷静になれるようにと深呼吸をする。

そんな風に、「毒親」から距離を置いて十余年が経過した今でも、体内を循環する「毒」と戦っている。

このnote記事は、そんなわたくしの人生や考えについて綴っております。

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