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《長めの小説》分割後《これまでのあらすじ》私の作法 (エッセイ)

人生で《あらすじ》を書く機会はあまり多くありません。
小学校で読書感想文を書く(書かされる)時に、まず最初にあらすじを書きましょう、なんて指導を受けたような気がします。

あとは、小説募集とか懸賞論文(と題していても、実際にはエッセイですね)など《賞》に応募する時にも、
「**文字以内で《あらすじ》を書いて添えるように」
など要求されたりしますね。
こうした《あらすじ》を書く、── 技術? ── はたぶんあるのでしょうね。

工学系の学生に、
「英語論文を読んだら、内容を忘れないうちに、《Two-sentence summary(2文要旨)》を書いておきなさい」
と言っています。これも論文の《あらすじ》ですな。
実は、物語の《あらすじ書き》と類似点もあるのですが、混乱するので別件として扱うことにします。

さて以前、《長めの小説》を分割する際には、途中から読み始めた読者でも《物語の設定》がある程度わかるように、例えば、
 「マユミ」⇒「妻のマユミ」
のように最小限の《加筆》を行ったことを書きました。
《憑依2.5》を4分割した時の例です。

その後、《社内起業》という、既に章立てしてあった小説を9分割して再掲しましたが、この時は、9分割とやや数が多く、途中から読んだらわかりにくい箇所を全て見直すのがたいへんだったこともあり、いわゆる《前号までのあらすじ》作戦に切り替えました。
この種の《これまでのあらすじ》は週刊誌の連載小説の最初に数行見かけますが、自分で書いてみて《なるほど》と思った点もあり、具体的に引いてみます。

連載第2回の冒頭は、

平凡なサラリーマン・山口満は、残業する社員が空腹を訴える声を聴き、ここにビジネス・チャンスがあるのではないか、と考えた。

〈1/9〉の要旨

と当然、第1回全体の《要旨》です。これは楽です。
第3回連載分の冒頭要旨も、ほぼ第2回の要旨を書いたのみです。
この辺りまでは苦労がありません。
第4回連載分ぐらいから、《あらすじ》の配分を考えるようになります。

山口満が会社の休憩時間に製造販売する《おにぎり》は人気が沸騰し、生産量拡大のため、数人の女子社員が《オニギラー》として雇われた。

〈3/9〉までの要旨

上記の文のうち、
「山口満が会社の休憩時間に製造販売する《おにぎり》」
まで、つまり35%が前々回〈2/9〉までの要旨であり、
「《おにぎり》は人気が沸騰し、生産量拡大のため、数人の女子社員が《オニギラー》として雇われた。」
の部分、つまり65%が直前の章〈3/9〉の要旨になっています。
(《おにぎり》部分は重複情報です)

もちろん、話が進むにつれて、《それまでのあらすじ》の情報量は累積的に多くなるわけですが、だからといって、《あらすじ》部分の行数をどんどん多くしては、連載に《締り》がなくなります。
そこで、今回の場合、
《(物語が進んでも)PC画面で2行以内にとどめる》
というルールを決めました。これは、66文字になります。

もう少し、先に進めてみましょう。
第6回連載分です。

《誰が握ったおにぎりか》が販売力の決め手となってきたため、満は非生産部門を強化し、オニギラーの素行調査と新人発掘に全力を挙げた。

〈5/9〉までの要旨

この場合も、
「《誰が握ったおにぎりか》が販売力の決め手となってきたため」
の部分が前々回〈4/9〉までの要旨にあたり(45%に相当)、その後の
「満は非生産部門を強化し、オニギラーの素行調査と新人発掘に全力を挙げた」
の部分が直前の〈5/9〉の情報になります(55%に相当)

このように振り返ると、
➀ 前回からの流れがわかるように、直前章の要旨に半分強を割く。
かつ、
➁ 全体を見失わぬよう、前々章までの《筋》補強に半分弱を使う。
というのがいいバランスのようです。

こうしたイメージをつかむと、《あらすじ》書きはさほど困難ではありません。

ところで、学生に、
「《要約力》はとても重要で、今後の人生のあらゆる場面で必要になる」
と話すことがあります。

でも、実は、そこには、
➀ 書きながら要約する能力

➁ 頭の中で要約する能力
という、かなり異なるふたつの能力があるようです。

➀ 書きながら考える人

➁ 頭の中(空中!)で考える人
の違い、といってもいいでしょう。

モノカキや研究の世界は➀でいいのですが、ビジネスの世界では➁が必要とされる場面が多い ── と企業で働いている間ずっと、思っていました。
ずっと思っていたのは ── もちろん、➁が苦手だったからです。

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