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筆箱立てて《上履き底で机上ピンポン》

アフリカ出稼ぎ娘が帰省したタイミングで、卓球場に誘い、貸卓で1時間、勝負しました。
《敵》は小学校から中学にかけて卓球部だったので、かなり余裕であしらわれましたが、途中からこちらが本気を出すと向こうもギアを上げ、結局ジジイは惨敗でしたね。

卓球は我が家の重要な家庭内スポーツのひとつで、今でも台のある温泉旅館に行くと必ず、同居人と真剣勝負!します。
《卓球》は、格闘技のように筋肉の塊りだったり、バスケやバレーボールのように巨人だったりでなくても、コツさえ覚えれば小型・非力でもソコソコ戦える、貴重なスポーツだと思います。

名古屋の地ではかつて、《ピンポン外交》で知られる「第31回世界卓球選手権」が愛知県体育館で開催され、中学生だった私も観戦しました。
中国のエース、荘則棟のプレイは実に力強く、かつ、終始友好的でした。

唐突ですが、20年前の映画、窪塚洋介主演で中村獅童、大倉孝二、荒川良々らが共演する「ピンポン」を紹介します。

プロレスに続く「ああ、やってた、やってた、── バカな男子が」シリーズです。

かつて日本中の小学校に存在した2人掛け机がひとりずつに分かれてしまったのを契機におそらくは衰退したであろう《バカダン・休み時間・教室スポーツ》が、この《机上ピンポン》ではなかったでしょうか。
2人掛け机の中央に筆箱ペンケースをふたつ、ネット代わりに立てると、あら不思議、卓球台になってしまったではありませんか!
しかも、プロレスとは異なり、「いじめ」になりにくく、ひ弱な技巧派にも勝機がある遊びでした。
特に、グラウンドで遊べない雨天でも、教室で体を動かせるのが良かったですね。

ボールはセルロイドのピンポン玉を使い、ラケットは下敷きなど試行錯誤の末に、やはり理想とされたのが「上履きの裏側」でした。
「上履き裏」は、弾性率といい反発係数といい、卓球ラケットにきわめて似ており、上履きメーカーがそこまで考慮してゴム底を開発したとしか思えません。

「教室後ろで4の字固め」などプロレス遊びは喧嘩の強い《肉体派》がリードしており、私などは技をかけられる一方でしたが、この《上履きピンポン》のあたりから、「新しい遊びを考える能力」がリーダーを決める支配要因になっていきます。
《上履きピンポン》はもちろん、従来スポーツのミニ模倣に過ぎませんが、小学生だった私は、徐々に《オリジナル》の遊びを《開発》していくことになります。
ただ、そうした遊びは、次第に特殊マニアックなものになっていくため、noter様の《共感》「やったやった」はいただけなくなっていくかもしれません。

さて、《上履きピンポン》です。

── 「問題点」はいくつかありました。
とにかく台が狭く、かつラケットの面積も小さいため、プレイヤーごとの巧拙差が大きく、ラリーが長続きしなかったこと、そして、球が教室中に飛んで行くのでその回収に時間がかかり、正味の対戦時間が限られたことなどです。
さらに、流れ弾が「善良な市民」を直撃するのはまだいいとしても、ボールの代わりに上履きの裏底で頭を引っぱたかれた「通行人」は、当然怒りましたね。

多くの《バカダン》遊びは同様の運命をたどるわけですが、
➀ 反《バカダン》分子が「学級会」で告発し、
➁ 《バカダン》側にはとうてい勝ち目の薄い議論の末、
➂ 担任教師が《禁止》を宣言する。

こんな《弾圧》が繰り返されたあげく、《バカダン遊び》はやがて教室を飛び出し、廊下や階段、グラウンドに出て行くことになります。

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん、遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ。

梁塵秘抄(後白河法皇・編)

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