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【鴨が葱を背負って来る(カモネギ)】(新釈ことわざ辞典)記事版

このことわざの意味は、
《自分にとってうまいことが重なり、好都合であること》

「うまいこと」が重なるなんて、そんな都合のいいこと、めったにあるものじゃないって?
── いえいえ、そうでもないんですよ。

重要なのは:
目の前にいる対象 ── ほとんどの場合、人間ですが、犬猫だったり、カブトムシやハエ、時に生物とは限らず、土地だったり海だったり、空気だったりすることもあります ── その対象を《カモとして見る》ことからすべては始まります

すると、ほら、あなたの目にも、目の前の《カモ》が《ネギ》を背負っているのが見えてくるはずです。

実例を挙げるのがわかりやすいのですが、大きく分けて3種類あります。

タイプ1はほぼ犯罪、多くは詐欺にかかわるものです。
詐欺師は出会った人間ほぼ全てを《カモ》として眺め、どのような《ネギ》を背負っているかを見極めます。
実例を挙げるのは「犯罪教唆」になりかねません。

タイプ3は、起業や発明につながります。
目の前にある対象、例えば、奥さんに逃げられ大好きな「キス」ができなくなった自分自身だったり、他人から容姿をほめてもらいたがっている人びとだったりします。
この場合の《ネギ》はもちろん、市場マーケットからの利益です。
対象の後ろに、大きく広がる《市場》が見えるかどうか、がポイントです。

前者では、触感がきわめて近い「人工唇」を開発し、大ヒットしました。「甘いささやき」機能を加えたのも、成功の大きな要因になりました。

後者では、「とにかく褒めてくれる」スマホアプリを大ヒットさせたそうです。

拙著マガジン「エレクトロニック・ショートショート・カタログ」「バイオテック・ショートショート・カタログ」の話の多くは、広義の《カモネギ・ストーリー》です。

さて、タイプ1は個人を対象に利益を得ようとする犯罪、タイプ3は個人から市場へと対象を移した事業でした。

この中間(タイプ2)は、犯罪にはならないが、対象はあくまで個人で、《ネギ》もその《カモ》個人あるいはその周囲の財物に留まるケースです。

下記の例もそうでしたね。

とうに愛想が尽き果てた亭主の浮気相手が押しかけてきて「あの人と別れて……慰謝料はずむから」と懇願された時によぎる想い。

【鴨が葱を背負って来る(カモネギ)】(新釈ことわざ辞典)

この場合は「みんなハッピー」になりそうです。

問題の多い例は……
「新釈ことわざ辞典」を読んでいただいている方には、もう言わずもがなですが、そう、《カルト宗教》への勧誘です。

勧誘員は、多くは「善意で」カモを探しています。
悩み事がある人、悲しみに沈んでいる人の中に《カモ》を見出すようです。

「あなたが不幸なのは『罪』を背負っているからです。その罪からのがれるためには……」

あなたが背負っているのは《罪》? それとも《ネギ》?

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