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「日本の伝統×最新技術」のコンセプトを活かし、クラファン累計6,000万超えのプロダクトを生み出す思考と行動

大西 藍さんと武内 賢太さんによるプロダクトデザインユニット「goyemon」。Makuake(クラウドファンディング)にて、日本の伝統技術と現代技術が融合したプロダクト【雪駄 × スニーカー「unda-雲駄-」】、【刺身包丁 × セラミック「matou-磨刀-」】などを発表し、累計6,000万円を超える応援購入を集める。もともとは高校の同級生という、おふたりに、ものづくり/ブランドづくりで大切にしている思考や行動をお聞きしました。


プロダクトから見出した「日本の伝統×最新技術」というブランドコンセプト

- goyemonのブランドコンセプトと立ち上げのきっかけを教えてください。

<武内>日本の伝統と最新技術を融合させる活動です。日本の伝統製品を単に現代の生活に馴染むようにモダンにデザインし直すんじゃなくて、 その伝統製品があったことによって生まれた暮らし方・所作・文化を現代の生活に溶け込ませることを意識して、プロダクトをつくることを大事にしています。

ただ、最初は、プロダクトデザインのユニットとして活動していて、もともとは特段「日本の伝統」にフォーカスしているわけではありませんでした。

武内 賢太 / NEWBASIC inc. CMO / goyemon Conceptor
1993年11月7日生。都立工芸高校マシンクラフト科を卒業後、東京工芸大学芸術学部へ進学、コイズミ照明株式会社 商品部にて、企画・デザインに携わる。

<藍>リスクなくプロダクトを世に出せるので、まずMakuake(クラウドファンディング)でプロダクトをローンチしたいと思っていました。Makuakeで成功している商品の傾向をリサーチする中で、人気なプロダクトは、伝統工芸などのストーリー性があるものと最新ガジェットなどの真新しいものでした。この2つを組み合わせたら、Makuakeのお客さんにフィットするんじゃないかっていうのがはじまりでした。

大西 藍/NEWBASIC inc. CEO/goyemon Creative Director
1993年10月27日生。都立工芸高校マシンクラフト科卒業後、日本大学芸術学部デザイン学科へ進学、家業であるデザイン企画会社で企画・製造・販売に携わる。

<藍>そこで目を付けたのが、僕たちふたりが日常から履いてた「雪駄」です。雪駄を履いてて思ったのが、かっこいいから履きたいけど、江戸時代にできた土の上を歩く履物だったので、薄いし、硬くて、現代のアスファルトの生活には合っていない。スニーカーブームもあったので、現代のスニーカーのソールと組み合わせた方が、若い人たちにもその良さを受け入れてもらえるんじゃないかと思ったのがきっかけで、最初のプロダクト「unda- 雲駄 -」が生まれました。

- 「unda-雲駄-」を皮切りに、なぜ「日本の伝統×最新技術」をコンセプトに活動を続けることになったのでしょうか?

<藍>「unda-雲駄-」がいろんな人の手に届いてくうちに、「日本の伝統と最新技術の融合」をgoyemonのアイデンティティにしていきたい気持ちがどんどんと強まっていきました。

もともと、日本の伝統製品が好きなんですよね。それは高校時代の経験が起点になっている気がします。担任の先生が、生活の中から生まれる民藝品や素材の特性を活かしてものづくりをしている方で、伝統製品の良さと素材の活かし方を伝えてくれる人でした。日本の伝統製品は、無駄がないんです。目的に対して、最適な素材・加工で、暮らしにフィットする製品に仕上げる伝統製品はおもしろいなって、そのときから思っていました。

伝統的な外観は変わらず、現代の方にも好まれる美しさはもっているんだけど、 現代の生活には機能性がちょっと足りてないものにフォーカスして商品化を探っていきます。現代の生活には馴染みきれていない伝統製品を馴染ませてあげるような感覚です。

<武内>伝統製品は日本の暮らしにフィットしているからこそ長い間親しまれてきているので、ただ単に「昔のもの」として捉えるんじゃなくて、現代の生活も心地よくしてくれる知恵が詰まっているものとして捉えています。

だからこそ、現代にも継承して活かしていきたいですし、そこに最新技術が合わせることで、現代生活をもっと心地よく、使いやすく、豊かにしてくれるものになると思っています。goyemonのプロダクトを通じて、日本の伝統や魅力ある製品を、若い世代や世界の方々に知ってもらいたいですね。


製品の成り立ちへの敬意と素材特性の探求から生まれるデザイン

- デザインを進めていくなかで、心がけていることはありますか?

<武内>伝統製品の残すところと変えていくところの見極めは結構慎重にやっています。製品の成り立ちや使われ方などは、めちゃめちゃリサーチしています。「unda-雲駄-」であれば、靴は左足と右足で向きがありますが、雪駄の左右の区別がないクラシックな作りを継承しています。雪駄は定期的に左右を入れ替えて履くことで、底の減りが均等になり、長く使える機能が備わっています。日本人の「もったいない文化」の知恵が生み出した構造なので、現代にも継承したいと思いデザインしています。

- 先日ローンチされた、セラミック刺身包丁「matou-磨刀-」も、とても好評のようですが、どのような想いでデザインされたんですか?

<武内>本来の刺身包丁は、柔らかいお魚を切るので、とても切れ味が良いのですが、かなり丁寧にメンテナンスする必要があります。美味しくお刺身を切るために刺身包丁って買うじゃないですか。でも、そんなに利用頻度が多くないなかで、使う度に研いでたら結構大変ですよね。 現代のキッチンでも気軽に使えるように、セラミックの刃を使って、 アップデートした商品になってます。

<藍>最新技術を融合するgoyemonが包丁を作るなら、素材を変えて、セラミックの包丁かなと考えてました。セラミックという素材の特性を調べていけばいくほど、これはお刺身用だなってなってきて。セラミックの包丁って売り場でいっぱい見かけるのですが、案外、家庭には普及してないんですよね。なぜ、普及してないのかというと、刃が固すぎて、強い力がかかるとかけちゃうところが弱点だったんです。冷凍したお肉、かぼちゃなど硬い野菜を切ったりすると欠けちゃうので、皆さん怖くて使えない。

セラミックは切れ味が良くて、メンテナンスも簡単なんですけが、実はそこまで万能ではない。ならば、機能を限定していこうと考えました。セラミックは焼き物なんで鉄の味が食品に移らないのが特徴でもあります。繊細な白身魚には特に鉄の味は移ってほしくないですし、セラミック包丁の最適解として刺身包丁にたどり着きました。お刺身専用にしちゃえば、硬いものを切るっていう機会に合わなくなるので、かけてしまうリスクもなくなります。


細部までこだわり抜かれたパッケージがシームレスなブランド体験をつくる

- 実際に商品の売れ行きはいかがだったんでしょうか?

<藍>初めてローンチした「unda-雲駄-」は、全く予想外の反響でした。「まずはプロダクトを作って売る実績がつくれたらOK」という感じだったのですが、用意していた200足がローンチ直後に1日足らずで瞬く間に完売してしまいました。そこから、1000足追加しまして、これも、5日ぐらいで完売になっちゃいました。Makuakeという売り場のターゲットと「日本の伝統×最新技術」というコンセプトがばっちりハマったんだろうなと分析しています。

- すごい、反響ですね。goyemonのプロダクトはパッケージもとてもかっこいいですよね。製造できる工場が減ってきている「ステッチャー箱」を採用していたり、箔押しや型押しも表現豊かに使われている印象です。ここまでこだわる理由ってなんなのですか?

<武内>プロダクトはブランドからの贈り物だと考えてます。贈り物が届いた時、開ける瞬間ってワクワクするじゃないですか。その感覚をgoyemonのお客さんにも届けたいんです。買ってくれる人はプロダクト自体を良いと思って買ってくれているわけですが、それ以上のサプライズがある贈り物として、買った人にしか分からない「ワクワクする開封体験」をお届けするためににこだわっています。

ホログラムの箔が使われいているパッケージ
「unda-雲駄-」、「matou-磨刀-」のパッケージには箱の四隅をステッチャーで留める「ステッチャー箱」を採用

<武内>あと、ブランド体験の分断を起こしたくないんです。プロダクトを選んで、購入して、使い慣れるまでを一連のブランド体験として捉えています。goyemonはオンライン販売が基本なので、どうしても、倉庫や運送会社などを経由する必要があります。直営店で購入するよりはブランド体験の分断が起きやすいと思っています。その分、購入した後に、配達員から受け取り、開封して、プロダクトにたどり着くその瞬間まで、できるだけ分断を起こさずシームレスな繋がりをパッケージでつくり、goyemonの一連の購入体験として感じていただけるように考えています。

配送箱のデザインにテープや送り状ラベルを貼る位置のガイドを組み込むことで、作業者の方が自然と綺麗に貼り付けられる工夫が施されている
自前での梱包作業や品出しの経験から必要情報を導き出し、視認性を考慮してラベルがデザインされている

作り手との二人三脚で「日本の伝統×最新技術」のかつてないプロダクトを生み出し続けていく

- 実際に製造する過程で「日本の伝統×最新技術」の融合はどのように実現していくのですか?

<藍>goyemonのプロダクトの実現には職人さんの協力が必要不可欠です。製作工程を変えるのではなく、いかに職人さんの工程変更を最小限にして最新技術と融合した製品を作るかは、すべてのプロダクトで意識しています。

<武内>最初の工場さんとの打ち合わせでは、「できない」って言われることが多いのですが、できる方法を諦めずに一緒に考えていきます。「できない」には2種類あると思ってて。「やったことないからできない」パターンと、「物理的に不可能」なパターンがあります。ほとんどが前者の「やったことないからできない」なんです。 なので、実際に職人さんや製造工場の現場に足を運んで、何度もやり取りしながら、goyemon側からも仕様や製造方法を提案して、着地点を探っていきます。製造方法や工程から一緒に考えていきます。

高校の時からものづくりを学んできて備わった思考もあって、素材の特性、構造や加工法、工場のできること起点でモノをデザインできるのが僕らの強みだと思っています。

- おふたりも高校で出会ったとのことですし、そこで培ったスキルや価値観を大切にされているのですね。その他に大切にしている価値観やビジョンはありますでしょうか?

<武内>日本の伝統と最新技術が共存して暮らす世の中になったらいいなと思います。そのためにも、僕らの活動を見て、もっと若い世代がどんどんものづくりにチャレンジできるようになったらいいなと。僕らも本当に無名でプロダクトデザインを始めてて。金型を起こすお金もないところから、今こうやって会社を立ち上げて、一緒に楽しく働けてるんで、その最初の1歩を、踏み出せる人たちがもっと出てきたら、世の中にない面白いブランドがどんどん溢れてくるんじゃないかなと思います。

簡単と言うわけではないですけど、クラウドファンディングなどの挑戦できる場もあって、できなくはないので、若い世代が立ち上げるブランドが増えてきたらいいなと思います。

<藍>世の中にないものをつくるというのは、一番心がけています。昔から、デザインする上で見たことないものをつくり、逆行したくなっちゃう性格だった。人と同じことしても、面白くない。仕事をする上で、新しいものをつくっている方が、手伝ってくれる人も多いですしね。

あとは、とにかくビジュアルでかっこいいモノが好きです。コンセプトやストーリーももちろん大切にしていますが、「かっこいいビジュアル」が合わさってるからこそ、皆さんに好評いただけるプロダクトになってるってのもあると思います。一目でわかるかっこよさっていうのが好きだし、goyemonブランドもひと目で分かるようにしていきたいです。今、見えてるありとあらゆるモノが全部、goyemon製品になったらいいなあと思っています。


編集後記

伝統製品の成り立ちや素材の特性をとことん突き詰めたうえで、職人さんや工場さんの可能性を最大限に引き出しながらものづくりに取り組むマインドがとても印象的でした。長い年月をかけて紡がれてきた伝統をリスペクトしながら、新しいアイデアを組み合わせるおふたりのような存在が、日本の技術を継承し、技術力を高める起点になるのだと感じました。また、プロダクトを広義的に捉えて「使い慣れる」までの一連の体験をデザインすることが、ファンに支持され続けるブランドの秘訣なのかもしれません。プロダクトに留まらず、空間やサービスへデザインの領域を広げられているとのことなので、これからのアウトプットも非常に楽しみです!


[goyemon(ごゑもん)] 
2018年結成のプロダクトデザインユニット。日本の伝統文化にフォーカスし、「日本の伝統や魅力ある製品を、若い世代や世界の方々に知ってもらいたい。」そんな想いから活動をスタート。「日本の伝統×最新技術」を融合させた商品を創りだすことで、現代の生活にフィットした、伝統を身近に感じられる商品を展開。
https://www.goyemon.tokyo
Instagram:@goyemon_japan

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