「特許」と「SDGs」5~中小企業の取組~
「特許」と「SDGs」についての5回目です。
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前回はWO出願件数と傾向から見た日本の大企業の「特許」と「SDGs」の取組例を挙げてみました。
大企業では、「SDGsの視点から新たなニーズや技術開発の方向を模索し、新たな価値を創出して」いる状況が浮かび上がってきました。
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一方、日本の中小企業の取組はどのような状況でしょうか?
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国内や国外でも多くの賞の受賞歴がある株式会社TBMの取組を取り上げてみます。
株式会社TBMは、LIMEXという炭酸カルシウムなど無機物を50%以上含む無機フィラー分散系の複合素材を開発し、紙やプラスチックの代替製品の開発・製造を手掛けています。
LIMEXの原料は石灰石のため、世界中の多くの場所に豊富に存在します。
また、LIMEXから紙代替品を製造する工程では、木材パルプから製造される紙製品と比較して水の消費量がかなり低減され、木材パルプも使われていません。
このようにLIMEXは地球環境に対して様々な角度からアプローチしている製品であると言えます。
株式会社TBM HP : https://tb-m.com/limex/about/
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元々株式会社TBMは、台湾の会社が製造していた石灰石から製造される紙代替品を輸入することから始まりましたが、輸入製品の品質と価格を改善すべきとの考えから自社開発が始まったようです。
LIMEXに関する自社開発の成果を2012年に特許出願し、「無機物質粉末高配合薄膜シートの製造方法」(特許第5461614)として2014年に日本で特許査定され、海外にも広く出願されています。
独立請求項では、無機物質粉末の粒子径、原料の配合率、延伸倍率、シートの見かけ比重などを数値限定し、目指す品質を達成できる要件が押さえられており、基本的にこの製造方法を取らなければ同品質の製品を製造することは難しいのではないかと思われます。
明細書中ではやはり製品の品質向上と製造コスト削減を発明の主要な課題効果と位置付けられ、環境に優しい点にも触れています。
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株式会社TBMのSDGsに関する取組は、HPに詳しく書かれています。
出典:https://tb-m.com/limex/sustainability/sdgs/
資源の循環を主軸において、雇用と産業の創出、ステークスホルダーとの連携に関わるSDGs目標をLIMEXを通じて貢献するとしています。
説明部分には、「TBMは、バリューチェーン上の各ステージとSDGsの169のターゲットとの関連性をマッピングし、事業とSDGsとの接点を特定しました。その際、TBMのバリューチェーンがSDGsに与える影響と、SDGsを取り巻くトレンドがTBMのバリューチェーンに与える影響との、両側面から分析を行いました。そして、TBMの事業が特に大きなインパクトをもたらしうる8つの目標を、中核目標として定めました。」と書かれています。
この考え方は、前回調べた日本の大企業の取組み方と大きな違いはなく、会社に規模に関わらずSDGsの視点を取り入れ、新たなニーズや技術開発の方向を模索することは企業にとって利点があるということです。
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しかし、2018年の関東経済産業局の中小企業500社に対して行った「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」の結果を見てみると、
「SDGs についての対応を検討・実施していない」とする企業が490社。
上記490社に対し、「SDGsの印象」についての質問の結果は、
「自社には関係ない」・「優先度は下がる」と回答した企業が43.9%
「取り組む必要性を理解する」・「既に取り組んでいる」と回答した企業が56.1%
となっており、取組みを考える企業が少し上回る結果となっています。
取組む考えは持っているものの、まだまだ取り組めていない企業が多数となっているという結果でした。
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では、取組めない要因はどこにあるのでしょうか?
上記調査では、「SDGs に取り組む際の課題」についての質問への中小企業の回答も記載されています。
出典:https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/seichou/data/20181213sdgs_chosa_houkoku_syosai.pdf
上位から「社会的な認知度が高まっていない」(46.0%)、次いで「資金の不足」(39.0%)、「マンパワーの不足」(33.6%)、「何から取り組んでいいかわからない」(30.2%)となっています。
2018年10月時点での調査結果であるので、現状は少し変化していると思われますが、株式会社TBMのようにSDGsに取組む企業がある一方、「何から取り組んでいいかわからない」と考えている中小企業がたくさんあるのが現状です。
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そこで、「何から取り組んでいいかわからない」という部分に提案できることを考えたいと思います。
GRI、国連グローバル・コンパクトおよび持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が開発した「SDG Compass」というSDGsの企業行動指針にSDGsを企業の戦略の中に組み込むための方法が解説されています。
その中では、「SDG Compassは大きな多国籍企業に焦点をおいて開発された。中小企業、その他の組織も、新たな発想の基礎として、必要に応じて変更して、この指針を使用することが期待される」となっており、中小企業においても参考になります。
企業行動指針では、企業の戦略の中に組み込むための方法として5つのステップから構成されています。
出典:https://sdgcompass.org/wp-content/uploads/2016/04/SDG_Compass_Japanese.pdf
ステップ1でSDGsを理解し、
ステップ2の「優先課題を決定する」において、「自社の既存の事業や技術とSDGsの目標やターゲットを紐づける」作業が入口にあります。
この作業をすることで「何から取り組んでいいかわからない」という回答から一歩踏み出せるのではないかと思います。
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「自社の既存の事業や技術とSDGsの目標やターゲットを紐づける」上で、「特許」と「SDGs」2~全体像の捉え方~でも書いたSDGsを技術的側面から捉える際に4つのカテゴリーから考えてみるのもいいのではないでしょうか。
自社の技術を整理し、どのカテゴリーへの親和性が高いかという視点から見ると分かり易くなるかもしれません。
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しかし、単純に自社技術を紐付けられない場合もあると思います。
そのような場合に、「SDGsの目標とターゲットから新たな技術開発の視点を探る」ことになると思います。
そのためには、上記の4つのカテゴリー側から考え、自社の既存技術を他分野に活かすという視点で紐付けていくことも一つの手となるのではないでしょうか。
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今回は、中小企業の取組を中心にどのようにSDGsを取り入れていくかを少し考えてみました。
次回は、「4つのカテゴリーの内のどこへ自社の技術を紐付けられそうか」ということを簡単な特許調査を行うことから考えたいと思います。
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今月いっぱいで緊急事態宣言が終わることを願っています。
↓ 西湖の写真です。キャンプにも行きたいですね…
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最後まで読んでいただきありがとうございました!
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