『白い浮遊体』

ぷかぷかと浮かんでは消え

目を凝らして

少し離れて、また近づいて

引いては寄せる小々波に紛れながら

おなかを上に浮いている

くるんと、まわって

波に優しく包まれる

逸れた仲間に思いを馳せながら

ただ浮かんでいる

今日は凪

見ると白い物体が浮かんでいた

死んだ魚が浮かんでいた

ボラか何かだろう

波を眺めながら浮かんでいるものを

仲間と逸れてしまった悲しさを

感じながらも、ただ見つめるしかない

生きとし生けるもの

哀しい定め

一生懸命生きるべしと、知らしめられる

浮かんでは消え、いずれは消えていく定め

白いおなかを見せないように

歯を食いしばりながら

教えてくれたことを、無駄にしないように

腹落した瞬間

今日も、ドラマの撮影が行われていた

女子高生と男子高校生とのシーン

「待ってください！」　って、足止めされる

マスク越しに、人差し指を縦に立てて

「シー！　静かに！」

周りには、ランニングしている学生たちも

ポカポカ陽気の中、撮影が行われていた

心地よい緊張感が伝わってきた

見ると、気持ちもポカポカ

甘酸っぱさが漂う日常

『生きとし生ける物へ』

「言葉たち、ありがとう」

「最後まで読んでいただき、ありがとうございました」