見出し画像

パッと見で決めることなかれ

同じ法人内ではあるが別事業所のケアマネ陣が、うちの施設にいらしていた。
うちの施設長は相談員出身。その他所のケアマネ陣の中にはご自身の先輩も交じっていることもあってか、物凄く彼ら、彼女らの評価を気になさる。

普段からそういった背景があったせいか、後日『お宅の施設に行った時にはガッカリしました。』というコメントを賜った時には、施設長のオーラが暗黒に染まっていた。『本当にうちの介護って、最低!どうにかしなきゃ!』と話してくれたわけだが。

そうでもないですよ と正直に答えた。

まあ、何はともあれ、そのケアマネさんたちの態度がいつも尊大。介護職員というのは、何故だか栄養士やケアマネや相談員からも部下だと勘違いされて日々仕事をしている。
看護師から部下だと思われているのも日常茶飯事だ。これはいつも思うのだが、不思議な現象だ。一番利用者さんに近い現場の人々が、一番理解されず何を言っても聞いて貰えない。挙句の果て最低だのなんだのとアホ扱いされる。

話が逸れてしまったが、何を持ってうちの施設の介護職員がそんなふうに言われたのか?ケアマネさんの言うところによると『一人廊下で壁の方を向いている食席があったけど、あれは何ですか?○○さんが可哀そうじゃないですか!』

傍から見るとそう見えるらしい。いや、見えても仕方ないだろう。しかし、介護ステーションの真ん前のその席が、そのお婆ちゃんにとってはお気に入りの場所なのである。知的障害に認知症、統合失調症があり幻視や幻聴があるというのが、世の診断である。

私的な見解を言うと、もしかしたら幻視や幻聴や妄想でもなくて、本当に私たちには見えない存在と話しているみたいなのだが、それはさておき。

色んな情報を拾ってしまう脳なので、その食席を前に向けると、色んなことが目に入って混乱してしまうだろう。
そして彼女は、あちらの存在とも会話して一人で「うふふふ!ぎゃはは!」と笑っていることもあるが、こちらの世界、私たちのことも気に入ってくれている。介護職員が仕事をしている姿を観ていたいのだ。

初めて前を通りかかった時、車椅子に座った小さな彼女が『ぉーしぃー、おーひー。』と何かを要求しているのが何だか分からなかったが、最近は分かる。

珈琲をくれと言っているか、もしくは、氷をコップに入れて渡してくれと言っている。

『こーしーじ、こーふぃぃいいい!』と怒っている時には、頭から100万個くらい?マークを出して、ほとほと困ったが、分かろうと思って相対していると、ある瞬間、こちらが大声で叫ぶことがある。

『珈琲に氷か!珈琲に氷入れて!ですね!?そうでしょ?』

『ふふふ。じょー、じょー。(そー、そー。)』

かくして彼女は、こちらの世界でもあちらの世界でもご機嫌に過ごすことが出来ているのだ。

暴れん坊でもあり、特に怒ったとき、嫌いな介護さんが仕事についているときにはベッドに粗相するなど、狂暴な一面もあるが、誰もが一人残らず彼女を愛していて、尊重している。

先日、全然違う雑談を例のお偉いケアマネさんの一人としている時にふと思い出して『そう言えば、施設長に聞きましたけど、廊下で壁の方を向いて過ごしている方についてですが。。。』と、おもむろに説明し出した私。
分かって貰えるかどうかは分からなかったけど、懇々と、しかし、しっかり捉えて、どういう状況なのか?ということを喋り倒したった。

その経過で相手の方は怯えたりビックリしたりと色々な感情を出しながら聞いてくれたが、最終的に「そうかあ。そうだったんですね。」と理解してくれた。
力説し過ぎて爆笑される瞬間が多かったのが気がかりだが、とりあえず通じた。

私自身も良く怒ってしまうことがあるものの、うちの施設はそう悪い施設ではない。良いところも悪いところも含め、トータルでとても面白くて優しい良い施設だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?