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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンに観るゲーム分析

先日・・・いや、昨日か。

ゲーム分析について書きましたが、私がまだ学生で交流分析を学んでいた頃に観た映画を思い出しました。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン (2002)です。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン (2002)は、60年代、FBIを手玉にとって世間を騒がせた実在の天才詐欺師フランク・W・アバグネイルと彼を執拗に追う捜査官との追跡劇を軽妙なタッチで描くスティーヴン・スピルバーグ監督作品です。

原作は、現FBIのアドバイザーとして活躍するフランク・W・アバグネイル本人とスタン・レディングによる同名自叙伝。つまり、これは嘘みたいな実話なのです。

自慢の両親が離婚するという現実を受け入れられず家出した少年は当時19歳でしたが、パイロットになりすまし世界中を飛び回ったり、医師になりすましたり、偽札や偽の小切手、偽の身分証明書作りもお手の物でした。

FBIはなかなか彼を捕まえられないどころか、顔も特定できないし年齢も分からない。もちろんどこの誰かも分かりませんでした。

しかし、街にしんしんと雪が降り、クリスマスイブになると、犯人である少年は、自分を血眼になって追っている捜査官に電話をかけて来ます。

「メリー・クリスマス。刑事さん。」

「おまえか?!どこにいるんだ?!」と捜査官。

それが毎年続いたと言います。翌年も。

「メリー・クリスマス、刑事さん。」

「おまえ、何で毎年クリスマスになると俺にかけてくるんだ。さてはかける相手がいないんだろう。」と捜査官が言うと、図星をつかれ動揺した若き詐欺師は電話を切ってしまいます。

そんなことが何度も続いて、やっと逮捕出来るという直面まで追い詰めたあたりの二人のやり取りが、せつないんです。

少年は天才でした。そりゃあ世界中を騙して、あんなに長いこと捕まらなかったのだから、そうでしょう。

でも、この切なさの理由は、”もしかしたら自分が悪いことをすればお父さんとお母さんはまた元通りに戻ってくれるんじゃないかな?”と、そんなことが目的で派手な詐欺をやってしまっているというところです。

ただ、両親の離婚が受け入れられなくて、ただ、元の自慢の仲の良い両親に戻って貰いたくて。

トムハンクス扮する捜査官はとうとう追い詰めましたが、まはしても取り逃がそうとしてしまいます。

しかし、今度は彼を止めず、捕まえもせず、ただ彼の背中にこう言いました。「時には・・・・」と。

「時には嘘の方が楽だよな。」と。

逃げ行く彼の背中に一言の言葉を投げて、追うことをしませんでした。

「明日、FBIで待ってる。」

(そのまま逃げちゃうじゃん!)

いや、かくして彼は、月曜日の朝FBIへやって来ました。

両親に向けて必死でキャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン!と叫びながら犯罪を犯していたようなものでした。僕を止めてくれ!捕まえてくれ!よいう心の声。

捕まえて、捕まえてよ。僕は悪人で、こんなことをして困らせているのだから。

しかし、ご両親は彼を捕まえてくれなかったし、元通りの夫婦にもならない。薄々彼も分かっていましたが。

長年 捜査官が調べ続けたのは、彼の犯罪歴ばかりではありませんでした。そんな彼の犯罪の動機と、その裏側にある いてもたっても居られない悲しみと寂しさをその足跡から読み取っていたのです。

そんな思わぬ理解者からの「時には真実の方がつらいよな。嘘の方が楽だよな。」という共感に彼は心が動きます。

彼が盛大にやらかした行動、映画にすらなった行動がまさに交流分析でいうゲームでした。

こっちを見て と。誰か助けてくれ と。

先述したように、ゲームには、男の子が女の子スカートめくりをするような一瞬のものから、生涯をかける長いゲームまであります。

ゲームをストップさせ見事彼をキャッチした捜査官は、その後少年に偽造カードや偽札を見せては、それを見破り捜査協力するFBIのコンサルトとして雇い、愛し、受け入れ才能を開花させるべく尽力しました。

そして、末永く共に働き、末永く仲が良い友人同士になったそうです。

犯罪者を天才だからと言って採用するアメリカという国ももちろん凄いのですが、彼の無意識の壮大なゲームを理解し、ストップをかけた捜査官には、さらなる壮大な愛と優しさ故のマネージメント力を感じます。

でも、私たちは、出来れば、辛いとき、寂しいとき、何かを受け入れられないとき、犯罪を犯す前にもっと違う表現をすれば良い。そしてもしも誰かがそんなことを打ち明けてくれたなら、そっと耳を傾けて、それがどんなに微力でも小さな一助になれればいい。


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