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福岡市西区の長垂海浜公園PARK-PFI事業で考える地域コミュニティとパブリック・コモンを育む公園施設の将来像

 Plat Fukuoka cyclingの生活圏にある福岡市西区の長垂海浜公園において、福岡市は令和6年度にPARK-PFI事業により民間施設の公募を開始することになりました。

 福岡市では近年、博多駅前の明治公園や中洲の清流公園など都心部の中規模公園を中心にPARK-PFI事業に取り組んでいます。福岡市のセントラルパークと称する大濠公園(福岡県所管)と舞鶴公園(福岡市所管)では大濠公園が歴史的にも長く民間活用を続けておりボートハウスやスターバックスなどは市民の日常の風景として根付いてきました。

大濠公園の公園利活用の記事はソトノバで分かりやすく記事となっておりますので、ぜひご覧ください。

 今回、近所の長垂海浜公園でのParkーPFI事業については、福岡市内のこれまでの事例とは異なり都心部ではない郊外部の中規模の公園での事例となることから、どんなPark–PFI事業であるべきかを考えたいと思います。


公園の活用とはー都市公園法とPARK-PFI

 私たちが普段何気なく使っている公園は、都市公園法という法律(以下「法」という。)に基づき管理されています。都市公園といっても広域を担うものから住宅よりの公園、運動公園など様々ありますが、ここでは都市公園の中でも「住区基幹公園」と呼ばれる地区公園や近隣公園、街区公園を念頭に公園と呼んでいきます。公園には遊具以外にトイレなどの施設の他、特に近年はPARK-PFI事業などを活用したカフェやレストランなどの建物が建つようになりました。これらの施設は「公園施設」(法2条2項)として「都市公園の効用を全うするための施設」と定義されています。

公園の「効用」を生む「公園施設」そして、それを利用し効用を享受する「公園利用者」とは

 公園の効用の考え方は近年大きく変化しています。例えば2017年の法改正までは公園内に売店や軽飲食店を設置する場合、出入口は公園の外周に接することはできませんでした。それが法改正で公園の敷地ギリギリに建築し、民地と連続してもよいという考えになったのです。
 つまり、公園の中だけで公園という機能を閉じ込めるのではなく、周辺エリアにその効用がにじみ出ていくことで、公園周辺エリアの魅力向上、都市経営的には地価上昇による税収入増なども期待されています。

 次にその公園を利用する公園利用者をどのように考えるべきでしょうか。ここで考える公園は「住区基幹公園」というもので、徒歩圏内に居住する人が利用する公園となっています。利用者といっても様々な利用形態があり、静的利用を好む人とアクティブな利用の志向する人など一律ではありません。これらの様々な需要をお互いが干渉することなく済む大規模公園ではない中規模の公園において行政が整備する公園で実現することは困難といえます。(その最終形態が禁止行為・禁止看板だらけの公園の姿です)
 では中規模の比較的利用者同士が干渉し合ったとしても公園の運営によってマネジメントできないか?その可能性をすでに法改正では見込まれています。それが公園活用におけるローカルルールなどを協議できる協議会制度の創設です。公園活用の第一人者である町田氏の言葉を借りるとパブリック・コモン観念の普及・共有により、「官のパーク」から「市民のガーデン」へ意識スライドを目指す形となります。

 東京の渋谷区にある北谷公園のPARK-PFI事例はリニューアルでは日常的にたたずむことができる公園とイベント集客という賑わい機能をまちなかで実現している事例です。以下記事とインタビュー記事と合わせてご一読ください。

長垂海浜公園でのPARK-PFIによるリニューアルに期待すること

 長垂海浜公園は海沿いに砂浜と広い芝生、遊具、松林で構成されている近隣公園です。周辺には、BBQなども楽しめるレストランが同じ海岸線に立地しつつ、後背地は集合住宅や戸建ての住宅地が広がっています。
 今回の長垂海浜公園へのPARK-PFI導入においては、この公園にはMICE機能としての来訪者を増やすことが念頭にあります。その中で、どのような公園の姿が望ましいかを考えます。

デンマークの「観光の終焉」に学ぶ、「場所」を過ごす地域の人びとのライフスタイルを国内外から訪れる来訪者が空間を共有できるようなパブリックな空間の可能性

 デンマークのコペンハーゲンが打ち出した観光戦略が「観光の終焉」に基づく戦略です。

 つまり、名所を巡るという観光ではなく、観光客も「一時的市民」としてその地域のコミュニティーの一員として扱うことで、その地域のライフスタイルを体験してもらうというものです。その代表例がコミュニティーディナーという地域の人がただ一緒に食事を囲むというものです。このコミュニティーディナーの参加要件はなく、来街者も参加することができます。実際に行った方の記事は下記のリンクを紹介いたします。

 コミュニティーディナーは大きな空間で行われる立ち飲みのようなものと思います。立ち飲みは比較的知らない人同士でも和気あいあいとお酒を楽しむことができる雰囲気があるように、知らないその地域の人と偶然の出会いから時間を共有することは他のレストランではできない体験になると思います。

公園をたのしむための交通アクセス戦略とウォーカブル戦略

 上記のコミュニティーディナーのような場のたとえで立ち飲み酒場をあげたように、交流の場にはアルコールの存在はかかせないこと、また一方で長垂海浜公園は最寄りの今宿駅からは徒歩で800mほどあり、駅近とはいえず、一定のクルマによる来訪も想定する必要があります。周辺のレストランなどでは、お店の駐車スペースは概ね20~30台程度は設けています。
 公園というパブリックスペースを活用する上でも、気候変動対策としてもクルマの駐車のための空間は極力そぎ落としたいものです。
 このあたりは、駅まえの道の高質化を図りつつ、魅力的なアクセス歩行空間やタクシー(もしくはライドシェア)など公共交通機関の戦略をまちづくりとして官民連携で考えていく必要があると思います。特に長垂海浜公園のような都心部ではない公園のPARK-PFI事業を行う際には、行政としても公園部署以外も連携する必要がでてくる箇所と思います。

 今宿から西に糸島エリアまでは、福岡という大都市のアーバンライフと海と山、そして農業や酪農など自然が一体となった暮らし方ができる大変魅力的なエリアです。そしてこのエリアには九州大学をはじめ多様な人材をもつ人が集まっています。この公園にできる公園施設が地域コミュニティを活性化し、新しい出会いを生むような場所となることを願っています。

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