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デンマークのにぎやかな公民館ーAbsalon

公民館と聞くとどのようなイメージを持つだろうか。

日本だと、おじいちゃん・おばあちゃんといったお年寄りが集まる、もしくは小学生くらいの幼い子供たちが隣接している公園で遊んでいるイメージを持つ人が多いのではないだろうか。最近では、誰も使っていないというイメージを抱く人もいるかもしれない。

個人的には、地域のごみ拾いイベント(次の日参加証を学校に提出しなければならないという半ば参加が強制的なイベント)の参加賞のメロンパンをもらいに行く、もしくはお母さんに段ボール捨てを頼まれて行くというくらいでほとんど行かない場所ある。

今回取り上げるAbsalonというデンマーク・コペンハーゲンにあるコミュニティースペースは、どちらかというと若者が訪れる場所である。もちろん家族みんなで利用する人もいる。

この記事では、幅広い世代を魅了し、今後の日本における公民館活用の1例ともなりうるAbsalonを紹介したいと思う。

目次

  1. Absalonはどういう場所か

  2. 何が若い世代を引き付けているのか

  3. 個人的に印象に残った点

  4. まとめ

1.Absalonはどういう場所か

Absalonのホームページには、紹介文としてこのように書かれている。
「Absalon is a community space where locals and others come together through various activities.
(Absalonは地元民やそれ以外の人が様々な活動を通して集まるコミュニティースペースです)」

このような紹介もあった。
「Think of Absalon as an extension of your own living room, filled with friends, table tennis, music, backgammon, film, bingo, food, dance, coffee, chess, yoga, markets, parties, talks and everything in between.
(Absalonを友達・卓球・音楽・すごろく・映画・ビンゴ・食事・ダンス・コーヒー・チェス・ヨガ・マーケット・パーティー・おしゃべりがあふれるリビングの延長線上にあるものと考えてください。)」

大雑把に説明すると、コペンハーゲンにある様々なイベントが行われている人気の公民館といったところだろうか。

ここからはAbsalonを訪れた体験談をもとに、説明したいと思う。

私がAbsalonを知ったのは、友達から誘われたことがきっかけだった。
友だちと晩御飯を食べた後、「Absalon行ってみない?」と言われついて行ったのが最初だった。
大音量で音楽が流れていて、人がノリノリでダンスを踊っている場所、普通のナイトクラブと同じような場所なのだなと思っていた。
帰り際に友達から「今度は日中に勉強しに来よう!」と言われ「え、こんなところで勉強とかできるの?」と思ったのがAbsalonに興味を持つきっかけになった。

結局、Absalonで勉強はしなかったが、しばらくしてからフリーマーケットも開かれるということだったので、そのフリマに行ってみた。
それがとても衝撃だった。
あんなにナイトクラブ感あった場所で、かわいい古着やハンドメイドの器が売られる普通のフリーマーケットが行われていたのだ。
しかも、会場の奥の方では、家族で会話を楽しみながらランチをしているではないか。
気になって、奥の方へ行ってみると、カフェが併設されていて、コーヒーや軽い食事も楽しめるようになっていた。

カフェの様子

また、色の鮮やかなポスターが飾られている等とてもオシャレだった。

2.何が若い世代を引き付けるのだろうか

現時点で私が考えるAbsalonの若者を引き寄せる魅力を2つ挙げたいと思う。

1つ目は、イベントのふり幅である。
朝が早いイベントだと朝8時くらいから行われる。親子ヨガやコミュニティ朝ごはん(安くで朝ごはんが提供され、集まった人と食卓を囲むもの。)が午前中行われたかと思えば、フリーマーケットが始まり、夕方になるとコミュニティーディナーが開催され、夜にはナイトクラブになる。日によっては、バレエ鑑賞や陶芸教室が行われることもある。
これだと、「友達を誘って遊びに行こう!」となるのも納得する。
以前は、地域の公民館でのイベントと言ったら俳句教室とかいまいちピンとこないものをイメージしていたので、なんとも斬新な場所の使い方だなと思わされた。

フリーマーケットの様子
とてもにぎわっていた。

2つ目は、Instagramを活用した宣伝方法である。
AbsalonのInstagramはとにかくカラフルである。そして、投稿をぱっと見たときにどんなイベントがあるのかわかりやすい。
Instagramを頻繁に使用する若者にとって響きやすいのではないかと思う。
イベントの宣伝としてカラフルな写真と共にInstagramを活用する日本の公民館は多くはないだろう。

3.個人的に印象に残った点

Absalonに行ってみて、単純に楽しかったなと思うと同時に、どうやってこれほど幅広い年代を巻き込めるのだろうか、また人気を継続させているのだろうか、とも思った。

日本でも「地域住民のつながりを促進しよう」、「地元コミュニティを作ろう」という取り組みが行われていることを学んだことはある。
しかし、取り組みを進めていく中で持続性が問題になることが多い印象がある。
「始めは人が集まっていたけど、そのうち一部の人に負担が偏ってしまうようになった」とか「いきなり地域の実情に合わない取り組みが始まって、盛り上がらずに終わる」といったことはよくあるのではないだろうか。

一方、Absalonはどうだろうか、ホームページの情報によると、毎週大体
60個のイベントを開催しているらしく、夜のコミュニティーディナーに関しては1週間前からの入場チケットが売り切れるほどの人気ぶりである。
さらに、最近ではコペンハーゲンの観光スポットとしても知られるようになっている。

4.まとめ

個人的には、日本にもAbsalonのような存在が欲しいなと思う。
世代を超えて楽しめる、様々な人と会える、そういった場所はなかなかない。

学生のうちは、授業・部活動・行事といった学校での活動が大半を占める。すると、そこでの活動ができなくなると、全てがなくなったような感じがするものだ。
もし日本にもAbsalonのような学校とは別のコミュニティーがあったら、私を含めコロナ禍で学校が休校になってもに孤独感を感じる若者は減っていたかもしれない。
(もちろんこれはコロナ禍に限ったことではないが)

留学中、コロナ禍の日本での生活と真逆ともいえるデンマークの生活を送っていると、友達とご飯を食べる・スポーツをする・旅行をする・授業を対面で受けて隣の席の子と話す、といった数年前までは”当たり前”だったことがこんなに楽しかったんだと気づく。
だからこそ、人と直接会って話すことはとても大切なことなのだなと思わされる。

”世代関係なく楽しめる・つながれる場所”としての公民館がデンマークにはある。日本の未来の公民館としてコペンハーゲンのAbsalonを見るのも面白いかもしれない。


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