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2022年に観た 個人的・ベスト展覧会 / 作品 振り返り

2022年もあと1日。今年も「1年間に見た ベスト展覧会」を振り返りたいと思います。

今年見た展覧会(イベント含)は、美術館・ギャラリー等合わせて400展示。2020、2021年と、展覧会の中止・延期が相次ぎ、見たくても見に行けない展示も多かった反動もあり、これまでで最も多くの展覧会を見た1年でした。

このなかから、
 1) 美術館の展覧会
 2) ギャラリーの展覧会
 3)作品単独
で個人的に印象に残ったものを振り返ります。


1) 「美術館」の展覧会 BEST10

今年は個人的に「原点回帰」というか、”今までに見てきた作品の良さを改めて認識する”ような「個展」が中心になりました。

昨年は「コラボレーション」や「リアルとオンラインの融合」の展覧会を多く選びましたが、今年は比較的自由に展覧会が見られるようになり、リアルな会場で、そのアーティストさんのつくるものや世界観を目の前で思う存分に触れられことに対する嬉しさを実感したり、その土地・会場で見ることに意味を感じられる展覧会が印象に残りました。

【1位】 明和電機ナンセンスファクトリー展 in つくば @茨城県つくば美術館 (22/05/07, 08, 15, 22)

明和電機の展覧会は過去にも見に行きましたが、今回は明和電機の原点でもあるつくばでの展覧会。さらに、1994年と2010年の頃のライブコンサート(パフォーマンス)の再現や、ツクバつながりのヨシタケシンスケさん・落合陽一さんとのトークなど多くのイベントも開催。

美術館では初展示の学生時代の作品展示や、卒業制作の再制作なども含め、印象に残る展覧会でした。3週間ほどの会期に4回訪問してしまいました。

明和電機が筑波大学の学生時代からどのように考えて「明和電機」というアーティストとしてデビューしたのか、というトークも。また、展覧会だけでなく、つくばの街を歩き、筑波大学も見学させていただいたりと、展覧会以外からの情報が多かったのも強く印象に残った理由です。

今年は明和電機だけでなく、筑波大学の総合造形出身の方の展覧会で印象的なものが多かったので(岩井俊雄展、ヨシタケシンスケ展、タムラサトル展など)、その意味でも筑波大学の雰囲気などを含めて体感できたのが良かったと想っています。

【2位】 八谷和彦特別展「M-02JとHK1」~無尾翼機に魅せられて~ @あいち航空ミュージアム(22/05/05)

「風の谷のナウシカ」に登場する飛行具を実際に飛行できる作品として制作されている八谷和彦さんの展覧会です。こちらの展覧会では、その作品「M-02J」とあわせ、「HK1」という戦前につくられた無尾翼機に注目した展示となっていました。

広く、自然光の入る会場で「M-02J」の実機を拝見出来たことに加え、「無尾翼機」についてと「M-02Jができるまで」についての2つのトークに、実機を前にしての解説を伺うことができました。

さらに、会場の「あいち航空ミュージアム」自体も、日本の航空の歴史をたどれるような見応えのある博物館。特別展だけでなく、常設展と両方を通じて、日本の飛行機にまつわる歴史を模型とそこに携わった人の想い、「空を飛ぶこと」の魅力が伝わってくるような展示でした。

【3位】 どっちがどっち?いわいとしお×岩井俊雄 -100かいだてのいえとメディアアートの世界- @茨城県立近代美術館(22/07/02)

(▲webメディア「ナンスカ」に寄稿した記事です。)

岩井俊雄さんは、メディアアートの書籍などを開けば必ずお名前を拝見するアーティストでありながら、動いている作品を目にする機会がこれまであまりなく… 私にとっては、その活動を総括的に見られる初めての展覧会でした。

さらに、過去に拝見したことはあるもののやはりインパクトの強い《時間層II》(1985年)に加え、《映像装置としてのピアノ》(1995年)を初めて見ることができ、実際に触って体験することも可能となっていた点でも印象に残りました。

図録のない展覧会だったので、過去の個展の図録を探して購入したところ、過去の展覧会とも似た構成なのかもしれませんが、私にとっては初めて見られる機会で、本当に見られて良かったと思いました。

2018年に良かった展覧会の2位として、「メディアアートの輪廻転生」@山口情報芸術センター[YCAM]を挙げていたのですが、その時のインタビューなどにあった、「メディアアートを維持していくことの難しさ」の意味を、当時の記事を読み返しながら少しその意味を理解できた意味でも印象に残る展示となりました。

【4位】 小松宏誠 光と影のモビール 森の夢 @金津創作の森美術館 アートコア(22/05/28)

こちらは、2020年に開催予定だったものの、コロナ禍でずっと延期になっていた展覧会を見ることが出来た… という意味でも感慨深い展覧会でした。

鳥の羽根や蜘蛛の巣、木の枝のような自然と素材から生まれる動きや色、人工的な素材で作られる自然な動きなど、これまでに個別に見てきた作品が、大きなひとつのインスタレーションになっている様子。それから、天井が高く計算されたライトで照らし出された屋内と、自然光が降り注ぐ緑でいっぱいの屋外の両方の環境で見ることに感激でした。

小松宏誠さんの作品は映像で見ても美しく、コロナ禍にはYoutube上でも作品を拝見していましたが、インスタレーションとして、その空間に入り込んで目の前でその動きを見られる良さを感じられる展覧会でした。

【5位】 中﨑透 フィクション・トラベラー @水戸芸術館 現代美術ギャラリー(22/11/12)

(▲webメディア「ナンスカ」に寄稿した記事です。)

過去に発表された作品たちで構成されながら、展覧会そのものがひとつの大きな新しい作品のようになる構成が驚きの展覧会でした。さらに、その意味の「ズレ」は、作品ひとつひとつのテーマでもある、芯のとおった展覧会でした。

このため、1つの作品の中に2つの異なるストーリーが生まれる面白さ、ライトボックスの作品など角度を変えると違った表情に見えてくる作品の面白さ、中﨑さんの故郷である水戸で開催されたことで、そこに書かれた”誰かの記憶”が作者の記憶のようにも錯覚してしまう面白さがありました。

また、はじめてこれだけ大きな個展を拝見したことで、これまで知らなかったパフォーマンスと作品の繋がりが見えたのも良かった点です。

【6位】 江之浦測候所 (22/03/12)

過去にも訪問したことはありましたが、「江之浦奇譚」を読んでから観られたこと、「MOA美術館」と合わせて巡ったことでより深く楽しむことができました。

【7位】 ジュリアン・オピー 「OP.VR@Parco」@PARCO MUSEUM TOKYO (22/10/24)

VRでこんな作品の楽しみ方があるなんて…と驚きの展覧会でした。VRながら、その会場で観る面白さがありました。

【8位】 Chim↑Pom展:ハッピースプリング @森美術館(22/03/09)、第二会場 (22/03/31)

【9位】 特別展示『プロトログ――山中俊治デザインの発生学』 @インターメディアテク (22/04/26, 05/13)

【10位】 ゲルハルト・リヒター展 @国立近代美術館 (22/06/10)

また、国立近代美術館と比べると小規模ではあるものの、巨大な作品を落ち着いた空間で贅沢に見ることができた、こちら↓の展示も印象的でした。
▍ゲルハルト・リヒター「ABSTRAKT」 @エスパス ルイ・ヴィトン大阪(22/02/11)

2)「ギャラリー」の展覧会 BEST5

美術館での展示と規模が異なるので別にしましたが、こちらも印象に残った展示です。

▍井村一登 Æ/æ @MA5 GALLERY / SANLORENZO JAPAN

▍横手太紀 「even a worm will turn」@parcel

▍ヨフ「Paraillusion」 @art speace kimura ASK?

▍Waku 「素朴光」@CON_

▍エキシビジョン Vol.2/むいみなのだ(千葉雅也/五木田智央/ノセレーナ/児嶋啓多) @日本橋アナーキー文化センター

3) 「作品」BEST5

展覧会とは別に、作品単独で印象に残ったものです。

《Metaverse Petshop》 / エキソニモ (GEMINI Laboratory Exhibition @ANB Tokyo)

また、エキソニモの作品では、2020年に開催された「盗めるアート展」(same gallery)で発表された《アートブレスト》のその後が、グループ展『SPRING SHOW』 @WAITINGROOM)で発表され、こちらも印象に残りました。

《エントロピア》/ クワクボリョウタ(@越後妻有里山現代美術館 MonET)

クワクボリョウタさんの作品が破壊されたのは、2022年の衝撃的だった事件のひとつですが、その事件への対応、そして、そこから生まれたこちらの作品を拝見して、益々クワクボさんの作品が好きになりました。

《映像装置としてのピアノ》(どっちがどっち?いわいとしお×岩井俊雄 -100かいだてのいえとメディアアートの世界- @茨城県立近代美術館)

《Force》 / 名和晃平 (@越後妻有里山現代美術館 MonET 常設展示)

また、同じく名和晃平さんの《Biomatrix (W)》 (名和晃平 生成する表皮 @十和田市現代美術館)も印象的でした。

《How to Disappear》/トータル・リフューザル(多層世界とリアリティのよりどころ@ ICC)

4) その他、2022年に印象にのこった展覧会

Best10に書き切れないながらも、印象に残った展覧会はこちらです。

▍春日神霊の旅 -杉本博司 常陸から大和へ @神奈川県立金沢文庫

杉本博司 本歌取り―日本文化の伝承と飛翔 @姫路市立美術館

▍ヨシタケシンスケ展かもしれない @世田谷文学館

▍ワニがまわる タムラサトル @国立新美術館

▍ダミアン・ハースト 桜  @国立新美術館

▍きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ? @日本科学未来館

▍ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に @ポーラ美術館

▍つくる展ーTASKO(タスコ)ファクトリーのひらめきをかたちにー @高崎市美術館

▍とある美術館の夏休み @千葉市美術館

奈義町現代美術館

▍名和晃平 生成する表皮 @十和田市現代美術館、地域交流センター

▍WOW「Unlearning the Visuals」@寺田倉庫 E HALL

▍加藤泉一寄生するプラモデル @ワタリウム美術館

▍諏訪敦『眼窩裏の火事』 @府中市美術館

過去の「BEST展覧会」はこんな感じでした。

◆2021年:2021年の 個人的・ベスト展覧会:2020年は「コラボレーション」「オンライン展示の新しい試み」が印象に残った年でした。
◆2020年:2020年の 個人的・ベスト展覧会:2020年は「個展」が印象に残った年でした。
◆2019年:2019年の 個人的・ベスト展覧会:2019年は「アートってなんだろう?」と、制作・展示・鑑賞というそれぞれの過程について考え直すような展示が印象に残りました。
◆2018年:2018年 展覧会 ベスト10 :2018年は「”人間らしさ”ってなんだろう?」「技術の変化の先に、どんな新しい”感覚”や”感情”が生じてくるんだろう?」ということを考える展覧会(作品)が強く印象に残った年でした。
◆2017年:2017年 展覧会 BEST10 【美術館編】
◆2017年 展覧会 BEST10 【ギャラリー編】
◆2016年:● 2016年 展覧会 BEST 5 ●
◆2016年 アート作品 BEST 5 ●
◆2015年: かってに選ぶ BEST展覧会 -2015
◆2015年:かってに選ぶ BEST作品 -2015
◆2014年:かってに選ぶ BEST展覧会 -2014
◆2013年:展覧会2013(展覧会BEST3)
◆2012年:展覧会2012(展覧会BEST3)
◆2011年:展覧会 2011(展覧会BEST3)

2023年も、素敵な展覧会・作品と出会えますように!

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