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文字が無い世界での文字の意味【本:サバンナの記録】

1963年の夏から64年の春にかけて、京都大学の学術調査隊の一員としてタンザニアに9ヶ月滞在された梅棹忠夫氏の著書は、報告書でも紀行文でもなく、同じ地球上に生きる同時代人として、よき記録者であろうともつとめた、ある一群の人生の記録。

あまり同じ本を何度も読まないけれど、湖畔の家、基地、漁師、精霊の祭り、タンガニイカ湖、ゴマ族呪術師、文字が無い世界での文字の意味、神隠し、生き抜く力、山、遊牧民、長老会議など、世界観が広がっていき、また手に取った。

カフェの店員さんに、「当店2時間制です」と言われ、良くも悪くも時間制限がある中で書き終える。それにしても、混んでいるのならまだしも、お客が私しかおらず、貸し切り状態なのに、それでも決まり文句のように声かけてくるのは、残念だよね、と思いながら。

研究&文学という、一見相反する、右脳と左脳を同時にフル回転させた人生は、面白い。「公共政策」という学術(経済学、統計学、定量性、数値、EBPM)には、あまり理解されない文学や人生の記録には、「真実」があって、躍動感が溢れている。

いわば、この20世紀の地球上における、一群のひとびとの、一種の人生の記録。よき観察者であり、よき聞き役であろうと心掛けた。そして、同じ地球上に生きる同時代人として、よき記録者であろうともつとめたのである。かれらの社会と文化についての学術的記録のほかに、断片的ではあるが、この本のような形での人生の記録があっても、無意味ではなかろうと思ったのである。


1965年初版
タンザニア、湖畔の家
トングエ語、スワヒリ語

基地、漁師、精霊の祭り
タンガニイカ湖

ゴマ族
呪術師、嫁入り、
マンガティ語

ジャパ二の国
文字が無い世界での文字の意味

神隠し、老人、旅人
生き抜く力
酒、山、遊牧民、牛、牧畜民、神
白人(ムズング)
人間狩り

長老会議、宴会

愛・結婚・家庭
わたしたちの社会では、愛を結婚の必要条件のように考えている。愛なき結婚を、罪悪のようにさえ考えている。しかしそれは、どういう根拠にもとづいているのだろうか。われわれの社会は、不必要なまでに「愛」に執着し、「愛」を愛しているのかもしれない。

制度主義的ではなく、真情主義になっている。

同じ時代を生きる民族の人生の記録は、理解に時間がかかるものもあれば、自分たちの「当たり前」を捉えなおすきっかけを与えてくれる。そうか、「愛」が無くても成立する「結婚」というのもまた、あるものなのか。そして、良し悪しだけで判断するのではなく、現状の人生の記録に至った過去にもまた目を向けてみるのも、今の自分や未来を考える上で大切なものなのだ。

半世紀以上前の記録に、2023年の私は感謝しているし、自分も右脳と左脳を行き来する人生でありたい。

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