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自分が欲しいものが存在しないなら作り上げればいい【映画「ロングショット」を観て】

※本文にはネタバレが含まれます※

「ロングショット」は大好きな映画なのですが、邦題のサブタイトルわざとだろってくらいダサいのはどうして…?
「僕と彼女のあり得ない恋」ってラノベかなんかなん?
と思わせるような…というかこの映画はたしかにラブコメだけど恋愛要素よりももっと素晴らしい要素が詰まっているんだよ!!
恋愛にフォーカスしがちなのやめいーーー!
ブラックユーモア満載で、めっちゃ笑えてハッピーエンドで元気が出るとともに、それだけじゃない素晴らしさの詰まった映画なので、是非次観る映画ないよって方に観ていただけたら嬉しいです!



物語は、過激なライター、フレッドが、自分の正義を貫きすぎて会社と衝突し、リストラされるところから始まります。
失意の中、親友と一緒に行ったライブで、
政治家として大活躍中の幼馴染シャーロットと出会い、利害が一致して彼女の専属ライターに就任。
二人はたちまち恋に落ちますが、ひげもじゃの冴えないライターと美人時期大統領候補では釣り合わないことこの上なし。
さらに妥協が必要な政治界で、自分の信条を貫きたいが世渡りの巧さを求められるシャーロットに対し、
政治界の大物は行手を阻むように罠(彼女の政策の一部を変更しないとフレッドのオナニー動画をばら撒く)をしかけます。
しかし彼女は、女性初大統領就任という夢や、世間体に屈せず好きな人を選ぶなど、自分の欲しいものを掴み取る…という物語です。


この映画が一際輝いているのは、身分を超えた恋愛ドラマが美しいからではなく、
まさに”今”の常識に疑問を抱く制作スタッフ陣の問題提起が散りばめられているからだと思います。


例えば、女性大統領が未だ誕生していないこと。
フレッドがファーストレディーならぬファーストミスターになる、という逆シンデレラストーリーなエンディングは、未来への期待と痛烈な批判に感じました。
また、
シャーロットが大統領選に出馬するに当たって、数々のセクハラを耐え抜いてきたこと、
女性だから、という理由で色んなことを妥協せざるを得なかったこと、
政治の世界だけでなくどんな業界で活躍する全ての女性にも当てはまるんじゃないかと思います。
(シャーリーズ・セロンがこの映画の主演を引き受けた理由がよく分かります…)
ただ、この映画が公開された後に(多分)アメリカ初の女性副大統領にカマラ・ハリスさんが就任しているので、(完全じゃないけど)願いは届いたぜ!(ヤッターマン)
また、物語の最後、女性大統領が誕生後、
情報番組の中でセクハラ発言をされた女性が、それまで受け流していたのにちゃんと怒りを顕にしたシーン(ブチギレてコメンテーターの頭にコップをぶん投げる)からも、誰かの一歩は社会にとっての大きな一歩になるんだよな、と思わされました。


例えば、友達同士の間でも、差別が自然に存在してしまうということ、それを通じて一瞬で友人関係が壊れることもあるということ。
フレッドには、リストラされた人生最悪の日でも自分を見捨てず支えてくれた親友がいます。
シャーロットとの恋も仕事もずっと応援してくれ、支えてくれたのに、彼が共和党員でクリスチャンだということを知った瞬間、彼を完全拒否し「今までよくも洗脳しやがったな!」とブチギレます。
(おーう)
フレッドは元々頑固で正義感が強く、間違ってると思うことには社会にはびこる不正や差別にめちゃくちゃ厳しい人間。
それなのに、自分の一番身近な人が黒人、という理由だけで彼がクリスチャンであることすら気づかず、自分がずっと無意識に差別感情を持っていたことに気づけずにいました。
また、自分とは異なった政党を支持していることを受け入れられないこともある種の差別と同じなのでは?と思います。
日常の中に、自分自身の中に、こんなに自然に差別が潜んでいるんだという真実に警笛を鳴らされた想いです。
(最終的に自分が隠れレイシストだったと自覚したフレッドはちゃんと親友と仲直りしました、安心して下さい)


女性が経済的にも社会的にもめっちゃ強くなり始めている現代で、
逆玉の輿的な逆シンデレラストーリー的な恋愛が増えるのだとしたらまさに令和!って感じですね、最高じゃないか。
私もそんな目で見られてえ〜(転職してノンストレスな日々を手に入れたと同時に給料が半分以下近くになった女が遠い目をしています)。
経済的に、精神的に強くなって、かっこいいシャイニーな大人の女性になりたいものです。
恋愛のあり方が(女性、男性とか性別関係なく)多様化して、
色んな形が飛び交って、恋愛のルールとか常識がどんどん変わっていくといいな。
恋愛は女性と男性だけで成立するものだけじゃないし、
男性が働きに出て女性が家庭に入るだけが結婚じゃないし、
もしかしたら2人だけでするものが恋愛じゃないかもしれないし
(それは今の私にとっては受け入れ難いし悲しいけど…号泣)
その人がそれで自分らしくいられて幸せなら、色んな形があっていいと思います。
性別でが理由で誰かが不自由を被るとか、
その人の信条や思想で差別されるとか、
そういった悲しいことが起きないためにも、自分のことをいつも注意深く見張っておきたいと思いますし、
今そういう世界じゃない、と思うのなら、
シャーロットのように作り上げていきたい、と強く思います。

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