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創作

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2019年5月の記事一覧

はじめての小さな罪

「そこにね、おばけいるよ」

そう言って6歳の私は襖を指差した。

「あそこに、白い服を来た女の人がいる」

「本当に見えるんかい?」

おばあちゃんが目を丸くして私の方を見る。

「うん」

「やだね、前も霊感あるっていう友達が遊びに来てさ、この家は霊がうじゃうじゃいるって言ったんさ。特にあそこの、襖から縁側に続く道は霊の通り道なんだと」

おばあちゃんが私から私の母に視線を向けて言った。母は嫌

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口紅にまつわる小噺

口紅にまつわる小噺

私は電車に揺られていた。 平日の午後であった。日本中で労働の緊張が張り詰めたこの時間、電車の中は外の世界など素知らぬ顔の平穏な海中のようにのどかな空間だった。座席はまばらに埋まっているだけで、人々は手元のスマホを見つめたり、電車の心地よいリズムにまかせてうたた寝をしたりしていた。
私の目の前には若い女の人が座っていた。ショートヘアで薄手のカーディガンを羽織った地味な見た目であるのに、その背筋だけは

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嘘と真実の狭間で

嘘と真実の狭間で

テルは斗真の嘘を見破る能力を持っていた。能力というよりは、斗真という人間のみに発揮される鋭い観察眼というべきかもしれない。
例えば、常に乾いていて薄いのに人より赤い唇から吐き出される呼気からアルコールの香りが一切しないのに、声のトーンが普段よりほんのすこし明るく上ずっているように感じられる時。
テル以外の、他の人から見ればなんの変わりもないように見える些細な変化だった。
でも、テルにとって音は色彩

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