Pirolone
単発・未シリーズ化の小説。
彷徨った先で良いなと思った風景を集めています。
――10月8日(木) 煙草の煙を通して、凪いだ海が見える。気持ちのいい晴れだ。遠くにはぽつりぽつりと雲が見える。空気は少し冷たい気もするが、陽射しは温かい。朽ちつ…
呻きとともに目が醒めた時、遠くでくぐもった罵り合う男女の声が聴こえた。目と口をテープか何かで塞がれているようだ。何も見えない。頬に当たる冷たさを感じるところをみ…
2019年10月28日 12:07
――10月8日(木)煙草の煙を通して、凪いだ海が見える。気持ちのいい晴れだ。遠くにはぽつりぽつりと雲が見える。空気は少し冷たい気もするが、陽射しは温かい。朽ちつつあるコンクリートの桟橋にいるのは俺と、釣り糸を垂らす爺さんだけだ。「釣れますか?」「釣れないね」「そうですか」そして、また煙草を一口。「あのバイク、あんたのかい?」「そうですよ」「ツーリングか何かの途中?」「いや
2019年12月12日 18:08
2019年10月17日 17:54
呻きとともに目が醒めた時、遠くでくぐもった罵り合う男女の声が聴こえた。目と口をテープか何かで塞がれているようだ。何も見えない。頬に当たる冷たさを感じるところをみると、床に転がされているようだ。腕と脚に食い込むロープで身動きもろくに取れない。後頭部が熱く、痛い。一体、何がどうなっているのだ?金曜日、なんとか仕事を終えて家に帰ろうとしていたところまでは覚えているのだが。男女はどうやら二人組のようだ