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エブリ・ブリリアント・シング・お父さんの音楽リスト(追記あり)

こんにちは!興味を持ってくださりありがとうございます。こちらはエブリ・ブリリアント・シング(以下EBT)の考察③「お父さんの音楽リスト」です。

考察が必要だった理由や没入感の仕掛けの考察や感想などを(公式情報以外のネタバレなしで)前置きとしてまとめていますので、よろしければそちらも併せてご覧ください。


ここから下はがっつりネタバレしますので、ネタバレが苦手な方やまだ観ていない方はご注意くださいね。




以下のリンクはイングランドのTheatre By The Lakeが公開しているEBTの脚本です。このスクリプトを中心に、日本版EBTと参照して考察しています。
Every Brilliant Thing by Duncan MacMillan - Theatre by the Lake


当日配布されたパンフレット



お父さんに関する音楽のリスト


「僕」が2006のリストにレコードを加えて以下のように語っていました。

Dad’s room had records on every surface and I loved the gatefold sleeves, the artwork, I love reading through the acknowledgements and the sleeve notes, the story of the making of the object.

お父さんの部屋のいたるところにレコードが飾ってあって、僕はそのゲートフィールドのライナーノーツ(スリーブ)やアートワークが大好きだった。そこに書かれている謝辞や制作過程のストーリーを読むのが好きなんだ。

ゲートフィールドというのは、レコードの紙のケースの中でも見開きになっているものを指すそうです。くわしくは下のリンクで。レコードのケースのデザインにもいろいろあるんですね。

「僕」がいうように、お父さんはレコードが趣味でたくさん持っていたという設定なのでしょう。その中でも劇中でお父さんが選んだ楽曲を整理してみます。当日劇場で配布されたパンフレットをもとに、Theatre By The Lake版(以下Lake版)の脚本と照合してリストしました。
Every Brilliant Thing by Duncan MacMillan - Theatre by the Lake

お父さんの音楽リスト

以下登場順、曲名、アーティスト名、リリースされた年です。
実際に劇中に流れた曲…★
劇中に演奏された曲…◆

★Gloomy Sunday / Billie Holiday (1941)
★Jumpin Jive / Cab Calloway (1939)
★Impressions / John Coltrane(1963)
★Free Jazz / Ornette Coleman(1961)

★My Melancholy Baby / Ella Fitzgerald(1960)

◆That's Life / Frank Sinatra(1966)
◆My Way / Frank Sinatra(1969)
・Wake Me Up Before You Go Go / Wham!(1984)

このうち上からの4曲は、「僕」が書斎に入っていいかどうかを判断する音楽の例として紹介されているものです。次のエラ・フィッツジェラルドの曲は、1997年に大学から帰省したクリスマスを経て、1998年に大学に戻る車中のラジオで流れていた音楽です。◆と・の3曲は、佐藤隆太さんが一部弾き語りを披露した曲になります。

ちなみに1997年にお母さんが病院から帰宅した日のエピソードで、お父さんが2階に行ってレコードを聴いていたと語られますが、具体的な曲名は明かされず、劇中でも流されていません。また、お母さんが亡くなったあとに、「僕」とお父さんが二人で過ごす数か月間にも、レコードを聴いていたと語られますがこちらもナレーションのみでした。


ではそれぞれ詳しく見てみましょう。


書斎に入れるかどうかを知らせる音楽

入出が許可される音楽と許可されない音楽がそれぞれ2種類あります。

【入出が許可される音楽➀】 
女性のヴォーカルが入っている曲

ここで流れたのは Billie HolidayのGloomy Sunday でした。

もとは1933年にハンガリーで作られた戦争による絶望と祈りの歌ですが、死んだ恋人を想う歌に変更されてから1941年にBillie Holidayがカバーして
英語圏の国で一気に有名になったそうです。

聴いた人が次々に自殺すると噂され、放送禁止になったことでも有名です。その後、映画化もされています。


【入出が許可される音楽②】 
歌って踊れるような曲

②は脚本上ではSome upbeat vocal jazzと指定されていて、たとえばCab Callowayと書かれています。劇中に流れたのはJumpin Jiveです。

この曲のときには「ただし僕は抱きしめられて椅子の上でぐるぐる回される危険がある」と語っています。お父さんが子どもとはしゃぎたいときの曲なんですね!
Youtubeの動画は1943 年のミュージカル映画『ストーミー ウェザー』で使われたときの映像でしょうか。とても楽しくなる映像です。



【仕事中なので入室を遠慮するときの曲】 
ヴォーカルなしの音楽

脚本ではSome melodic instrumental jazz で John Coltrane か Bill Evansと指定されています。劇中に使われたのはJohn ColtraneのImpressions  

John Coltraneは1946年からプロ活動をはじめていますが、1955年にMiles Davisのバンドに抜擢されるまではほぼ無名でした。1957年のBlue Trainのリリース以降Jazzの巨匠と呼ばれるようになり、60年代に40歳の時に病気で亡くなっています。2016年には彼のドキュメンタリー映画も作られています。


(追記)
劇場で確認したんですが、日本語版EBTで実際に流れてる曲はImpression じゃなくなっています。同じくJohn Coltrane ですが、しっとりしたバラードが流れます。

It's Easy to Remember 





【ひとりになりたいお父さんに配慮する曲】
階段からすべての楽器が落ちてくるような音楽

ここではOrnette ColemanのFree Jazz を爆音でという指定があります。
(音量に注意してください)

Ornette Colemanは1930年生まれのサックス奏者で、1958年に初めてのアルバムSomething Else!!!! (subtitled The Music of Ornette Coleman) をリリースしています。Free Jazz はWikipediaによれば「それまでのJazzの演奏形態を否定、革新した当時の新しいJazzのジャンルであり、1960年代に隆盛した」となっていてこの曲を代表とするジャンルの1つだということがわかります。Swing Jazzからbebopへと進化してきたJazzの、即興性を重視するスタイルなんだそうですが、詳しくは以下を参照してください。



お父さんが歌った曲

つぎは劇中で佐藤隆太さんが弾き語りをした音楽のうちお父さんの歌った曲を振り返ります。

最初の曲は、Frank SinatraThat's life

とても腑に落ちる翻訳を見つけたので上記にリンクしておきました。Frank Sinatraがスターになってから発表された曲ですが、順風満帆なだけではなかった彼の人生を歌ったものとされています。

2曲目はMy Way。イギリスでは葬儀に使われることが多いそうです。

日本の歌詞と比べると、後悔もあったが自分にできることを精一杯してきた、だから満足して死んで行くよ…というニュアンスで歌われています。イタリアVer.では、自分ばかり大事にして大切な人を失った後悔を歌うネガティブさも含んでいたりします。

少年時代からクルーナースタイルで歌っていたSinatraは、20代からジャズバンドの専属歌手になるなどの下積みを経て有名になり、アイドル的な存在から有名になりました。イタリア系であることから人種差別に対しては批判的で、冷戦時代には共産主義者と疑われる経験もしています。全盛期にはラットパックによる新しいエンターテイメントを提供し、俳優としても活躍し、政治にまで影響するなど、その存在の大きさが別格のエンターテイナーでした。
音楽界では‘The Voice’と評され、曲を「スタンダード化」する天才として作曲家たちに愛されていました。

「作曲家たちはシナトラを愛している。というのも、彼らが曲を仕上げた時に考えていた以上のものを、シナトラが引き出すからだ」と、評論家のウィルフレッド・シードは書いている(『ザ・コロンビア・イヤーズ1943-1952』ライナー・ノーツ)。




3曲目はWham!のWake Me Up Before You Go Go ですが、お父さんがその歌詞を歌ったメロディはFly Me To The Moonのものでした。
まず本当のWake Me Up Before You Go Goを聴いてみましょう。

Wham!は80年代に世界的に人気を博したイギリスのミュージシャンです。
この曲と同じく1984年にリリースされたLast Christmasはいまでもクリスマスソングとして有名です。

彼らのドキュメンタリー映画がネットフリックスにありましたのでリンクしておきます。https://www.netflix.com/jp/title/81137188


一方、お父さんがそのメロディを歌ってしまったFly Me To The Moonは、1954年にその原曲が作られ、Peggy Leeが歌ったことで有名になりました。現在よく聴かれるアレンジになったものは1964年にSinatraが歌って有名になったものです。

Sinatraが歌ってヒットした背景には、当時のアメリカのアポロ計画と重なり「私を月に連れてって」というアメリカ全体を包むムードがあったといわれています。

この曲に合わせてWake Me Up Before You Go Goを歌えるのもすごいけど、メロディを覚えてない曲の歌詞だけは覚えてるっていう能力もすごいよねw




ここまでがお父さんがレコードを掛けたり、歌ってくれた音楽です。
Cab Callowayの曲は、「僕」がサムを両親に紹介した日、お父さんが彼のレコードをかけてラザニアを作りながら待っていてくれたと語られますが、劇中では流れません。

このほか1997年に「僕」を大学に送っていくときに、車のラジオから流れてきた曲がありますので、そちらも紹介します。

Ella FitzgeraldのMy Melancholy Baby 劇中で流れたバージョンです。

この曲は歴史が古く、もとは1912年にWilliam Frawleyが歌った作品です。その後にレコーディングされたものと思われるWalter Van Brun 2015年のバージョンがYoutubeにあったのでこちらも貼っておきます。

全然雰囲気が違いますね。

雰囲気が全然違うといえば、同じくElla Fitzgeraldの歌うものの中に、寝る前に聴きたくなるような優しくてあたたかいpiano jazzバージョンがあったので、それも貼っておきます。



劇中で使用された曲はそう多くはありませんが、こうして眺めてみるとおそらく、お父さんが生きてきた時代が(お父さんのお父さんが聴いていたものも含めて)反映されているんだろうなとおもわされる音楽でした。Jazzだけで考えても歴史が100年以上あるので、多くのミュージシャンが演奏し、多くのファンに聴かれてはマンネリ化し、常に新しいものが求められていきました。
そのため、年代ごとにさまざまな挑戦があり、さいごにはFree Jazz のような前衛的なものが生まれました。

年代を追ってみるまでは、お父さんのレコードはどれも古く保守的な印象を受けましたが、こうして考えてみると、お父さんはけして保守的なだけの人ではないようにもおもえます。お父さんにしては新しい14年前にヒットしたジャンルの曲を、メロディは知らないけど独自のアレンジ(?)で歌っちゃうところは、冒険心やおちゃめさが感じられます。かわいいw



歌詞

最後に、脚本上で指定があった楽曲の歌詞を意訳ですが載せておきます。演出で指定された裏にはその意図があったと考えられるので、その考察とともに。

******************
My Melancholy Baby

Come to me, my melancholy baby 
Cuddle up and don't be blue
All your fears are foolish fancy, maybe
そばにおいで、ふさぎ込み落ち込んでいる君
ぎゅうっと抱きしめ合っていよう ブルーにならないで
きみが心配していることはみんな、考えすぎかもしれないよ

You know, dear, that I'm in love with you
Every cloud must have a silver lining
Wait until the sun shines through
わかっているだろうけど、君に恋しているんだ
暗い雲が広がっていても希望の光はきっと差してくる
太陽の光が差し込んでくるまで(一緒に)待っていよう

Cuddle up, my dear While, I kiss away each tear
Or else, I shall be melancholy too
抱き合っていよう 涙が乾くまでキスをするよ
でないと私まで悲しくなってしまうから

Every cloud must have a silver lining
Wait until the sun shines through
Please, cuddle up, my dear
While, I kiss away each tear
Or else, I shall be melancholy too
どんな雲からでも希望の光がさしてくるよ
一緒に抱きしめ合って待っていようよ
私たちの涙が枯れるまで キスをしていよう
でないと私もつらくなってしまうから


******************

お母さんの状態がなかなか回復せず、重苦しい雰囲気のまま新年を迎えてしまったお父さんと「僕」に、ラジオからElla Fitzgeraldが励ますように歌ってくれる曲です。そしてドライブのあいだ何も語らない二人の心が、抱きしめ合って希望の光がみえてくるまで待っているようにも感じられます。実際、佐藤隆太さんはうつむく演技よりも、遠くを眺めるような演技をされていたように記憶しています。

歌詞を理解する前は、会話がない車中のシーンをナレーションで語られる文脈だけで、寒々しく重苦しく感じていました。でも、どんなにつらい状況でも、寄り添いあたためあって嵐が去るのを一緒に待つ相手がいるということは、救いであり幸せなことなんだと歌詞を見て気づかされました。ひとりで乗り越えなければならなかったら、もっともっとつらかったでしょう。

「僕」とお父さんが哀しみだけで繋がっていたのではないと感じられてよかった。悲しみの最中には気付きにくいことですが、ひとりじゃないことが想像できたら少しは救いになるかも。これを知っているのと知っていないのでは、世界の見え方が違うとおもいました。




Wham!の曲については、いくつか見た中で読み物としてもおもしろかった記事をリンクに貼っておきます。引用は、こちらの記事を書いた方の歌詞の訳からEBTに共通するテーマと感じたlyricです。

You take the grey skies out of my way
You make the sun shine brighter than Doris Day
きみは僕の行く手の灰色の曇り空を取りさって
ドリス・デイよりも太陽を明るく輝かせてくれる

Wake Me Up Before You Go-Go / ウキウキ・ウェイク・ミー ...

恋の歌なので、お父さんが二人に向けてどんな時も離れないで一緒にいるんだよ、と歌っているように感じました。




最後はBillie HolidayのGloomy Sundayです。
こちらの曲の歴史を知ったときは驚きました。自殺を図るような状態にある家族がいる家でこれをかけちゃう?と、お父さんの神経を疑ってしまった。設定では女性ボーカルのJazzという枠になっているので、この曲限定ではないことはわかります。だけど演出家はあえてこの選曲をしたんですよね。

このお芝居は、観客が参加して生まれる「心理的変化の体験」の提供以外にも、自殺をしないでというメッセージも込められているはずです。なのに何故とおもいました。だから、考察を始めていちばん最初にしたことがこの曲の意味を理解することでした。いろんな方が訳しているのを読んでみたけどどうしても腑に落ちなかった。そこで時代背景や宗教観なども併せて考えてみました。

イギリスは1600年代半ばまで、家族から自殺者が出ると一家まるごと罰せられていました。宗教的に自殺は人殺しとみなされ、キリスト式の葬儀や埋葬が許されない。土地も財産も没収されてしまうという厳しい処置がとられていました。
近世イギリスの自殺論争

1600年代というとめちゃくちゃ昔みたいに感じるけど、日本だと松尾芭蕉が奥の細道に出発したり、浮世草子など庶民の娯楽が次々に生まれたり、関孝和が「発微算法」を著して日本独自の和算を発展させた時代です。現在も北野天満宮など各地の神社に算額が飾られています。下の写真は2018年にニュージーランドの方が北野天満宮に奉納した算額です。
写真は元記事からお借りしたもの。

北野天満宮の絵馬堂 | 雑学のソムリエ - FC2

上記のように、ずいぶん昔のことでも現代人にはまだまだ影響を残しているんですよね。Billie Holidayがこの曲を歌ったのが1941年でしたから、かつての宗教観による価値観が刺激されて、自殺に対する議論が高まったためにイギリスBBCでも放送禁止になったんだと考えられます。

お父さんが「僕」に書斎に入っていいかどうかを判断させるためにこのレコードをかけていたのは1980年代です。お父さんがその影響を考えなかったとはおもえないんですよね。

では、Gloomy Sundayの歌詞をみてみましょう。意訳です。

******************
Sunday is gloomy. My hours are slumberless
dearest the shadows I live with are numberless
日曜日は憂鬱。
眠れず、まどろむことさえできない。
あなたの面影が尽きることなく思い出されて

Little white flowers will never awaken you,
not where the black coach of sorrow has taken you
小さく白い花束が、あなたを目覚めさせることはない。哀しみをまとう葬送車はあなたをどこへ連れ去ったのか

Angels have no thought of ever returning you
would they be angry  if I thought of joining you?
Gloomy Sunday
天使たちは(私に)あなたを返すことを考えてもくれない。私がそちらに行くことを選んだら、彼らは怒るのかしね
憂鬱な日曜日


Gloomy Sunday
with shadows I spend it all my heart
and I have decided to end it all
憂鬱な日曜日 心が擦り切れてしまったから、もうすべてを終わりにすると決めたの

Soon there'll be prayers and candles are lit,
I know let them not weep let them know, that I'm glad to go
私が喜んで逝くのだと知ったら、彼らだって嘆かずに、すぐにキャンドルを灯し祈りをささげるでしょう 

Death is no dream. For in death I'm caressing you
with the last breath of my soul, I'll be blessing you
Gloomy Sunday
バカげた妄想じゃないわ。
死の間際にあなたを(私の愛で)抱きしめて、そして魂が尽きるとき、その吐息であなたを祝福するのよ
憂鬱な日曜日

Dreaming, I was only dreaming 
I wake and I find you asleep on deep in my heart,  dear
夢を見たの。
目覚めたら、私の心の奥底にあなたが眠っているのを見つける夢を

Darling, I hope that my dream hasn't haunted you
my heart is telling you, how much I wanted you
Gloomy Sunday
私の心があまりにあなた求めたせいで、私の夢があなたを呪ってしまったのでなければいいけど
憂鬱な日曜


*******************

「休日は死んだ恋人の事ばかり考えてしまってつらい。死を考えるほどの私の愛の深さには宗教的なタブーにも赦しがおりるはず。だけどもし、私があまりにも彼を思いすぎることで、彼を囚われの身に(天国にも行けず安らかに眠ることもできない状態に)していたらどうしよう」という感じだとおもいます。

これって、聴く人によっていろんな意味にとれると気がしました。
まず共感や共鳴ですよね。実際に誰かを失った経験がない人は家族などを含めれば、ほぼいませんから。
あとは宗教的な罪悪感です。日本の仏教観と違い自殺はとても罪深い行為なので、神様やのこしていく家族に抱く罪悪感は大きいと考えられます。これによって思いとどまろうとする可能性もあるわけです。

それから、残された人のもつ苦しみの種類について知ることもできるんじゃないかとおもいました。
愛する人を失うと面影が絶えず浮かんできて、悲しみが押し寄せること。考えないようにしても油断すると思い出され、生きること自体が辛くなるまで追い詰められる日々が続くこと。宗教的な罪悪感にも悩むこと。そして、周囲の人が励ます時に「そんなにいつまでも悲しんでいると彼(彼女)が安らかな眠りにつけないよ」と声をかけてくること。これによって自分のせいで愛する人が苦しんでいるかもしれないと不安におびえること。

このように考えてみるとこの曲には、曲調に飲まれて憂鬱を誘う効果だけでなく、遺族の悲しみに寄り添う効果もあるのかもしれないとおもいました。

悲しいときにちゃんと悲しむことは大事だとおもいます。My Melancholy Babyのように「そんなに悲しまないで」と寄り添ってくれる存在は必要です。でもそれは、悲しんでいる君をみていると私まで辛くなってしまうから、という主語をずらした声掛けだから支えになるのであって、「あなたが悲しんでいると死者が浮かばれないから」という理由は、たぶん遺族を苦しめるんですよね。案外昔から聞いたことのある台詞のような気がしますが。そういう場面では絶対いわないようにしたいな、とおもいました。


結局、お父さんがなぜこの曲を選んだのかはわかりませんでしたが、少なくとも、自分が死を迎えるときには、大切な人にこんな悲しみを残さずに終わりを迎えたいなと感じました。

この曲の歌詞をそんなふうに受け取ったことで、お父さんがお母さんに向けて「だからいかないでくれ」と願っているようにもおもえ、何も語らないお父さんの心に触れたような気がしました。

本当のことはたぶん、語ってくれても簡単にわかるものではないのでしょうけど。



以上、お父さんの音楽についての考察でした。


役に立つのかわからない。でもすっきり。
読んでいただきありがとうございました。

ではまた。







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