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【映画雑記】世界でいちばん悲しいオーディションをみた

WACKというアイドル事務所への加入をかけたオーディション合宿をまとめたドキュメンタリー映画です。
最近だと、水曜日のダウンタウンとコラボレーションしてアイドルグループが生まれたりもしましたね。

レビューなどにNiziUとの比較をしている人たちがいて笑った。
そりゃあNIziUはデスソース食べてひっくり返らないからね…
WACKを知っているとこれがそんなにキテレツなことに思えないんだよなあー異質の存在すぎる。

アイドルは消費される存在

劇中では、食事に「デスソース」(タバスコのとびきり辛い版的なものと認識しております)が無作為に混ぜられていて、候補生の子たちと合宿に参加した所属アイドルは完食をしなければいけません。
また、無作為に入っているデスソースですが、食べることによりポイントがつく、つまり候補者の中でもより合格に近い存在になれるため
女の子たちは、悲鳴を上げながら、泣きながらデスソースのある食事を自ら選択します。

デスソースを食べすぎて倒れる子、具合が悪くなる子、トイレに駆け込む子、泣きながら食べる子。
彼女たちの努力は「アイドルになりたい気持ちをどこまで根性で可視化できるか」というオーディション基準のもと、苦しみが搾取され浄化される姿が延々と映し出されます。

アイドルはいつだって、泣いても笑っても怒っても辛くても、その姿が搾取される。それは、WACKじゃなくてもどのアイドルも一緒で、WACKのオーディションではそれを見えやすくしているだけ。
心を体を視聴者に搾取されていく女の子たちの目の色が変わっていくのが印象的です。

「変わりたい」女の子と「ありのままでいたい」女の子

※ネタバレになります

最終的にオーディションに受かった子達は、しきりにカメラの前で「変わる」という表現を使います。
しかし、最終選考日まで残りながらも最後の最後で脱落してしまった一人の女の子。
「わたしはありのままでいたかったのが違ったのかな…」と呟きます。
これはアイドルの本質をついた話なのかなとすごく思いました。

アイドルになる女の子って、少なくとも現状の私に満足をしていないからアイドルという世界に飛び込んでいく子が多いんじゃないかな。
だって実際、現状に満足できていたらアイドルにならなくてもいいんだろうし。

ファンはアイドルに対して「化ける」ことを期待しているのかもしれません。
特にこの形式のオーディションでは、自分自身を貫きながらも人に見られることで環境に適応して自分をより変化させる、というかアップデートしていくことができる子がアイドルにふさわしいと考えているからこの形式なんだろう…

ありのままでいい、は素敵なことだけどお客様からお金を頂くビジネスとしてはそのままでいいことなんてなくて、ありのままの自分をどう昇華させ人に愛される存在になるか?を自ら考え実行できる子がいわゆる「素質がある」なのかなと感じました。

個人的には、最終選考日まで残った子は優しすぎるからハングリー精神という面でこれからアイドルをしていくとさらに辛い思いをすることが見えてたからあえて落としたのではないかなと。
あとは、リンリンとサキちゃんの優しさに惚れました。

臆病さはみっともなさを産んでしまう


劇中、オーディションに落ちた子たちが一斉に「渡辺さん(プロデューサーさん)合わないです」「宗教みたい」と不満を漏らしてしまう場面があります。

その中の一人の子が発した「興味を持ってもらえないと興味を失うんですよ」みたいなニュアンスの発言。
その子たちのうわぁ〜…な感じを見ながら、この気持ちってすごくわかるんだよなあ…とも思いました。

自分のこと好きじゃない人、好きじゃない。
実の人間関係ならそれでいいんですけど、それってあくまで自己防衛の世界だと思ってて。

裏を返せば「あなたにこれ以上傷付けられたくないのでわたしはあなたには興味持ちませんから!」ってわけで、それって相手が「そんなことないよ」って言ってくれるのをどこかで期待してるわけで。

きっと深く傷ついて、臆病で、これ以上自分の心を傷つけたくないからこその発言だったんでしょうけど
やっぱりオーディションに来て落選した子の発した発言、とみるとどうしてもみっともなさが残ってしまうんですよね。ケンカじゃないし、あなたとこちらはウィンウィンの関係ではないわけだから。

その後の、落選した子をフォローするキャン・マイカさん素敵でした…

まとめ

このオーディションでは、ずっと輝けるための強さを求められていて
弱さに甘えて悲劇のヒロインになってしまった子、臆病になってしまった子、自分の殻を破れなかった子が落選してしまった印象でした。

だからこそ、アイドル界で異質なWACKのメンバーたちはあれだけ輝いているのだろうなと
「エモさ」という形容しがたい魅力を武器にできるのだろうなと感じた作品でした。

一言:限界突破できる人ってやっぱりカッコいいよ!

個人的評価:☆3.8


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