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子どもの目を輝かせる!経験型教育のススメ

ルソー『エミール』から学ぶ、新しい子育ての形


前回、ルソー「エミール」3編を読んでブログを書きました。

今回は、そこで描かれた、「子供(小学生)が実感できる経験型教育を実践するにはどうしたら良いのか」を考えてみたいと思います。

最初に日本における現代教育の問題点について考えていきます。
3つあると思います。1つは、一斉授業であること。2つ目は、同学年だけのクラス編成なこと。3つ目は主体性を持てない学校体制です。

一斉授業であること。1クラス40人くらいまでの子供たちが同じ教室で同じ授業を聞きます。そのため、塾で先取りして勉強している子供にとってはとてもつまらない授業になります。また、ついていけない子供にとってもまた焦りと我慢の時間となります。

また、同学年だけの授業であることも問題点となります。社会に出れば年上や年下の人と一緒に仕事をします。分からないことは上司から教えてもらい、部下には指導する。こんな当たり前の光景が学校にはないのです。

そして、学校体制については時間割や授業内容や進み具合などが決められています。何もかも決められた中で主体的に勉強していくのは難しくなります。

とはいっても、最新の平成27年度版学習指導要領においては、アクティブラーニングや個別最適な学びを重視するとしています。従来の講義形式の授業から探究的な学びへとシフトしているちょうど転換期に当たります。授業内容については、主体的な学習ができるように変わってきています。

では、どんな教育が理想の教育なのでしょうか。ルソー「エミール」では、説明するのではなく、体験から学びを得られるようにとありました。

例えば「初めてのおつかい」のように、子供だけで何かをやり遂げるようにさせる。けれどもおつかいを子供が自分からやりたくなるように大人が仕込みをする。さらに、お使いもこっそり大人が見守りながら行う。

机の上で、買い物の方法を講義で習うより実体験した方が、学びは大きいという話でした。これが、現在のアクティブラーニングにもつながっています。
とはいえ、学校で取り入れるのはかなり難しいです。学校ではiPadを利用したり、実際に社会科見学などを取り入れるなど探究的な学びが取り入れられてきています。しかし、大人数を見守りながら体験させるには、どうしても教員など大人が不足していると考えます。

だからこそ、まずは家庭から実践していくのがおすすめです。
仕事で忙しいご両親のもとでも出来ることがあります。

例えばお味噌汁を冷蔵庫の材料だけで作ってみてもらう。大人は、あらかじめお味噌汁になりそうな材料を冷蔵庫に用意しておく。調理中は、一緒に作りながらアドバイスもできます。子供はきっと自分で考えて作ったことに自信をもつでしょう。材料を考えたり容量を測ったり算数や理科にもつながります。

ポイントは、子供からやりたがる仕込みをしておく。教え過ぎないけど、しっかり安全には配慮して見守ることです。

経験的学びの実践:大人の役割とは

子供に経験的な教育を与えるには、まず大人世代がその教育をしっかり理解する必要があります。先生が言うことを素直に聞いてノートに書き、覚える。これまでの時代は先生から習う知識は正しくて覚えておけば問題がありませんでした。しかし、これからは科学技術も飛躍的に進みますし、災害もどんなことが起こるか分かりません。自分の頭で考え行動できる教育をしていく必要がでてきました。

2023年時点で親世代の方は、旧学習指導要領に沿って教育を受けています。今の学習指導要領は、アクティブラーニングが取り入れられ、少しずつ変革されてきています。

また、子供がおとなしくなるからと、タブレットやスマホで動画を見せたりしていませんか?確かに、子供は機器を使いこなしどんどん調べて知識を広げます。知識を広げることは良いことなのですが、スマホがなくても家に帰れるでしょうか?公衆電話の使い方は?など、ちょっと不自由なところから得られる学びもあります。子供のためと何でも与えてしまいすぎることは学びにつながらないのです。

さらに、経験的な学びは、大人の見守りが必須となります。安全な場所にいるときはもちろん、屋外などでは細心の注意が必要となります。そのため、無理をせず計画的に行う必要があります。

経験的教育の実践例

実際にこれは経験的教育だと思った動画がありましたので、ご紹介します。

【山川宗玄老師のお話】
山川宗玄老師は、禅の厳しい修行をしてきた方です。(該当部分は23分あたりから)

修行僧の時代に、とても偉い老師から「『つかれず』を持ってくるように」と言われます。どんなものかもわからず、かと言って老師に聞き返すことは出来なかったそうです。
困っていると先輩が「この粉じゃないのか」とヒントをくれます。

そして、その粉を水で溶いて持って行ったところ、老師は一口飲んで吐き出しました。さらに顔を真っ赤にして怒り出す勢いになってしまいました。そのため、再度作り直し持っていっては怒られてを繰り返しました。

そして最終的には、味を見てかなり酸っぱいので、はちみつを混ぜてみました。良さそうな配合を考え、持っていきました。するとやっと機嫌よく飲んでくれたというのです。
先輩は、なぜすぐ教えてくれなかったのか?老師もなぜ教えないのか?

教えてしまった方が、絶対に簡単です。でも、修行僧が「どうしてだろう?」と考え工夫する機会を与えたのだと思いました。

【家出プロジェクト?】
先日、東京大学先端科学技術センターによる講演会があり参加しました。まさに経験的な学びを動画で紹介していました。

印象的だったのが、「家出プロジェクト」です。
不登校児童などが参加します。

「ある駅(子供に地理感のない場所)に集合し、時間内に500円でお昼ご飯を食べて帰ってくる」というミッションを行います。友達と協力してもいいし、1人で行っても良いのです。その代わりスマホは禁止です。

道路にある大きな地図を見たり、人に聞いたりしながら、色々な試練を乗り越えてプロジェクトを達成していきます。動画に映る子ども目は楽しそうに輝いていました。

そして、子供のそばには見守る大人が必ずいます。時には見失ってしまうこともあるそうですが、GPSで発見できるようになっているそうです。

この「家出プロジェクト」は3レベルあり、体験した不登校児童は学校に行き始めたりと効果を発揮しているそうです。

【三國清三の実践から】
もう一つ、体験的な学びだと思ったのは、三國清三シェフです。彼は、「ル・オテル・ド・ミクニ」のオーナーであった有名なシェフです。その生き様は、著書や動画で紹介されています。

何のコネもない三國シェフは札幌グランドホテルに潜り込み、皿洗いのアルバイトから始めます。片っ端から指で舐めて味を覚えていきます。調理師学校で体系的な授業を受けたわけでもないのに、主体的に意欲的に学んでいったのです。

以上3つの実例は、講義形式では得られない体験的な学びです。

すべて経験でいいのか?

とはいえ、すべての勉強を経験的なアクティブラーニングに置き換えるのはまだ難しい面も多いです。特に、国語の基礎である日本語は、難しい言語です。小学校で学ぶ漢字だけでも1000字以上になります。やはり漢字ドリルや計算ドリルを利用して行うことは効率の良い勉強法と言えます。

さらに、世界で絶賛される日本人の礼儀正しさ。例えば、満員電車でもきれいな列に並ぶ。ゴミは持ち帰る。財布を落としても警察に届くなど海外では信じられないような行儀の良さがあります。それは、小学校からの教育の成果ともいえると思います。

従来の教育の良いところは残しながら、バランスよく教育していく必要があると考えます。

結局大切なのは、
子供の目が輝いていて、幸せな子供らしい時間を過ごせているか。
それがルソーの根本的な考えです。子育てに生かすヒントになれば幸いです。

【参考文献】
・ルソー『エミール(上)』岩波文庫 1986年

・苫野一徳『「学校」をつくり直す 』河出新書 2019年

・作成者「日本語のどこがむずかしいのか-外国人から見る日本語」『サイト名』( 2023年9月26日確認)https://yonezawakoji.com/why-japanese-difficult-for-foreigner/

・株式会社Branding Engineer 「小学校で習う漢字1026字」『ちょこまな』 https://b-engineer.co.jp/chokomana/e-s-student/e-s-education/1100662/ ( 2023年9月26日確認)

https://www.benricho.org/kanji/kyoikukanji/narau-gakunen.html
( 2023年9月26日確認)→中学1110文字、中学3年生終了時点で、2,136字の常用漢字のほとんどを学習することになります。

・素材いつもお世話になってます。↓
www.irasutoya.com

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