見出し画像

月刊『ピン留めの惑星R』04|2019年8月号


いつのまにか失くしてしまった “たいせつなもの” たちが辿り着く
どこかの星のだれかの物語 ───。


✑ 『どこへ』 大島智衣

 

「“1日1万歩”歩いたとして、
1日に5千回ずつ片足を地面に擦(こす)ってるんだよ?」

若いサラリーマンが息巻いていた。

すり減った靴底は、
どこへいくのだろうか。

わたしたちの生きた時代の地層には、
ちり積もった無数の“靴底粒子”が見つかる。

 

* 

 

いつのまにかはげ落ちてしまうリップは、
どこへ?

「口紅は、食べてるのと同じ」

家庭科の先生は、
女子中学生の私たちへ得意気にそう教えてくれた。

新しいリップを買うということは、
古いリップを一本食べたということ。

食べたのは、持ち主だけとはかぎらない。

 

 

あの人を好きだった気持ち。

もう好きじゃないあの人を、
心底好きだった気持ちそのものは、どこへ。

 

 

✑ 『ずっとここにいて』 つきはなこ

 

✑ あとがき

すこしずつ夏が立ち去ろうとしています。
わたしたちを溶かし続けたあの熱は……どこへ?(笑)

あなたが、あなたらしくいられるひとときを、
どうか、どこへもやらずに握りしめていてください。

それは、誰にも奪えるはずが、ないはずです。

大島智衣


引越しの荷造りをしていると、なくしたはずの日記帳が出てきた。将来のことなんてまるで見てなかったあの頃の日記はひたすら明るい文体で、やけに痛々しかった。
もし、この日記を3年前に見つけていたら、容赦なく捨てていただろう。
今見つけられて良かった。痛々しい自分を新しいダンボールに詰め込んだ。

つきはなこ

 

。。・゚・。。 定期購読特典・。。・゚・

✑ おまけ 〜つきはなこ&大島智衣のここだけ談話〜

ここだけでしか読めない二人の談話を盛りだくさんにお届けします☆彡

大島智衣(以下大島) 今回は前回からひと月以上経ってますね……お互いの近況からお話ししてみましょうか??

続きをみるには

残り 2,827字
月に一度、少しだけ夢をみよう

いつのまにか失くしてしまった“たいせつなもの”たちが辿り着く、どこかの星のだれかの物語─。《大島智衣の読みもの》と《つきはなこのイラスト》…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?