見出し画像

YouTube★Dream1話 漫画原作部門応募作品【漫画動画でヒットを狙え!中学生YouTuberの挑戦!】

あらすじ

中学生3人がYouTuberとなり、漫画を動画にしてヒットを狙うストーリー。

主人公ギョギョっち(ギョっちゃん)
小学生の頃から漫画を描き続け、漫画家を目指している。

小学生の頃の同級生 草野は主人公の描く漫画が好きであった。
動画編集の経験がある草野は、中学生になると漫画を動画にしようと誘う。

友人の美月も子供の頃に交流があり、美声である為、動画の声優を頼まれる。

主人公は自我が強く、3人の関係は不安定。インターネットの利用には責任も伴う為、草野の兄(大学生)も参加する。

YouTubeで本当に必要とされるものは何か?好きな事を仕事にする為の苦悩を描く作品

補足★主人公を障害がある子として描くつもりはありませんが、1つの事にのめり込める分、他の事に興味を示さない偏った性格であり、女の子にも興味はありません。

漫画家になれるという絶対的な自信が強いので、漫画を描く以外、勉強はしない、人に心も開かないので、学校では協調性の無い変わり者です。

少年誌の漫画では、ほぼ無い事と思いますが、主人公を恋人のように支えるのは同じ夢を持っていた母親になります。

夢を諦めた母親は一番の理解者であるのに、理想の高い世間知らずの息子と対立します。

でも、友人と仲間割れして動画制作が中断されると、主人公は漫画を出版社に持ち込む事で現実を知ります。自分の作品は、どこへ行っても相手にされず実力不足。

高校3年生になり、進路に迷う主人公。
自分の性格では、会社勤めはできない。でも、僕は漫画を描く事しかできない。

夢が絶たれて、初めて自分と向き合う息子を支える母親。そして、唯一作品を好いてくれる友達に心を開きます。

とはいえ、動画は簡単には人気は出ません。
万人受けするものでなく、人の役に立てるものを作る事を提案されます。

主人公は描きたいものよりも、必要とされるものを描く事を受け入れます。
自分の実力を受け止めて、もう一度仲間と動画制作に挑戦し、小さな希望をつかむまでの物語。

第1話



※( )は心の声

手に持つスマホの画面、SNSに載せたイラストが映る

主人公(いいね!は付いていない)

イスにだらしなく座り、ため息をつく
「はあぁ~」

机に置かれたタブレットには、頭に魚が付いた男の子の絵が描かれ【魚戦士フィッシュマン】と書かれていた

シーンが変わる

学校で教室の貼り紙を眺める生徒達が騒ぐ
「私2組!やった!カナと一緒!」
「やだー、うちらクラス別々!」

男子生徒「草野、何組?」
草野「一組。皆と離れた」
男子「そっか、仕方ねぇな。俺、教室行くわ」
草野「おう」

草野(マジかよ~。一組で仲良い奴いなくね?)
教室に入る草野(誰か知り合いいないかな。とりあえず話せそうな奴)

主人公が席に座り、ノートに何か書いている

草野(あ!ギョギョっち!同じクラスか!)

主人公に近付く
草野「ギョギョっち、俺も一組!」

ギョギョっち(主人公)は、ノートを手で隠して言う「ふーん」

草野(愛想わりぃな・・)

「なー、クラス変えって新しい人と付き合う為に仲良い友達と離すって、おかしくない?3年間、仲良い友達と楽しんでもいいじゃんね?」

ギョギョっち「さあね。僕、友達いないから」
草野「・・・。」(相変わらずだな)

ギョギョっちは、手でノートを隠しながら絵を書いている。ノートを見る草野

草野「あっ!これって、フィッシュマン?
マジ?ギョギョっち、今も漫画書いてんの?」

顔を上げるギョギョっち「覚えてるの?」
草野「覚えてるよ!マジ?見して、見して!」

ノートを取り上げる草野。嫌そうなギョギョっち

草野「へえー、絵上手くなってんじゃん!
うわ、懐かしー!」

突然、女の子が後ろから顔を出して言う
「ギョギョっち、私も1組!しかも隣の席!」

嫌そうなギョギョっち「マジで?」

草野(うわ!美月ちゃんと同じクラス!ラッキー!)

ノートを見せる草野「ねえ、美月ちゃん!フィッシュマン覚えてる?」

驚く美月「うん!覚えてる!それ、フィッシュマンの漫画?もしかしてギョギョっち、今も描いてるの?」

嫌そうなギョギョっち「いいじゃん、返してよ。」ノートを取り返そうとする

ノートを見ながら草野「いいじゃん、見してよ!俺、フグ戦隊が好きでさ~」

美月もノートを見る「凄いじゃん!絵上手っ!」

チャイムが鳴る

ノートを返す草野「ギョギョっち、また後で見せてよ!」
美月「私も見せて!」

ギョギョっち「・・・。」

シーンが変わる。席に座る生徒達

教師「高校の説明会の日程表を配るぞ」

後部席から美月を眺める草野
(美月ちゃんは昔から可愛いし、性格も良いんだよな。彼氏いるのかな~)

シーンが変わる

キーンコーン カーンコーン

草野はギョギョっちの前の席に座る。
ギョギョっちは絵を描く

絵を見る草野「フィッシュマンはゴンで、フグちゃんはイカルゴに似てるよな。ギョギョっち、ハンターハンター今も好きっしょ?」

ギョギョっち「一番好き。絵は似せてるんじゃなくて、描いてたらこうなったんだよ」

草野「フィッシュマンは念能力でいうと具現化系かな」

ギョギョっち「え?強化系だよ。僕、自分は強化系だと思ってるから」

草野「えー?ギョギョっちが強化系?ゴンと一緒?ギョギョっちはポジション的に、ポックルかコルトピじゃね?」

ギョギョっち「どっちも死んでんじゃん」

美月「あははは」

草野「美月ちゃん、ハンターハンター読んでる?」

美月「読んでないけど少し覚えてる。ギョギョっちの家で読んだの」

草野「お母さん、漫画嫌いだったっけ?今も変わらないんだ」

ギョギョっち「あの、うるさいオバサンね。ラスボスって感じの」

草野「おい、やめろよ」

美月「あははは。うん、そう。うちのラスボスは漫画禁止」

草野「ギョギョっちは、いいよな。親が漫画好きだから、部屋中漫画だらけだったじゃん!今もそう?」

ギョギョっち「うん」

草野「マジ?家行っていい?美月ちゃんも行こうよ!」

ギョギョっち「えっ、やだよ!」

草野「いいじゃん!昔はよく3人で遊んだじゃん」

ギョギョっち「やだよ」

スマホを見せる草野「いいじゃん!ギョギョっちならギョエモンgoやってんだろ?アイテムやるからさっ!漫画貸してよ」

ギョギョっち「えー・・」


シーンが変わる。下校する3人

スマホをギョギョっちに見せながら歩く草野
「なー、行っていいっしょ?ギョエモンgoのアイテム、どれがいい?」

スマホを見るギョギョっち
「えー・・うーん。この中ならブーイーとギョギョ丸とターシャ」

草野「いいよ。ギョニーズJrもやるよ」

喜ぶギョギョっち「マジで?」

美月は2人を横目で見ながら黙って歩く
美月(ゲームの話かな?)

ギョギョっちの家に着く

草野「おじゃまします!」
ギョギョっちの母「あら、久しぶりね。美月ちゃんまで。お母さんは元気?」

美月「お久しぶりです。母は元気です」

ギョギョっち「ラスボスだからね」

苦笑いの美月「あはは!おじゃまします!」

廊下を歩く母「お茶を持っていくわ」

ギョギョっち「いらないって!」


漫画が棚に並ぶギョギョっちの部屋で、くつろぐ3人

草野「全然変わってないな~。いいよなー、ギョギョっちの家は漫画もゲームも自由だもんな」

美月「ねぇ、ギョギョっち。フィッシュマンって、あれから話はどうなったの?
悪の心を持った人間と魚の敵に仲間が捕まった後。」

ギョギョっち「今描いてるのは昔と展開が変わったから・・説明すんのが面倒だよ」

本棚を見る草野「この辺のノートがフィッシュマン?」

ギョギョっち「勝手に触らないでよ!今はタブレットに書いてるからノートにはないよ」

草野「へえー、見してよ。なぁ、アイテムやったからいいだろ」

嫌そうなギョギョっち「・・少しなら、いいよ」

タブレットのイラストを見る3人

草野「デジタルイラストのがキレイだな。順番に見ていい?」

ギョギョっち「聞く前に見てんじゃん!」

草野「いいじゃん!結構上手いじゃん!
このスーパーサイヤ人みたいのいいな」

美月「うん、キレイ!全部1人で描いてるんでしょ?凄い!」

照れるギョギョっち「アプリのシステム使ってるだけだよ。スタンプ使って、色変えて光沢出しただけ」

草野「ギョリップスタジオのアプリだろ?俺も使った事ある」

ギョギョっち「草野君、絵を描くの?」

草野「たいした絵じゃないけど、動画作った事があってさ」

スマホを出して操作する草野「これ、見てよ!」

スマホを覗き込む3人。
ギョギョっち「何これ?」

スマホの画面に【誕生日おめでとう!爺ちゃん】と映る

草野「俺と兄貴で爺ちゃんの誕生日祝いの動画を作ったんだ」

スマホの映像が流れる

ドアが映り、草野の声が響く
「爺ちゃん、出て来て!爺ちゃん、登場でーす!」

ドアが開いて爺ちゃんが出てくる

♪チャーラ、ヘッチャラーという音楽が流れる

すると爺ちゃんの上からビームが出る。
ドュピュン!という効果音

爺ちゃんが金色の光で包まれ、金髪の悟空の髪が付くとスーパーサイヤ人の様な姿になる

シュンシュンシュン!という効果音が響く

草野の声「ハッピーバースデー!スーパーサイヤ爺ちゃん!」

ドーンという効果音が響いて、【誕生日おめでとう】の文字とクラッカーのスタンプが出る

ギョギョっち「あははは!何だよ、コレ!」

美月「凄い!これ、草野君が作ったの?」

草野「うん。アニメ程の動画は作れないけど、写真加工したり、少しだけイラストが動く映像なら作れる」

ギョギョっち「Gifでしょ」

草野「そう。これが結構面白いんだよ。
コレ、フィッシュマンにも出来るんじゃね?」

ギョギョっち「え?」

タブレットを持つ草野「このイラスト貸してよ。スーパーサイヤ人になるか試してみる!」


シーンが変わる

学校の教室。美月とギョギョっちが並んで座る

鞄を抱える草野「ギョギョっち、美月ちゃん!動画出来た!屋上の階段で見ようぜ!」

屋上の階段で並ぶ3人はスマホを見る

草野「爺ちゃんと同じやり方だけど、もうちょい良くできてるよ」

スマホに絵が映る。フィッシュマンが黒いシルエットに変わる

背景から光が出る。ピカッという効果音が響く。
海を守る魚戦士、という文字がスライドして出る。

「海を汚す者は許さない!」という文字と同時にドーンという効果音が響き、ビーム光線が上から掛かる。

ズビューン!【効果音】

フィッシュマンの周りが光り、フィッシュマンが顔を出す。

パアアアン!【効果音】

地球を守るフィッシュマン!の文字と共に、シャキーン!【効果音】

背景が明るくなり、地球をバックにしたフィッシュマンが映る

ギョギョっち「へえ、凄いじゃん。」

美月「うん!ヒーローの登場シーンって感じ!凄い!」

草野「これだけでも結構大変だったんだよ。でも、今じゃこれ位の動画なら素人でも作れる。ねぇ、フィッシュマンを動画で作ってみない?」

ギョギョっち「動画で?」

草野「YouTubeで漫画を載せている人、沢山いるじゃん!でも俺としては漫画っていうより、動かないアニメって考えてるんだけど」

ギョギョっち「それ漫画じゃん」

草野「動画編集をする事で、漫画とは違う迫力を出すんだよ。スタンプとか効果音を付けて、今見せた映像みたいにさ」

ギョギョっち「声は、どうすんの?」

草野「そう!俺も動画作ってて声優欲しいよなって思った!そこで思ったんだけど、美月ちゃん、声入れてくれない?」

驚く美月「え?私?」

草野「美月ちゃん、昔アニメキャラの物真似してたじゃん。チョッパーとかプーアルの真似、上手かったじゃん!ちょっと、やってみてよ!」

赤面する美月「えぇ・・。あの時は小学生だったから出来たけど、今は恥ずかしいよ」

草野「いいじゃん、絶対、絶対笑わないから!」

美月「うーん・・。えーっと・・たしか、ヤムチャ様、ドラゴンボールが見つかりました!うわ、恥ずかしい!」

草野「ほら、やっぱし!うめぇ!」

草野「絶対美月ちゃんならできるって!
小学生の頃、音読を先生に誉められたし、聞き取り易い声なんだよ」

美月「え~、声優なんて出来ないよ!」

草野「プロのレベルじゃなくて良いんだよ!YouTubeなんだから!
フィッシュマンの声は俺かギョギョっちでもいいんだけど、アニメの少年役って、ほとんど女性の声優が担当してんだよね」

美月「そうだね、悟空もルフィも女性だね」

草野「てことは、美月ちゃんでも出来ると思う!」

美月「えぇ、私?」

ギョギョっち「僕はいいって言ってないよ」

ギョギョっちは階段を降りる

草野「何でだよ?いいじゃん!」

美月「草野君、もうチャイム鳴るよ」

不満そうな草野「何だよ、ギョギョっち・・」


シーンが変わる。美月の部屋

美月(声優かぁ。なりたいと思った事ないなぁ。うちアニメ禁止だし)

スマホ画面のフィッシュマンを見る

美月(面白いな。こんな事できるんだ。あの2人は全然変わらない。昔から二次元の世界で盛り上がってた)

子供の頃、3人でフィッシュマンの決めポーズをしていたのを思い出す

ポーズを取る美月「俺達はギョニュー特戦隊!あはは」

(・・私の声って、どう聞こえるんだろ)

クローゼットに入って、スマホを創作する美月(お母さんに聞かれたら恥ずかしいな。録音機能ってコレだよね)

「・・・ヤムチャ様、ドラゴンボールが見つかりました!」

(プーアルは一番自信あったんだよね。次はチョッパーをやってみよ!)

「そんなの褒められても嬉しくねェよ!!」

(こんなもんかな。あとは男の子の声、できるかな。声を低くして・・)

「えっと、俺達はギョニュー特戦隊!・・地球を守る、フィッシュマン!」

(よし、聞いてみよ!)

押し入れから出て声を聞く美月

録音の声「ヤムチャ様、ドラゴンボールが見つかりました!」

赤面する美月(うっわー!超下手くそ!こんなので上手いと思ってたの?死にたい!)

録音の声「そんなの褒められても嬉しくねェよ!!」

(ギョエー!そりゃ、プロの声優レベルな訳ないよね!超恥ずかしい!)

録音の声「えっと、俺達はギョニュー特戦隊!・・地球を守るフィッシュマン!」

(あっ!これのがマシかも・・)


シーンが変わる

部屋で漫画を読む草野。
スマホが鳴り画面を見る

草野(うわ!美月ちゃんじゃん!)
「もしもし!」

美月「あの、草野君。動画に声を入れる事なんだけど」

草野「うん、考えてくれた?」

美月「私、やっぱりダメだと思う。声を録音してビックリしたの。あまりに下手で」

草野「え~!そんな事ないって!プロのレベルじゃなくてもいいんだよ!」

美月「うん・・。録音した中ではね、声を低くして男の子として喋るのが一番マシかなと思ったの。でも、やっぱり自信ない」

草野「へぇ~。聞かせてよ!」

美月「うん。データ送る。でも、うちら以外の人には聞かせないでね」

草野「もちろん!ありがと、美月ちゃん!」

草野のスマホ画面が鳴る。ピロン!

草野「これか!」

スマホの画面を押して添付されたデータを開く

録音した声「海を守る魚戦士!地球を守るフィッシュマン!」

スマホを見つめる草野「・・・。」


シーンが変わる

ギョギョっちの家のチャイムが鳴る。
ピンポーン

部屋のドアの前に立つ母「ギョっちゃん!草野君よ!」

部屋にいるギョギョっち「いないって言って」

ドアを開ける母「もう上げちゃったわよ」

草野が顔を出す

母を睨むギョギョっち「警戒心なさすぎ!何か企んでたらどーすんの?」

母「ハイハイ、すみませんね!」
そそくさとドアを閉める

草野「何だよ、ラインにも出ないしさ!」

スマホの画面を出す草野「コレ見ろよ」

ギョギョっち「学校で見たじゃん」

草野「今度は声が入ってるんだってばよ!」

ギョギョっち「ウザいナルト」

怒る草野「いいから見ろよ!ほら!」

スマホ画面をギョギョっちに突き付ける

学校で見たフィッシュマンの映像を流すと美月の声が入っている

「海を守る魚戦士!」
「海を汚すものは許さない!」「地球を守る!フィッシュマン!」

草野「な?いいだろ!美月ちゃんの声、カッコ良くね?」

ギョギョっち「下手だよ」

怒る草野「初めてなんだから仕方ないだろ!それでも棒読みじゃない!気持ちは感じるし、何より元々の声がいいんだよ!」

ギョギョっち「そう?」

草野「俺も声を録音した事あるし、兄貴も動画作ってるから分かるんだよ!聞き取り易い声と、そうでない声があるんだよ!」

ギョギョっち「へぇ~。草野君の兄ちゃん、動画作ってんだ。何系?」

草野「教育系YouTuber」

ギョギョっち「あ~、そんな感じ!マジメだもんね!」

草野「兄貴も声入れてるけど、良い声は動画作りの武器になるって言ってたよ。
兄貴は滑舌が良いとは言えないし、機械を通すと更に声がこもるんだよ。
でも美月ちゃんには、それが無い!声自体は声優に向いているんだよ。ただ技術が足り無いだけ」

ギョっち「そーかな。」

草野「それでも そこまで下手じゃないって!自信が無いだけだよ!続ければ絶対変わる!そしたら動画は、めっちゃ良くなる!」

ギョギョっち「・・・。」

草野「なぁ、作ろうぜ!ギョギョっちならバクマン読んでるだろ?
サイコーとシュージンが役割分担して漫画作って、アニメになったらアズキが声優担当すんの!俺達、バクマンみたいじゃん?」

ギョギョっち「草野君は賢くないし、僕は絵が上手くないし、美月ちゃんは可愛くないよ」

草野(美月ちゃんは可愛いだろーが!)
「俺は動画編集で、絶対ギョギョっちのイラストを良く見せるって!
俺、今シュージンの気持ちが分かる!これ、絶対イケルって!」

ギョギョっち「何がシュージンだよ。やだよ」

怒る草野「何でだよ!何が嫌なんだよ?」

怒り返すギョギョっち
「草野君は美月ちゃんと関わりたいだけじゃん!昔からそうだよ、僕を利用して美月ちゃんを誘うんだよ。そーいうの嫌なんだよ!」

草野(うぅ、否定できねぇ!)

赤面する草野「・・確かに、美月ちゃんは良い子だと思うけど、それだけじゃないって!フィッシュマンを面白いと思う気持ちは本当だって!それは美月ちゃんも同じだよ!
俺は本気でフィッシュマンの動画を作りたいんだよ!」

ギョギョっち「僕は漫画でも良いと思ってる」

草野「じゃあさー、はっきり言わしてもらうけど、ギョギョっちの漫画は漫画になってないぜ。コマ割りが全然できてない!
漫画は決められたページ数にコマ割りして、キリのよいところで終わらすだろ。
上手く区切って見開きで【ドン!】【ドン!】【ドーン!】だろ!それが、全然できてねぇ!」

ギョギョっち「僕はワンピースを描きたい訳じゃないよ」

草野「漫画の基本だろ!それができないなら、漫画は無理。
でも動画ならコマ割りもページ数の制限も無い!そして、うるさい出版社が間に入らない!好きに描きたいならネットで公開して、人気が出たら書籍化!今はそーいう時代だろ!」

ギョギョっち「僕もそれ考えたよ。だからSNSで公開したけど、全く人気ないよ。
それならYouTubeでも同じだよ」

草野「マジか?SNSやってんのか!」

ギョギョっち「うん。僕の絵じゃ【いいね!】が付かないよ」

草野「SNSとYouTubeは違うだろ。フィッシュマンは絶対動画のがいいって!」

ギョギョっち「SNSで人気無いんじゃ無理だよ」

草野「ネット上の数字なんて、どれ程の人が本気で良いと思ってんのかは分からないって、兄貴が言ってたよ。

兄貴はマジメに勉強を教える動画を作ってるから、全然数字は伸びないよ。でも勉強したい人がいるなら作る価値があるって言ってるし、俺も兄貴の考えを良いと思う。

フィッシュマンは動物の命や、海の環境問題をテーマにした話だから、伝える事に意味があると思う。
数字が延びるかはわかんないけど、人気が出たらラッキー位でもいいじゃん」

ギョギョっち「僕は作るなら本気で良いものを作らないと人気は出ないって思う。
トップYouTuberが言ってたよ。

今のYouTubeは激戦区だって言うけど関係無い。いつの時代でも本気で良いものを作れるクリエーターなら成功する】って」

草野「漫画と一緒って事だろ。バクマンに書いてあったじゃん!面白いもんなら必ず売れるみたいな!

でもそれでも、俺には漫画雑誌のがハードルが高いと思うぜ。プロの集まりだからな。
でもYouTubeは素人でもチャンスが持てる!誰でも可能性が試せる!カッコ良く編集するからさ、皆で作ろうぜ!」

少し黙るギョギョっち「・・・。」
「作るなら約束して欲しい事があるんだけど」

草野「収益の分け方だろ。これ大事だよな」

ギョギョっち「恋愛禁止」

草野「はあ?何言ってんだよ?
お前は娘を持つ頑固親父か!」

ギョギョっち「サイコーとアズキは夢が叶うまで関係を進展させない話だったじゃん。
目標の為に一つの事だけに専念するっていう話。僕、そういうのは好きだよ」

草野「俺と美月ちゃんは付き合うなって事かよ」

ギョギョっち「そうだよ。文句ある?」

嫌そうな草野「えぇ~」

顔色が変え声を上げるギョギョっち
フィッシュマンは僕がずっと考えてきた話なんだ!僕の作品は、金儲けや女の子の気を引く道具じゃない!
僕にとっては、自分の作品が評価される事に勝るものなんかないんだ!浮ついた気持ちで人の作品に手を出すなよ
!」

驚く草野「・・・分かったよ。作るからには、ちゃんと作るよ。約束する。俺だって、本気で良いものを作らないと人気は出ないって思うよ」

ギョギョっち「絶対だからね!」

母がドアの向こう側で聞き耳を立てている。横に美月がいる

母「なんか揉めてるわね。」
小声で話す美月「私、やっぱり帰ります!」

シーンが変わる

外を走る美月「はあ、はあ。」

止まって、薄暗くなった空の星を見つめる。

ギョギョっちの言葉を思い返す

僕にとっては、自分の作品が評価される事に勝るものなんかないんだ!浮ついた気持ちで人の作品に手を出すなよ!」

美月(ギョギョっち、本気で漫画家になりたいんだ)

子供の頃のギョギョっちを思い出す

美月(ギョギョっちは、いつでもフィッシュマンの話を嬉しそうにしてた。
でも、いつからか何も言わなくなった)

3人が目を輝かせていた子供の頃

「僕、フィッシュマンで漫画家になる!」

(気持ちは変わってなかったんだ。今でもフィッシュマンが大好きなんだ)

美月の前に浜辺が広がる
(私に、フィッシュマンできるかな・・。)

シーンが変わる

草野は部屋で寝転んで天井を見ている

草野(ギョギョっち、変わり者と思ってたけど漫画に対しては本気だったんだな。確かに単純一途強化系かもな)

兄から声が掛かる「なぁ、ギョっちゃんと動画作る話、どーなった?」

草野「あぁ、一応作る事になった」

兄「良かったじゃん」
草野「うん」

スマホが鳴る。ピコン!

画面を見る草野(!!美月ちゃん!)

美月のメッセージ
【私、下手だけど頑張ってみる!発生練習するから、フィッシュマンの台詞教えて!】

めっちゃ喜ぶ草野(マジかー!)

草野「兄ちゃん!俺やっぱ、頑張る!青春かけて動画作るわ!」

兄「ははは。美月ちゃんいるしな。若いっていいな」

草野のスマホが鳴る。ピコン!

ギョギョっちのメッセージ【美月ちゃんから連絡きたよ。ちゃんと守ってよ、恋愛禁止】

草野はうなだれる。(アイツは女の子に興味ないもんなー。恋愛禁止ってマジかよ!美月ちゃーん!)

シーンが変わる


クローゼットの中にいる美月「アメンボ赤いな、あいうえお!生麦、生米、生卵!」

キャミソールに短パン姿でターバンを頭に巻く美月(ふぅ、暑い!こもってると汗かく!でも、もう少し練習しよ!)

美月「やめろ!フグちゃんに手を出すな!フグフグ~」

美月の母の声が聞こえる
「美月~。部屋のゴミあるー?」

美月は慌ててクローゼットから出る

美月「持ってく!」

母「入るわよ」

ドアを開ける母「何で、そんな恰好をしてるの?」

美月「あ、ストレッチしてたら暑くなって!気分転換!」

母「ふーん」

美月のスマホを見る母「スマホ見せて」

美月(出た!抜き打ちスマホチェック!)

スマホを渡す美月「ラインのメッセージは見ないでよ!」

母「わかってるわよ」

美月のスマホを見る母「何?YouTubeなんて見てるの?」

美月「うん、勉強を教える動画。変な動画じゃないよ」

母「学習教材を使いなさい。インターネットは いい加減な情報が多いから」

美月「塾講師の人の動画だから大丈夫だよ」

スマホを返す母「やめなさい。買った教材があるでしょ。YouTuberなんて、社会から外れた人の集まりなのよ」

美月「・・うん」

ゴミを取る母「何度も言うけど、SNSは禁止だからね!」

美月「わかってる!私は知らない人の誘いについて行かないよ!」

ドアを開けて部屋を出る母「早くお風呂入りなさいよ」
バタン!

ため息をつく美月「はぁ~」
(ギョギョっちに、ラスボスって言われる訳だ)

(私はアニメや漫画はラスボスが許可するものしか知らない。子供の頃から ずっとそう。ギョギョっちの家とは大違い。

特にラスボスはYouTuberが大嫌い。
社会に適応できない人の集まりと言っている。皆がそういう訳じゃないのに。)

美月は子供の頃を思い出す

(あの頃、私は人気のアニメや漫画を知らず、クラスで話が合わなくなった。)

クラスの女の子「美月ちゃんち、テレビないの?」「えー?アニメ見れないの?」

(だから、ギョギョっちの家は新鮮だったし、女の子より気を遣わずに楽しめた。
ギョギョっちと草野君とばかり遊ぶ様になった。)

子供の美月は、テトラポットに登って2人を追いかける。
「ギョギョっち!待って!」

私が汚れて帰ると、お母さんは心配した。
母「あの男の子達と遊んだの?やめなさい!危ないから」

私は やめなかった。

あの日、草野君がケガをした。
海に落ちて腕から血を流した。

電話する美月「お母さん、大変!早く来て!」

病院で包帯を巻く草野「針で縫ったんだぜ!俺すごくね?」

ギョギョっち「すごいのは医者だよ」

美月の母を見る草野「あ、有難うございました」

美月の母「もう海には行かないで。危ないから。」

草野「はい」

ギョギョっち「え~?やだよ!あそこは秘密基地なんだよ。草野君が落ちるからいけないんだよ」

顔が青くなる草野(うわっ!ラスボスに何言ってんだよ!)

怒るラスボス「命を落としていたかもしれないのよ!ケガをしたのが、うちの娘だったら謝っても許せる事じゃないわ!
アナタ達と関わるとロクな事がないのよ。美月とは二度と遊ばないで!」

過去の回想終了

美月(あれから2人とは遊べなくなった。ギョギョっちは今でもラスボスが嫌い。
うちのお母さんも、ギョギョっちを良く思っていない)

ラスボスの言葉が蘇る
「アナタ達と関わるとロクな事がないのよ!」

YouTubeで動画を作るなんて、うちのラスボスが許すはずがない!絶対に隠し通さなきゃ!

https://note.com/piinelotl/n/n24f0c495b695


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?