見出し画像

50代転職日記 #5

#4で挑んだフィッシュボーン図の会社の面接が終わると、エージェントから電話がかかってきた。
「面接どうでしたか?選考が進んで内定が出たら受諾されますか?」と明るい声で見込み客の皮算用が始まった。「そうですね。あまり自信がないんですけど」ととりあえずの返事をしたあと、結果的には一次面接にて敗退となった。
その後しばらくして「次の会社さんの一次面接の日程が組めました。Teamsをセットアップしておいてください」とエージェントの担当者から連絡があった。
Web面接のおかげで胸から上だけスーツ着用が出来るのでだいぶ楽になる。画面越しとはいえ緊張するので、相手画面は面接官の表情がかろうじて読み取れるギリギリのところまで小さくし、背景に自己アピールを箇条書きにしたカンニングテキストをカメラ目線に見えるように配置して準備を整える。
友人に「4社応募して2社しか書類が通らなかったよ」と言ったところ、上出来なほうだという。50社応募して1社書類通過の人も珍しくないんだとか。職務経歴書のアドバイスが的確だった最初のエージェントのコンサルタントには感謝している。今お願いしているコンサルタントなんか、職務経歴書をチラっとみて「イイッスね」と軽く流していた。余所のエージェントの書式なのに気にならないんだな。「こことかいいと思うんスよね~」と勧められた会社はどこも若い人を求めているベンチャー企業で、明らかに中年が求められていないところばかり。大丈夫かな、このコンサルタント。自分が役に立てるかどうかは何となく察しがつくもの。自分の感覚を信じて4社応募したのだった。
今から受ける最後の持ち駒の会社は葬儀屋だ。M&Aで店舗を拡大していて経理の手が足りていないとのことだった。会社が自宅から自転車で10分という超近距離なのも良い。
ガラケー並に小さくした相手画面に映ったのは豊原功補似のイケメン課長だった。画面小さくしなきゃよかった。今更変えられないのでそのまま臨むことにした。功補さんは親会社から出向してきているらしく、会社が今抱えている課題などを端的に説明してくれた。多店舗展開の管理や業務の平準化はかなり得意なことを熱烈にアピールし、私と同じ飲食業から転職してきた人事担当者も画面外から参加して面接は大いに盛り上がった。
面接が終わるとエージェントからどうだったか聞かれて  「ちょっと自分ばかりが話しすぎたかもしれません。自信ないです」と答えた。
面接から1週間ほどでエージェント経由で次の選考に進む案内があり、筆記試験の案内メールが届いた。
絶対受かりたい・・早く決めたい・・。
気合い十分で筆記に臨んで何と最終面接に進むことになった。
面接の候補日から希望日をエージェントに連絡して待っていた。すると別のコンサルタントから電話が入り、担当者が3日ほど休むので代わりの方で企業へ連絡頂くことになった。
この時点でなんとなく嫌な予感がしていた。
休み明けのコンサルタントから電話連絡があり、「いまPieさんの最終選考の日程を連絡したところ、すでに他の方に内定を出されたそうです」と軽いノリで告げられた。選考結果連絡に若干時間が空いていたので、恐らく内定を出した本命の応募者が居たのだろう。何日もかかってやっと受諾の返事がもらえた所で2番手以下が切られたのか。よくあることなのかもしれないが、テーブルに乗る前に突然終了は後味が悪い。
「あっ、わかりました~」と3倍の明るさ軽さで返事をしてさっと電話を切ろうとしたら「待ってください!●×不動産、エントリーしてみませんか?」とこの期に及んで食い下がってきた。●×不動産は地元ではかなりの人気企業で、私などお呼びでないのに、求職者のエントリー件数もコンサルタントの営業成績にカウントされるのだろうか。「わかりました。エントリーします」と伝えた翌日に葬儀屋と不動産屋の不採用のシステム通知が同時に届いた。バカにされたようでなんか腹が立つ。
あーあ、これで持ち駒がなくなった。振り出しに戻ってしまった。
現場の店長が上からPieにもっと負荷をかけろと言われているらしく、来週から日数を増やしてレベルを上げる研修します♪という。店長は私が脱出を試みているとは微塵も思っていない。現場側の味方が増えて嬉しそうだ。
急がなきゃ。このままここに埋もれる前に何とかしたい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?