新卒の私は、病んで逃げるように会社を辞めた 【アメリカ放浪の思い出 #01】
今から10年とちょっと前の2008年、私は24才だった。
新卒で入社したIT企業を辞めて、無謀なアメリカの旅へ飛び立ったちょうとその時だ。
これからしばらく書き続けるのは、逃げるように会社を飛び出した24才の男が病んだあげく、エネルギーを持て余して3ヶ月間アメリカを西から東に放浪し、警察に捕まったり死にかけたりする思い出話だ。
病みつくした新卒時代
東京の大学を卒業した私は、新卒としてちょっぴり有名なIT企業に入社した。
入社後すぐに一泊二日の研修旅行が行われたが、2日目の朝には数人が気を失い、うち一人は倒れた際にアゴを強打して救急車で搬送されるという中々アグレッシブな研修だった。
(数針縫う大ケガだったが、研修担当の先生は倒れた彼に「放っておけ!」と言い放っていた。やばいやつだ。)
研修旅行が終わると新入社員はすべて営業部署で研修をさせられたが、ここで私と一部の同期は営業部長から「君たちは、この会社には要らない子たちなんだよ」と宣告された。
まだ学生気分の取れていない私には衝撃的だった。
そこでの研修内容はとにかくいろんなところへ電話をかける、いわゆる「テレアポ」というものだった。
頑張って電話をかけ続けたが、全く契約が取れず肩身の狭い思いをしているうちに次第に昼ごはんも喉を通らなくなくなり、最後にはジョナサンの前菜すら一口も食べられず残すようになった。
あまりの病みっぷりに人事が気を使ってくれたのか(それともそもそも営業としては全く役に立たなかったからか)、配属先は営業部署ではないところになった。
ロジックに頭を支配される毎日
配属先は新しいサービスを作り出す、割とクリエイティブな部署だった。
そこでの上司はとても優しく優秀で、そしておそろしいほどロジカルだった。
営業をしていた時のような圧迫的なストレスはなかったが、何をするにしてもとにかく「論理的思考」と「分析」を求められ、3ヶ月もすると普段の生活でも頭の中でロジックを組み立ててからでなければ話すことさえできなくなっていた。
しかし私という人間は本来ものすごくテキトーな人間で、
(上司に「これエクセルに入力しておいて」と言われた仕事を3分の1くらい入力したところでなぜか完成したと思い込み「カンペキです!」と提出したくらいには適当な人間だ。
上司はそのあと私が提出したエクセルのせいで他の社員にめちゃくちゃ怒られていた。)
なので、いつも「感覚で行動することってそんなに悪いことなの?」という思いと、論理的思考を求められる生活の間で板挟みになっていた。
また、会社では上司と関係部署との調整をする仕事も行なっていたが、上司のロジカルな考えをちゃんと相手に伝えることができず、はっきりいって必要ない存在になっていた。
上司と私が担当しているサービスのwebサイトを作ってもらう依頼をした際も、相手にちょっと突っ込まれると「あぁ、たしかにそうですね・・・」と答え、
それを上司に伝えると「いやそうじゃなくてこういう目的があるからこう伝えて」と言われ、そういったやりとりを続けるうちにパニックになってしまい、結局上司と直接話してもらうということが日常になっていった。
今から思うと、大学を卒業して間もなく知識も能力も経験もなかったので仕方がなかった点もある気がするが、
関係部署からすると依頼をしてきた私が依頼内容をしっかり理解していないのだから、とても迷惑だったと思う。もうしわけない。
逃げるように退社。そして立派なニートへ
何をするにも論理的な思考と説明を求められる生活が1年ほど続いたところで、本来テキトーな性格の私はストレスと「ロジックなんて必要ねぇ!」という思いがどんどん膨らんでいった。
論理的な考えは仕事をする上で大事だと今でこそ思うが、大学をぬる〜く卒業しそのまま入社した世間知らずの若造は、簡単にいうとあんまり考えず思いつきで行動したかったわけである。
膨れ上がるストレスの中、私生活でもみるみる元気を失っていった私は、しながわ水族館でネズミザメを小一時間ほど死んだ目で眺めていた。
それを見かねた彼女が「もう仕事やめちゃえば!?」と言ったのを聞いて、
「あ、そっか仕事って辞めれるんだ。」
と、ある意味当然の事実にその時初めて気付き、そこで退社を決意した。
いざ辞めることを会社に告げると、偉い人たちから「なぜ会社を辞めるのか」、「会社を辞めて何をするのか」などとたくさん聞かれたが、
真剣な顔で「宇宙飛行士になりたいんです」と答えたらひどく怒られた。
今思えば完全になめきった若造だが、おそらく当時はいろいろなことに逐一納得のいく説明を求められることが不満だったんだと思う。
「辞めたいから辞めることの何が悪い」、「なんで辞めたあとのプランがないと辞めちゃいけないんだ」という、ロジカルに対する強い反発があったんだと。
そんなわけで、私は逃げるように会社を辞めた。
いかにも若者らしい考えなしな辞め方だったが、それでも、この時会社を辞めて正解だったと今でも思っている。
うまく言葉にできなくても、まわりの理解を得られなくても、「辞めたい」と感じる気持ちの中には自分の中での確かな真実があると思っている。
ともかく、こうしてあてもなく会社を辞めた私は、立派なニートとして生活することになった。
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ここまでツラツラと新卒で働いたときの状況について書きましたが、「病んだ」という記載や一部過激な内容からやばいブラック企業のように感じるかもしれませんが、至ってふつうの優良企業です。
(ちなみに研修の先生は外部の人間です)
病んだ理由としては、私が営業にも会社という組織に属することにも向いてなかったこと、そして優秀な上司のレベルについていけなかったことが原因です。
ちなみにその上司は在職中も辞めた後もとても親身にいろいろなことを教えてくださいました。本当に感謝しています。
にも関わらず私は痛いところがあるのでその後彼を拒絶してしまいました。今は本当に後悔しています。すいません。
サポートしてくれたら本気だす。