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082_タクシー運転手の話

先日、私の昔の職場の同僚だった人と久しぶりに会いました。今はタクシー運転手をしているのですが、もうかれこれ10年以上になるそうです。

年賀状のやり取りでの付き合いでしたが、その人は私よりも数年早く会社をリストラされていました。時間差はありますが、同じリストラ組で人生の負け組というような共感がありました。

それがどうして急に会おうという話になったのか、本人曰く「いわゆる心境の変化」という事ですがちょっと深刻な事情のようでした。

タクシー運転手というものに対して世間のイメージは様々だと思います。今日では大卒が第一志望で就く職業ではないので、一部の人にとっては落ちこぼれてなる職業という認識があるかもしれません。

その人は私と同じ職場にいる頃は割と有能な人でした。それよりも無能な私が残留して、その人がリストラされたわけです。理由は色々とあったのでしょう。その後の彼の人生は同じ職種で再就職を果たしますが短期間で辞め、さらに同じ職種で転々と職場を変えます。そして行き着いた先がタクシーの運転手という事です。

これがその人にとってラッキーだったのかアンラッキーだったのかはよく分かりません。ただ不本意ながらも最終的には就職でき、それが継続できたのは良かったのだと思います。

ご存じの方も多いと思いますが、タクシーの運転手は誰でも簡単になれるかというとそんな事はありません。適性検査が厳しく、それも先天的なものもあるので努力してもなれない人がいるのです。二種免許の試験も厳しく、何らかの形で職業運転手の経験がないと合格は困難です。何度受けても合格しないので断念する事例も多いのです。
晴れて二種免許を取得できても仕事を継続できるのはごく一部です。私は今までに他にもタクシー運転手になった者を数人見てきましたが、いずれも短期間で辞めています。理由は「キツいから」。

さて、その人と話をし、思い出話や雑談をするうちに、悩みの本題がわかりました。
年金の受給開始を70歳からにしている。もうすぐ70歳を迎えるが、その受給額が少ないのでタクシーを続けるかどうか悩んでいる。軽い糖尿病などの健康面の問題があり、事故のリスクが高い事を考えると自信がない。
という内容でした。私も深く考え込んでしまいました。

私も同様にリストラ、その後に職を転々というクチです。そういう人は得てして年金の受給額が少ないのです。大企業や優良企業、あるいは公務員を定年まで勤めあげた人でなければ悠々自適の老後はありません。私のように60を過ぎても年金を払い、それでも受給額が少ない人は結構な高齢まで働かなければなりません。

ただ、私のようにアルバイトですが何の危険な要素がないオフィスでの仕事と、事故や過労というリスクがあるドライバーでは事情が違います。
その人は幸いにもお子さんは独立していて、そうした家計の負担はないのですが、夫婦二人のビンボーな老後をイメージできず、結局はリスクを承知でタクシーの運転手を続けるしかないのか、という事です。

年下の私からは何のアドバイスもできませんが、逆を言えば老後のライフスタイルを決めてから改めて考えた方が良いのでは、と申し上げました。
それもまた簡単ではありませんが、少なくとも働くのが苦痛であれば事故のショックも大きくなります。そうした事などから自分を解放するように考えるべきだと思いました。

その私ですらも、老後のライフスタイルなどと明確なものを持っていません。人にアドバイスできることはありません。しかしどんな仕事でも誇りと自信をもって行うべきで、それが紆余曲折の結果であっても同様です。私個人としては、その人に人生の勝者として老後を迎えて欲しいと願っています。

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