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掌編

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#文章

猫型ロボット / 掌編

猫型ロボット / 掌編

「ねぇ、青い猫型ロボットぉ、退屈だよぉ、なんか面白いモノ出してよぉ」

「なんや、しゃあないなお前はいっつも。暇やったらちょっとは勉強したらどやねん。お前の友達のあの子、よう勉強出来る子おったやろ、あの勉強出来過ぎる子や。ちょっとは見習わんかい。風呂場の女の子覗いてばっかりしてんと。そうゆうのヘンタイゆうんや。あーあ、ほんまに。しゃーない、もう今日だけやからな。最後やぞ。(テレレレッテレー)日雇い

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詰所 / 掌編

詰所 / 掌編

西の空に充満した黒雲がどんどん迫ってきて、
じきにここも雷雨にやられると職人たちは口々に言い、
その声に休息への宿望が滲んでいた。
作業の手を止め、
資材をシートで覆い、
彼らは充てがわれたプレハブの詰所へと潜り込んだ。
忽ち雷霆が頭上で轟いた。
ぐっと身を屈める大男の隣で、
茶を手にしてぽかんと天井を見上げる小男の取り合わせ。
簡易な造りがびりびりと震えたかと思うと、
間をおかずにピカッと光って

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垣根 / 掌編

 粉を溶いたような薄水色に、やや暗がりを含んだ雲がいくらか浮かんでいる。大ぶりのうしろに小ぶりものがふたつ、親に付いて行く子かはぐれた子か、呑気そうに流れている。冷たさが混じりはじめた風が私を背中から吹き越して、道端にあるイヌマキと思しき生垣をガサガサと鳴らした。するとその垣根の奥から老人がふと現れた。黄色の強い皮膚をしていて、痩せていて、足元も覚束ず、肌寒くなろうこの季節というのに老人らしい鷹揚

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