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読書案内 | 人以外に注目する歴史本の紹介

(1) 人名をほとんど覚えなくても歴史を語ることはできる。

 歴史は昔からわりと好きだ。しかし、歴史上の偉人について知りたいならば、私は歴史書ではなく、伝記やその人物自身が書いた著作を読む。

 「歴史」と聞くと、高校の日本史や世界史の教科書を思い浮かべる人が多いだろう。「人物名を覚えなくてはならない」「年号を覚えなければならない」と思ってしまうと歴史がつまらなくなる。

 もちろん、最低限の偉人の業績や歴史上の出来事を覚えることは大切ではある。しかし、学校を卒業した大人は、教科書のように政治を中心とした歴史を学ばなければならない、ということはない。
 人物名を覚えることに辟易するならば、「人名がほとんど登場しない」歴史の本を読んでみたらどうだろう?
 
 この記事では、「人名を覚える必要のない」歴史本を三冊紹介しようと思う。


(2) 玉木俊明(著)「物流は世界史をどう変えたのか」(PHP新書)

 この本を読むには、特別な知識は必要ない。人物名もほとんど出て来ない。特定の人物名を出さなくても、歴史を語ることはできるんだな、ということを学んだ。
 タイトル通り、「物流」に焦点を絞った著者である。目次だけ紹介しておこう。

第1章 フェニキア人はなぜ地中海貿易で繁栄したのか
第2章 なぜ、東アジアはヨーロッパに先駆けて経済発展したのか
第3章 イスラーム王朝はいかにして国力を蓄積したのか
第4章 ヴァイキングはなぜハンザ同盟に敗れたか
第5章 なぜ中国は朝貢貿易により衰退したのか
第6章 地中海はなぜ衰退し、バルト海・北海沿岸諸国が台頭したのか
第7章 喜望峰ルートは、アジアと欧州の関係をどう変えたか
第8章 東インド会社は何をおこなったのか
第9章 オランダはなぜ世界で最初のヘゲモニー国家になれたのか
第10章 パクス・ブリタニカはなぜ実現したのか
第11章 国家なき民は世界史をどう変えたのか1⎯⎯ アルメニア人
第12章 国家なき民は世界史をどう変えたのか2⎯⎯ セファルディム
第13章 イギリスの「茶の文化」はいかにしてつくられたのか
第14章 なぜイギリスで世界最初の工業化(産業革命)が生じたのか
第15章 アメリカの「海上フロンティア」とは
第16章 19世紀、なぜ西欧とアジアの経済力に大差がついたのか
第17章 社会主義はなぜ衰退したのか


(2) 茂木誠「世界史で学べ!地政学」(祥伝社黄金文庫)

 軍事的な出来事があると、専門家たちはよく「地政学的には~云々。」ということが多い。地政学って何だ?、と思ったらこの本が入門として最適だと思う。
 私が読んだ地政学の本の中で、最も分かりやすかった本。予備校の先生が書いたものだから、分かりやすいのだろう。地図を交えた説明がよい。

 私が重要なポイントだな、と思ったのは、
①「ランドパワー」(大陸国家)の国なのか?、それとも「シーパワー」(海洋国家)なのか?ということ。
②「チョークポイント」(要するに海が狭いところ。スエズ運河、パナマ運河、ボスフォラス海峡、ホルムズ海峡、マラッカ海峡など)。

 地図あるいはできれば「地球儀」🌍️を手元に置いて読むと、歴史だけでなく、現在の紛争の原因もより深く理解できるだろう。

 内容的にかぶるところも多いが、曽村保信「地政学入門」(中公新書)も入門書としてオススメである。


(3) Yuval Noah Harari, Sapiens 
A Brief History of Humankind 

  日本でもベストセラーになった、ハラリの「サピエンス全史」。英語の勉強にもなるしと、英語で読んだ(邦訳よりも原書のほうが安かったし😄)。
 小説とは異なり、とても分かりやすい英語で、珍しくサクサク読めたのが気持ち良かった。
 サピエンス全史だから、もちろん「人」は登場するが、「固有名詞」は意外と少ない。
 固有名詞が多いと、発音が分かりにくく、「音読」しにくいのだが、「サピエンス全史」は読みやすい。英語資格試験の問題に飽きたら、読んでみるのもよいと思う。
 💡あっ、歴史の本の紹介でしたね😄。「サピエンス全史」の中で一番面白かったのは、「農業革命」(Agricultural Revolution)の話。なるほど、と思った。


結び

 歴史というと学生時代の教科書を想起してしまって敬遠してしまう人も多いと思う。
 しかし、今回紹介した本のように、「物流」という視点でも世界史を考え語ることができる。「チョコレートの歴史」「茶の世界史」のように、モノに注目してもよい。
 スポーツに興味があるなら、「サッカー⚽の歴史」「野球⚾の歴史」「相撲の歴史」を調べてみるのもよいだろう。
 私はあまり政治的なことに強い関心があるわけではなかったが、「文字の歴史」「言語の歴史」を調べていたら、政治史にも少し関心を持てるようになった。
 自分の興味のあるワンテーマから、歴史に入っていくことは楽しい。入り口は人それぞれ。

 「お笑いの歴史」でも「エロ本の歴史」でも「ヌードの歴史」でも、貴賤はないはずだ。政治史だけが歴史であるわけではない。

記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします