戯曲 | 仏頂面

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「なんで君はさぁ、いつも不機嫌そうな顔をしているの？ニコリともせず、そんな仏頂面してたら、まわりが嫌な雰囲気になるじゃないか！」

👩(心の中)
… …　そんなことを言われても、どうしようもないではないか？私はいつも真顔で座っているだけなのだから。

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「よし、俺が究極のギャグを言ってやるから、爆笑してくれよ」

👩(心の中)
　何か嫌な予感がしてきた。この人のオヤジギャグ、群を抜いてつまらないことこの上ないからだ。

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「君のお姉さんの職業は、たしか、2.9だったかな、いや、3.15だったかな？」

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「何をおっしゃりたいのでしょう？私の姉は保育士ですが… ….」

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「きみぃ～、君はホントにギャグのセンスがないなぁ。2.9とか、3.15っていうのは、『ほぼ３』だよね。だから、君のお姉さんの職業は『保母さん』😄」

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「申し訳ないです。かつての『看護婦』が現在では『看護師』と呼ばれるようになったのと同様に、『保母』という名称も『保育士』と呼ぶことが一般的になっております」

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「だから～、俺だってそんなことは知ってるよ。あれだろ、ジェンダーの問題がうるさくなってきて、性差のない言い回しに改めるとかいう… …俺のことを、そんな一般常識もない奴だと思ったわけ？もうちょっとさぁ、空気読んでよ。今の俺のギャグの場合は『保母さん』が正解なの👊」

👩
「ギャグにしていいことだったのでしょうか？私も小さいことを言いたくありませんが、あなたのギャグには無意識的な女性蔑視発言が多いのですよ。この前なんか、休憩室でお茶のTバッグをもってきて、君はこういうのを身につけてるのかい？なんて。私がキョトンとしていたら、『君は鈍いね。Tバックを履いているかどうか聞いただけなんだ』なんて」

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「そんなことまで引き合いにだすのかい？ただのギャグじゃないか？」

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「いえ、立派なセクハラですよ。私がTバックをはくのも、普通のものをはくのも、あなたには関係ないですよね」

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「いや、大いに関係あるね。俺はTバックが大好きなんだ。だから、君がどんな下着を履いているのかという問題は死活問題なんだよ」

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「これで、ハッキリしました。あなたはセクハラ常習犯です。訴えさせていただきます。ちゃんと録音もしました。逃げられませんよ」

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「それだけは、やめてくれ。妻はともかく、母に知られたら嫌だから」

👩
「あなたはマザコンですか？」

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「それの何が悪い。母を大切にして何が悪い？」

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「それは大切にしているのではなく、親離れできていないだけですよね？頭が狂ってるんじゃないですか？」

👨
「はーはっはっ、ついに言ったな、『頭が狂っている』と。その言葉は侮辱罪だ。君のことを訴えてやる！」

👩
「お好きにどうぞ、さようなら。バカは疲れますから。。。」

　私が仏頂面になりやすい原因を理解していただけただろうか？
　ギャグはいいけど、もっと面白いことを言っていただかないと、私には笑えない。もともと笑いの沸点がかなり高いのだから。私だって、好き好んで仏頂面をしているのではない。

おしまい

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