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短編 | カミングアウトコンビニ(remake-version)

(1)

 古墳とラブホしかない丘の上に、コンビニが一軒、ぽつんとあった。
 妖艶な看板には「カミングアウト・コンビニ」と書かれている。

「とりあえず、コンビニで、飲み物と朝の食べる物を買っていこう。ラブホじゃ、なにも置いてないからさ」

「そうだね、ナミも一緒に来る?」

「もちろん。こんな山奥で、車の中に1人ぼっちは寂しすぎる」

 私たちは、一緒に店内に入った。

「いらっしゃいませ。1人100円。お2人なので200円頂きます。過去の過ちを1つだけ嘘偽りなくお話して頂ければ、好きなだけ商品をお持ち帰りできます」

 不思議だと思いつつ、私からカミングアウトすることになった。

「僕は、学生の頃、タバコを一箱、万引きしたことがあります」

「そうですか。それはいけませんね。まぁ、もう昔のことですからいいでしょう。では、次はお嬢さん、どうぞ」

ナミの番になった。
「わたし、実は、この彼氏と付き合う前に、元カレを殺しました。そして、この辺りに埋めました」


(2)

 私は耳を疑った。ナミにかつて彼氏がいたことさえ初耳だった上に、人を殺していたなんて信じられない。

「うそだろ?本当に殺したのか?どうして?いつ?」

 私は矢継ぎ早にナミに語りかけた。嘘だと言ってほしかった。

 しばらくして、ようやくナミが話し始めた。

「一年くらい前にこの近くのラブホの中で、彼が酔いつぶれて寝ているときにドライヤーのコードで首を締めました」

「でもどうやって運んだんだ?」

「そこのラブホは知り合いがバイトしてたから、協力してもらったの」

「その知り合いのラブホでバイトしていた奴は、今どうしてるんだ?」

「ああ、その人も殺してこの辺に埋めました」


(3)

 ナミは二人も殺していたのか!私は衝撃が強すぎて、しばらくの間、声を出すことができなかった。

「待てよ。ここら辺に埋めたって、二人ともナミ一人で埋めたのか?誰かに手伝ってもらったのか?」

「ああ、埋めるのはそこにいるコンビニの店員さんに手伝ってもらったの。今日も、手伝ってもらうつもりよ」

 次の瞬間、私は後頭部を強打された。それ以降の記憶はない。さようなら、俺。


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