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エッセイ | 内積の意味をザックリと考えてみよう



はじめに


 計算はできるし、問題は解けるけれども、「そもそもなんの意味があるの?」と思うことがある。
 その代表的なものに「内積」がある。この記事では内積の意味を考えてみる。ザックリとした感覚をつかむことがこの記事の目的なので、数学的な厳密さを多少犠牲にする。イメージだけつかめたら、専門書にあたっていただきたい。


内積の定義

(1) 内積の定義


 ベクトルを学ぶとわりと早い段階で、「内積」というものを学ぶ。
 内積の定義は、上に掲げたとおりである。

 aというベクトル(上の定義ではaの上に「→」があるもの)と、bというベクトル(上の定義ではbの上に「→」があるもの)がある場合、それぞれのベクトルの長さ(|a|と|b|)とcosθを掛け合わせたものである。

 「→」を省略して書けば内積の定義

a・b= |a| |b| cosθ

つまり
a・b=|a|×|b|×cosθ

のように、3つの数値を掛け合わせたものである。

内積の定義

(2) だからなに?


 高校生の数学の教科書を開くと、余弦定理なんちゃらだから云々かんぬんという説明があって、内積の定義やら、それを「成分表示」したらこうなる、みたいなことが書いてある。

 「そういうものなんだなぁ」と思って受け入れて、例題を見よう見まねすれば問題は解ける。コサイン(余弦)が含まれているから、2つのベクトルのなす角を計算できるのだなぁ、というのは分かるけど、「そもそも内積ってなに?」が解消できないと気分が落ち着かない。

 そこで、内積の定義を次のように考えてみよう。

 (1)では、内積を3つの数値の値の掛け算として見たが、2つの掛け算として見ると少し見えて来るものがある。

a・b=| a | × ( | b | cosθ )
というように、
| a |と、| b |cosθという2つのものの掛け算だと考えてみる。


(3) コサイン(cosθ、余弦)ってなんだったっけ?


 話を続ける前に、コサイン(cosθ、余弦)というものを大まかに復習しておこう。
 とりあえず、θという角を
0≦θ≦180としておく。

上のグラフにあるように、
bという長さの棒(赤い棒)があって、
真上から明かりをともすと、
X(青い線)のような影ができる。
(⚠️Xはbの正射影という)

赤い線と青い線とのなす角をθとするとき、X÷bの値をcosθ
と定義する。

つまり、cosθ=X÷bだから、
X=b×cosθである。
内積にからめて言えば、
X=| b | cosθと書ける。

cosθの値は、
θ=0のときは1、
0<θ<90のときは0<cosθ<1、
θ=90のときは0、
90<θ<180のときは-1<cosθ<0、
θ=180のときは-1になる。

つまり、θの値が小さいほどXの値は大きく、θが大きくなるにしたがってXの値は小さくなる。

0≦θ≦180のとき-1≦cosθ≦1だから、辺々に| b |を掛ければ、

-| b | ≦| b | cosθ ≦ | b |
 



(4) もう一度、内積の定義とにらめっこしてみよう。


内積の定義

このとき記事では、
内積を3つの数値の掛け算としてではなく、2つの数値の掛け算として考えてきた。
すなわち、

a・b=| a | × | b |cosθ

この内積の値がいちばん大きくなるのは、ベクトルaとベクトルbのなす角θが「0」のとき、つまり重なりあっているときがいちばん大きな値になる。
いちばん小さくなるのは、ベクトルaとベクトルbのなす角θが180のとき、つまり2つのベクトルの方向が真逆になっているときいちばん小さな値になる。

簡単にいうと、内積とは、ある2つのベクトルの大きさがそれぞれ一定の場合、その方向性が近ければ近いほど大きな値になり、方向性が真逆に近づくほど小さな値になるということである


まとめ


この記事では、2つのベクトルの内積の意味をイメージでとらえようとした。
内積の値とは、2つのベクトルの方向性が近ければ大きな値になり、遠ければ小さな値となる。

ここでは記事が長くなるので触れなかったが、ベクトルの成分でcosθの値を表すと、統計学で登場する「相関係数」とどことなく似ていることに気がつくだろう。

内積に登場するcosθの成分表示が、相関係数に似ていると言ったが、相関係数とは内積の概念を拡張・応用したものだとも言える。



この記事では次のものを参考にした。


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