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数学エッセイ | 虚数を実数で表現する方法

数とは抽象的な概念である。

 今回の記事では高校レベルの数学を扱う。それほど難しくはないが、細かい説明をすると話が長くなるので、エッセイ風に書くことにする。

 小学生では整数(自然数、正の整数)、分数、小数を学ぶ。いずれもプラスの数(正の数)なので、実感として分かりやすい。

 中学生になると、「負の数」を学ぶ。正の数ほど親しみはないかもしれないが、ゼロを起点とした数直線を左にも延長すればよいだけなので、さほど抵抗感はないだろう。教科書で負の数を学ぶ前から、マイナスの気温や、ゴルフのスコアなどで知っている子どもも多い。

 高校生になると、「虚数」「複素数」というものを学ぶ。虚数を定義すると、中学生までは「解なし」としてきた二次方程式もすべて「解あり」となる。

 そもそも数字というものは、正の整数であれ、抽象的なものである。「5個のリンゴ🍎を持ってきて!」と頼まれれば、5個のリンゴを持っていくことはできるが、「5を持ってきて!」と頼まれても、どうすればよいかわからない。しかしながら、右手の指を数えれば「5」はイメージしやすい。

 虚数はどうだろう?「5i 個のリンゴを持ってきて!」と言われても意味をなさない。だから、同じ数字であるにも関わらず、「虚数」(「複素数」)に対するアレルギーが強いのも頷ける。
 
 虚数や複素数に対するアレルギーは、一般の人に限ったことではない。科学者の中にも、基本的に(素粒子のような)「モノ」の位置が「複素数」で表現されると気持ち悪さを感じる人もいるようだ。


虚数・複素数とは何か?

 虚数とは、二乗すると、-1になる数のことをいう。

また、2i 、5+3i のような形の数、つまり実数(中学生までに学んだ数直線上にある数) a, bをつかって、
a + bi の形で表される数を「複素数」という。


複素数平面

 実数(中学生までに習う数)では、「数直線」を考えて、実数の「居場所」を定めた。複素数でも同様に、「居場所」を定める。

ある複素数を Z = a+ bi とする。

複素数の「a」の値を横軸に、「b」の値を縦軸にとると、次のように可視化できる。


i を掛けるとはどういう意味か?

例えば、ある複素数が
Z = 2 + 3i だとすると、次のように表せる。

「2 + 3i 」の居場所(↑)

次に、 z に「i」を掛けるとどうなるだろうか?
i × z
= i ( 2 + 3i )
= 2i + 3i × i 
= -3+ 2i 

さきほどのグラフに「-3 + 2i」を重ねてかくと次のようになる。

つまり、「 i 」を掛けるとは、複素数平面上における「90度」の「回転移動」を意味する。


同じことは行列でも表現できる!

「90度回転」を表現するには、複素数に 「i を掛ける」他に、行列を用いても表現できる。

回転を表す行列は、次のような行列であった。

原点を中心とする回転

90度回転ならば、
θ=90 にすればよいから、

原点を中心とする90度回転

さきほど
複素数 Z = 2 + 3i は、i を掛けると
-3+2i になった。
係数に着眼すれば、
( 2 , 3 ) → ( -3 , 2 ) である。

行列でも同じ結果であった。


結び

「 i を掛ける」ことと、「0, -1, 1, 0」という二行二列の行列を掛ける意味は同じだ!、ということをグダグダ書いてみた。
私は文系だったので、大学で行列を使ったことはあまりない。微分のヤコビアンで見かけた程度である。
高校生のとき行列を学んだときは、「学ぶ意味」がわからなかった。今も十分に理解しているとは言えないが、「虚数」「複素数」という、実感を伴わない数でも、行列を使えば実数だけで表現できるというのは、すごいことなのかもしれない。

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