短編小説(ほぼ400字) | まなざし
さっきから視線をおくっているあなたはだぁれ?背中の一点が無性に熱くなって、気になって仕方がないの。でも、振り向くと誰もいないし、その瞬間に熱さも消え失せる。不思議なものね。
今度はあなたに対して、私から熱視線をおくってもいいかしら。あなたはどこにいるのか、私にはまったく見えないけれど。
私は瞳を閉じて、私に熱視線をおくっていた人物に会えるように念じた。
すると、脳裏に、ぼんやりと、徐々に、私に視線をおくっている人物の表情がゆっくりと浮かび始めた。
こ、これは。私はこの人物に見覚えがあったが、どこの誰だったのか、なかなか思い出せない。間違いなく、私の過去の一時期に大きな影響を与えた人物なのだが、どこの誰だっただろう?
私は記憶の糸を手繰り寄せつづけた。ずっとずっと昔まで。そして、私が3歳になる直前まで、記憶を手繰り寄せた。2歳の最後の日まで思い出したとき、そこに現れたのは、生き別れた弟の姿だった。
おしまい
フィクションです。
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします