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短編小説 / 変身

(1)

 ある晴れた冬の夜、私は望遠鏡で遥か遠くに輝くひとつの星を、じっと眺めていた。輝いては消え、また暫くすると輝く。自分の知らない恒星かもしれない。
その後、ずっと見続けたのだが、2時間後に急に消えてしまった。きっと錯覚だったのだろう、と自分を納得させて、その日は寝てしまった。

(2)

 幸いなことに、次の日も雲ひとつない夜空だった。私は昨日と同じ方角に、望遠鏡を向けた。見間違えていなければ、今日もまた見えることを期待して。

 「見つけた」と私は心のなかで叫んだ。輝いては消え、また暫くすると輝く。昨日とまったく同じ輝きかたをしていた。
 しかし、不思議なことに、ずっと見続けていると、その星がだんだん大きく見え始めた。
 最初は米粒くらいに見えていた星が、卓球のボールくらいの大きさに見えた。もしかしたら地球に近づいて来ているのではないか?
 これ程大きく見えるならば、もしかしたら、肉眼でも見えるのではないか?
 私は一旦望遠鏡から目を離して、星の見えていた方角に目を向けた。

 肉眼では、何も見ることが出来なかった。

(3)

 それから数分後、もう一度望遠鏡を覗いてみた。奇妙なことに、今度は地球と瓜二つの星が見えた。そして、徐々にその星が大きく見え始めた。私が見ている星は、間違いなく地球だと確信した。
 次の瞬間、望遠鏡を覗く私自身の姿がハッキリと見えた。

 私は地球に衝突した。
 
 私は遠い昔に死んで、遥か彼方の星になっていたことを、今、思い出した。
私はようやく地球に戻って来たのだ。





おしまい


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