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ある日突然、学校の先生が会社員になってみた


学校退職

大学卒業後、小・中学校に4年勤務して結婚することになりました。
学校の仕事の魅力は沢山あります。
   子ども達との関りが楽しいこと
   男女対等に仕事ができること
   夏休みなど長期休暇があること
   そしてボーナス
でも、ゆくゆくはピアノの先生になりたいと思っていたので、学校を辞めることに全く未練もなく、あっさり寿退職をしました。

日本語ワードプロセッサー

ちょうど私が学校に勤務していたころ、日本では、まだパソコンがあまり普及していなくて、ほとんどの人が「日本語ワードプロセッサー」を使っていました。当時の教職員も全員ワードプロセッサーで試験問題を作り成績管理をしていた時代です。

ちょうど私が学校を退職するころ、少しずつパソコンの普及が企業へ、そして一般家庭へと盛んになってくる頃でした。今は検索するとなんでも出てきますが、その頃は検索しても、まだ大した情報がなかったことが印象に残っています。

パソコンスキルを身に付けたい

パソコンの普及には、まだ時間がかかると予想していましたが、先取りでパソコンのスキルを身に付けたいと思いました。ピアノの先生を本格的にスタートする前にパソコンスキルを身に付けて、パソコンのできるピアノの先生になりたいと思いました。

考えた末、まだ体制が整っていないであろうパソコンスクールに学費を払って行く気にもなれず、コンピューターを扱っている企業への就職を検討していくことにしました。

当然スキルも経験もないので、面接に落ちたりもしました。中には「学校の先生だったの?真面目すぎだと、うちの会社では勤まらないから。」そう言って面接不合格になったこともありましたが、何とか希望通りの就職ができました。それにしても、学校の先生=真面目という考え方には驚いてしまいました…。

就職したのは広告代理店でした。

オフィスにはパソコンが並び、コンピューターのスペシャリストや、マーケティングやセールスのスペシャリストがいました。

そしてお決まりのオツボネ事務員も2名。私はその他もろもろの事務員15名中の一人となり、パソコン業務や電話応対やマニュアル作成の仕事を中心にしていました。

オツボネの存在

学校は管理職以外、みんな同僚という意識が強いように思います。年齢的な先輩後輩の関係は感じられましたが、基本、男性も女性も関係なく同等の立場で仕事をしていたイメージです。

一般企業に就職して、まず最初に驚いたのが「強烈なオツボネ」の存在です。電話の取り方、休憩時間の過ごし方、言葉遣い等、こと細かに指摘をされます。学校では経験のないことだったので、とても驚き、かえってそれが新鮮でもありました。中にはストレスに感じて会社を辞める人もいましたが、意外に自分は平気でした。あまり気にしない性格のおかげだと思います。

社員教育があまり整っていない会社だったので、仕事も自分でメモしながら覚えていきます。そういう意味ではオツボネの注意も社員教育の1つだったのかもしれません。

毎日そばで仕事をさせて頂く人は、私より少し年下の先輩でした。幸い、とても冷静で穏やかで、間違っていることは間違っている、そして分からないことは優しく丁寧に教えてくださるような素敵な女性でした。

この時つくづく感じたものでした。私は将来、オツボネより後者の女性のようになりたいと…。


パソコンスキル

話が脱線しましたが、その当時はワードプロセッサーからパソコンに変わりつつある時代だったので、Excelが扱えるだけでも「お~~!」と言ってもらえるレベルの世の中でした。

ずっとワードプロセッサーを使っていた私は、Wordは抵抗なく使えたのですが、Excelになじむのに少し時間がかかってしまいました。

先の優しい女性に、毎日教えてもらったおかげで、少しずつExcelにもなじむことができました。これが私のコンピューター歴の入り口になったので彼女には大変感謝しています。先日Facebookで10年以上ぶりに再開し、感謝の気持ちを伝えることができました。

広告のスペシャリスト

私とは違う部署でしたが、仲のいい同僚に、コピーライティングや広報活動に詳しい友だちがいました。

時々、仕事の打ち合わせで彼女のデスクを訪ねたら、出来上がったチラシを見せられて「どっちがいい?」と、よく尋ねられました。違いがよく分かるものもあれば、私にはよく分からないものもありました。

すごいと思ったのは、「このチラシで出したらこういう反応だったけど、こっちのチラシで出したらこういう反応だった」と、彼女がデータを取り続けていたことです。

スペシャリストたちには当然のことかもしれませんが、学校現場ではあまりそういったことを目にすることがなかったので、とても勉強になりました。ピアノ教室経営に役立つ知識だと思いセミナーを受ける感覚で友だちの話を聞いていました。

「この一言で気持ちを動かす」
「この言葉をこの位置に表示するからこそ気持ちが動く」

彼女が力説していたのは、そんな世界でした。


ターゲットを絞る

広告を出すとき、この商品は40代がターゲット、でもこちらの商品は20代がターゲットなどということを意識して、地域や媒体の他にカラーや言葉を選ぶということも重要になってくることや、よりターゲットを絞った内容のコピーライティングが効果的であると、データーを見せながら友だちが教えてくれました。

ピアノ教室の場合は色いろな絞り方があると思いますが、例えば
   大人向けの教室
   子供向けの教室
   受験生向けの教室
           ピアノコンクールに力を入れている教室

                                                            などなど…

今どき、町を数メートル歩くとピアノ教室があると言われている時代です。近所の教室のカラーをよく調べて、周りの教室にない特徴を持った教室を作っていくことも生徒確保のためには必要があると感じました。

営業する

企業に勤めた時に会社の付き合いで、たくさんの経営者の方とお話しする機会に恵まれました。特に印象深かったお話に、社長の若かりし頃の苦労話があります。

   自分の会社の知名度を上げるために何か良い方法がないか考えて、自分や家族で協力してNTTの「104」に1日中電話をしまくったというお話。「104」に電話して「〇〇会社の電話番号を教えてください」と自分の会社の電話番号を尋ねる。毎日電話していると覚えてもらって、「〇〇系の会社を教えて」と問い合わせただけで、自分の会社を一番に紹介してもらえるようになったという社長のエピソードは印象的でした。

また、ある不動産会社の社長は会社を立ち上げた時、経費節約のために毎日5000枚のチラシを地図を片手にしらみつぶしに配布したそうです。問い合わせや成約があった時は嬉しくて仕方がなかったというエピソードです。

どれも学校にいては聞くことができないようなお話です。とても印象に残った話で、後にピアノ教室を開業した時には、社長たちのことを思い出しながら私も自分にできる営業活動をしてみたものです。

その中でも効果があったのは、ピアノ教室のチラシを小児科に掲示して頂いたことです。自分の教室のエリアの小児科を全て調べて、アポイントを取りチラシ掲示のお願いに行きました。どこの小児科も掲示を快く受けてくださいました。そして効果も抜群で多くの新規生徒さんが、そのチラシを見て教室に入会してくださいました。

こういったことは一般企業勤務の経験がなければ、思いつきもしなかった行動のような気がします。


学校を辞めたことで手に入れたこと

学校に勤めたことで手に入れたことが沢山あります。
   数多くの生徒と関わる経験を持てたこと
           教材研究のコツを得たこと
   子ども達の得意と不得意を知ったこと
           学校音楽の教育の現場を沢山見ることができたこと
           子ども達の学校での様子を知ることができたこと

そして一般企業に勤務して手に入れたことも沢山あります。
             パソコンスキルを短期で身に付けることができたこと
             広報活動の要点を知ったこと   
             電話応対に慣れたこと
     自分で営業活動ができるようになったこと
             数多くの経営者の話を聞くことができたこと
            

一般企業に3年間勤務したことは、結果、後のピアノ教室経営のために、とても良かったと思っています。広く浅く色いろなことを知ることができたからです。学校を退職して、人生の岐路に立った時は、回り道をすることをとても迷いました。

でも、集客・営業・ホームページ作成・電話応対・教室経営・指導…全てを一人でしなくてはならない個人ピアノ教室で、一般企業での経験は大いに役立つものになったことに間違えないと今ならハッキリ言えます。


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