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【書店さまが選ぶ当店のイチオシ!】

『比べず、とらわれず、生きる』 枡野俊明 著

  株式会社勝木書店 営業本部 海東正晴さま
【取材・文】PHP研究所西部書店普及部 北野裕士

弊社は福井を中心に北陸と首都圏で主に複合型の書店を展開しております。首都圏には最初に出店したKaBoS宮前平店(神奈川県川崎市)ほか、4店舗があります。
ところで、多くの出版物は、文化やファッションなどと同様に、流行は都市部→地方という順序をたどります。ベストセラーも売れはじめるタイミングに長短の違いはあれ、一定の時差が生じます。あまり逆はないものです。そういう意味で、今回ご紹介する枡野俊明著『比べず、とらわれず、生きる』は、福井の店舗から売れはじめた希な例と言えるかもしれません。もちろん種も仕掛けもありますが……。

最初に大きく仕掛けたのはSuper KaBoS新二の宮店(福井市)で、売上げも規模も弊社中最大店舗です。ありがたいことに、ここには「当店の推し」を信頼してくださるとびっきりのお客さまが多くおられます。うちの文庫担当がそのお客さまたちに向けて、この本を大きくアピールしたのです。「KaBoS」のロゴが目立った帯と、「福井県でいちばん売れています。」という一文をメインにしたPOPボードをPHP研究所の担当営業の方につくっていただき、集中展開したのです。そのかいもあって、当店で大きく火がつき、それが北陸のグループ店舗、そして首都圏の店舗にまで広がりました。

私には以前から、「本への強い思いは伝搬するものだ」という信念があります。「読み手」と「書き手」がいて、その間にわれわれ「売り手」が存在するわけですが、われわれの役割の一つは「推す」ことであろうと思っています。「推す」ことを鍛錬することが、書店員にとって最も重要なスキルアップの一つだろうとも。
さて、本題です。そばに置いておいて、どんなときにも寄り添ってくれる本というのは、そうそう簡単に見つかるものではありません。古典の名著は含蓄のある言葉の集まりですが、表現も内容も少々古臭く、そして普段あまり本を読まない人にとってはハードルもそれなりに高いものです。この本のよさはそのハードルを下げたことにあります。優しい言葉、現代に即した文章でありながら、深みのある言葉で、読む人に寄り添ってくれるのです。まとめて読まなくてもかまいません。思いついたときに好きなところから開いて読んでみると、ふうっと気持ちが楽になります。きっと一生の友になるに違いありません。