見出し画像

「"山"と"谷"を楽しむ建築家の人生」を読んで。若手建築フォトグラファーのこれまでとこれからの話。

どうも、建築フォトグラファーの藤川です。
いつも読んだくださっている方、こんばんは。
初めての方、はじめまして。

Xでは建築写真キャット🐈というアカウントで活動しています。
建築写真撮影を生業としており、普段は住宅や店舗の竣工写真や不動産物件写真など関東を中心に建築を撮って生きております。

さて、2020年10月の私のこのツイートをご覧ください。
(正真正銘ツイートです、ポストじゃない。)


「読了したので記事にします!」

気がついたらそう言ってから3年半以上が経過していました…
実は2020年10月5日時点で5000文字程度の文章が書いてあったのですが、最後纏めきれずにUPを断念していたようです。(おい)
ということで書きかけの不完全な文章ですがせっかくなのでここに残しておきたいと思います。

前回予告していた新しい物件写真についての記事は次回をお待ちください!すみませんっ!

ではいかにも駆け出しのフォトグラファーが書いた感想文を3年半前にタイムスリップしたつもりでご覧ください。少し修正は入れてます。


1.なぜこの本を手に取ったのか?


まずこの本を最初に知った場所はTwitterです(正真正銘ツイッターです、Xじゃないよ)。アーキテクチャーフォトの後藤連平さんがRTしていたこの本を読んだ建築学生さんの感想から興味を持ちました。

私はこれまで不動産業界を中心とした量産性を優先したあまり個性のないマンションや住宅の建築撮影を主に行ってきました。(2020年当時)

その中である時リノベーション撮影に関わったり、内装にこだわった店舗撮影等に関わる機会があり、無作為的な被写体ではなく、デザイナーさんや施主さん、つくり手の意思が反映された建築に出会い、それをきっかけに意思のある建築に強く惹かれるようになります。

いままで全く無知であった建築について少しでも知識を得ようと勉強を始めると、建築の奥深さや美しさ、建築家の方の考え方に魅せられていきました。
そしてもっと意思の込められた建築を撮りたいという気持ちが日に日に増していきます。(意思のない建築なんてないと今では思ってます。若いねぇ。)

今後、建築家の方のつくりだす建築を撮影するのであれば、まずは建築家の方々が何を考えてどう生きているのか知りたい、それを知る方法をしばらく模索していました。

そんな時にTwitterで見かけ出会ったのがこちらの本。まさに私にはドストライク。
私にとってこの本の魅力は大きく2つあります。

ひとつめはインタビュー形式であること。
ただつらつらと文章で綴られているのではなく、インタビュアーとの会話形式のため飽きることなくサクサク読み進められ、自分の中にもスッと自然と入ってきます。さらに質問の内容も当たり障りないようなものではなく、読者が普通聞けないけどちょっと気になるところまで踏み込んだものも多くあります。例えばお金のこととか、経営状況のこととか。それ聞いちゃうんだ!と何度思ったことか。しかもそれに対する回答も飾ったりせず素の回答だと感じるんです。

ふたつめは一冊で複数人の建築家の方の考えをまとめて読むことができること。
通常この手の書籍は一人をクローズアップしたものが多いですが、こちらの本ではなんと7名の建築家とインタビュアー3名、合計10名もの人の考えを一度に読むことができます。こんなに効率よく知識を得られる本は本当に珍しいですよね。私は嫌いな言葉ですが一言で言えば”タイパ”が良いみたいな感じです。

本の価格は若干高めですが(建築系としては普通、むしろ安い?)、特にふたつめの理由から結果的にお財布にも優しいです。
前向きな人生感と指針を示してくれる本なので、将来を不安に思う学生さんに特にオススメです。
これは建築学科以外の学生さんでも将来独立したいと考えているけど悩んでいるという人にとってもかなり勉強になると思います。細かい内容というよりマインドや人生感が建築以外の業界にも通じていると思います。自力で切り拓いていくような職業、職種は特に。

2.なぜこの記事を書こうと思ったのか?


第一は自分の頭の中の整理と備忘録。
もうひとつは西田さんの言葉の影響です。「読んだ感想と一緒に、あなたが経験した苦労話などのネタを一緒に披露してほしい」という言葉に対するアンサーを私なりに実現したいと思います。私目線だと経験はまだまだ浅く、語るほどないので今何を感じ、何を考えるのかについて少しだけ前の思い出話を交えながらお話しできたらと思っています。

では前置きが長くなりましたが、本文の内容についてお話ししましょう。

3.建築学科という衝撃


まず全体を通して驚いたのが建築学科についてです。建築学科はとにかく大学時代から建築事務所で働いたり実務をしていることを複数の建築家さんのエピソードから知り衝撃的でした。その分相当過酷な環境であり、その中で学生さんは真剣に建築に向き合っていることを知りました。心から尊敬します。そんなことも知らなかったのかと叱られそうですが、本当無知で申し訳ないです。

私はこれまで大学で学んだことがそのまま社会人でも役に立つだなんて迷信だと思っていました。資格を取ることがひとつの目標でもある学科だと思うので今思えば当然のことなのですが。意識的には医学部や薬学部と似た感じでしょうか。

私の大学時代の専攻は分子生物学で社会に出てからの仕事と研究内容は無縁も無縁。実際にそれを活かすとなると研究職ぐらいしか道はないですし、相当な狭き門です。そのため多くの学生は全く畑違いの会社に就職します。化学メーカーや食品業界が比較的多いぐらいです。

そういう私もある食品会社に新卒で入社しました。
そこで日本中の誰もが一度は食べたことがあるであろう商品の製造や開発に関わらせていただく貴重な経験をしました。その中で本当に偶然大学での知識が活きる場面があり、それは顕微鏡を用いた原料の分析です。大学時代は植物の遺伝子組換えを行い、顕微鏡を用いた観察分析をしていたので顕微鏡に関しては一般的な人よりも経験や知識が多かったことで、新人ながらも他の誰もやったことのないような仕事を任せてもらっていました。早々からそんな機会をいただいていたのはありがたいことです。

ちょっと話が脱線しましたが、それぐらい大学で学んだことは社会に出てからそうそう役に立つものではない、役立つとしても奇跡レベルという認識が当然だった私からすると、学生時代から実践や現場を体験できる建築学科って素晴らしいなと驚いたわけです。就職後のイメージもしやすそうです。しかしのその一方で現実を突きつけられ、将来に対する不安を抱きやすい一面も持ち合わせているのだろうと推測します。実際ツイッターを見ていてもすごくしんどそうにしている建築学生さんは珍しくありません。
そういう人にこそ、この本を是非読んでもらいたいです。


4.特に響いた建築家の言葉や思想


読みながらメモをした部分と、そこから感じたことを箇条書きで書き留めておきます。詳しくはぜひ本を購入してご自身で読んでみてください。
↓ここからも買えます。(アフィリエイトリンクです)


佐久間さん
私が感じたこと:ご自身の失敗談を赤裸々に語ってくださっていて勇気づけられました。

○どうして自分からお客様がその商品サービスを買うのか
○お客さんが買いたいと思うものを売らなければならない
○今業界、顧客に必要とされていることとは?
○インターネットで調べると建築では法的なところがネックになっていることが見えてきた
○あえてずらしたことをしているわけではなく、広い業界の中で自分の力が活かせる場所を見つけた

谷尻さん
私が感じたこと:谷尻さんは人間的に魅力に溢れている。こんな人と仕事したいと思わせる天才だと感じた。モチベーショングラフが超シンプルでクスッと笑ってしまった。谷尻さんのように次へ次へ新しいことを切り開いていく人になりたい。

○住宅設計を建築家に頼むお客さんは限られており、牌の取り合いになる
○その時自分より経験がある人や名前が売れている人の方がその牌を取りやすい。そのため取り合いではなく、牌を増やす方が優先
○挑戦しないこと自体が失敗
○設計事務所がこんなに安い給料ではやってられないと何十年前からずっと言われているのに未だに変わらない。仕組み自体を変えないと業界の人気がなくなっていく危機感
○業界そのものを根本から良くしていく意識
○人としての魅力で仕事が来るようになる。みんな建築が鍵と思っているが頼む側は人を見て頼んでいる
○個性を生かして信頼してくれる人を1人でも増やす


小堀さん
私が感じたこと:出来る限り現実に近い写真を目指す建築写真の役割とは何か。ありのままを切り取ることも重要だが、もしかしたら写真の役割はもっと別のところにあるのかもしれない。例えばその写真を見た人がその場所に足を運んでみたくなるような、住宅であれば住んでみたくなるような、そんなきっかけの感情を惹き出すことも建築写真の重要な役割なのかもしれない。そのためにはある一定の固定観念を捨てる必要があるかもしれない。
このような考え方をしている方がいらっしゃることを知ることができて良かった。他の方がどう考えているかは聞いたことはないが、そう考えると建築カメラマンなんてものはその建築に関わるのは竣工時のごく一瞬でありチームの一員になるのは非常に難しいと思う。しかし本当の意味で良い建築写真を撮るにはその現場に関わったより多くの人達の思いに寄り添っていくべきだと個人的には思う。そうしなければ見えてこない建築物の表情というものがあると思うから。そういったチームの視点も取り入れつつ、部外者の自分だからこそ撮れる写真も撮っていく。それが目標だと今は考えている。

○“建築がどんな意図でつくられ、どんな考えが込められているか。それを一つひとつ小説を読み解くように味わうためには、実測しかない。
○建築は一人ではつくれない。メーカーや現場監督、技術者、建築家が協力してチームになってつくりあげるもの。小堀さんはそのチームの誰かがこれは自分の作品だと言うのは正しいと考えている。
○子供に親の職場を見せる。子供に親の働く姿を見せることが教育になる。色々なところに連れて行く。奥様は会社の経営契約全般をしている。
○“建築って「楽しさ」の塊”
○頭でっかちにならない。本を読んだり色々な情報を知ることで分かった気にならない。いろいろ分かったつもりでも実際に経験してみたら世界はもっと広い。挑戦して経験。

私が感じたこと:自分には1歳息子がいるがこの形は将来の自分にとっての理想系かもしれない。べにやに関しても奥が深すぎる。その地域にあるべき建築の形を探すところから始まるということだけでも深いなぁと思えば、始まりは更にその先で、その地域の食材や食器から始まると。伝統工芸などを遺し伝えるためのことまで考える。もはや建築家の枠を超えたことをされている。こういう文化の価値を高めていくようなことをやれる人になりたい。伝統的なものや文化財的なものをもっともっと撮りたいと思った。そのためにはその土地の食べ物を知るところから始まる。深い、深すぎる。事務所の壁に貼られた野口秀世氏の言葉気になる。(野口秀世追悼小冊子より)
小堀さんの考え方に感銘を受けた。いつかお会いしてみたい。岐阜県生まれなことも勝手に親近感。

五十嵐さん
私が感じたこと:図面をひたすら描き続ける5年を苦痛の5年間だったと素直におっしゃる姿に等身大なインタビューであることが現れていてとても良い。建築家を志し地道な仕事をこなす姿が勝手に親近感。とにかく先人の方の建築をよく見て分析して、自分の建築に落とし込んでいる印象。自分ももっと建築写真家を見て写真を見て自分なりの解釈で自分の写真を進化させていきたい。

○ミースを学生時代に教科書で見てもイメージが湧かなかったが、雑誌で見ると迫力があって格好良かった。
○普通のことばかりするのに嫌気がさして色々なことを知ることができずにいたときにデビュー作の矩形の森で吉岡賞受賞をきっかけに建築界の中心のようなところまで行ってしまう実力に感銘。夢のある話。

森田さん
私が感じたこと:日本中の川を下りながら旅したり世界を旅したり左官職人に弟子入りしたり、迷いのない圧倒的な行動力と人生観の大きさに魅力を感じる。

○“時間の設計”という価値の高い考え方
○「あまりプロとしてリスペクトされず、デザインに口出しされて、決定権はクライアントが握る、みたいな雰囲気を感じる場合は断ります」
○「給料が安くても最初に一流の仕事を学べるところに行った方がいい」
○「自分の生き方をどうデザインするか」
○「一見無駄に思えるようなことに、あえて挑戦するべきですよ」

山﨑さん、西田さん、後藤さん
○どこに就職すればどうなれるのか、ではなく、どうすれば自分の学びたいことが学べるのか




すみませんここで力尽きたようです…
最初のお二人の部分のメモ書きは残念ながら紛失しておりました。
ぜひご自身で読んでみてください。


5.これからの話


皆さんおかえりなさい、どうも2024年の私です。
この本を読んで3年半以上経っているのでこの時感じたことも踏まえて、今何を考えているのか、これからどうしていくのかを少しだけ書き残しておこうかと思います。

まずは不動産物件写真をやりきりたい。
ここ2〜3年で不動産写真に関して自分がやれるあらゆることをやり尽くしたいと思っています。具体的には物件写真の価値の向上、正しい認識、そして新しい形。外注でプロに撮影を依頼する以外の方法。完全内製化や一部内製化。
これからさまざまなサービスを個人の枠の中で展開していきたいと思っています。個人だからできる職人的な手厚く高品質なサービス、そこを掘り下げていきます。

そして不動産写真を一旦やり切ったら10年後には建築写真家と呼ばれているように活動の分野をシフトしていきたいです。もちろん全く別分野の写真であることは承知しているので、同時進行で日々精進しています。
現在も工務店さんや住宅会社さん、そしてデザイン事務所さん等の建築を撮影させていただいておりますので、そこをより一層強化してきながらいわゆる建築家住宅のような建築に関しても少しずつ撮影をさせていただけるよう動いていきます。

もしここまでお読みくださって私に興味を少しでも抱いてくださる建築家の方がいらしたらぜひご連絡ください。
ポートフォリオはこちらです→https://cat-whisker.com/


って、そんな直球どストレートの営業が通用するわけないやーん笑

まぁ建築写真家への道は険しいですから気長にやります。

ということで、このようにたくさんのことをこの本から受け取りました。
先ほども書いたように建築学生さん、建築に関わらず若手でまだ道に迷っている方、そういう方におすすめの本です。
ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?

※アフィリエイトリンク


それではまた次回の記事でお会いしましょう!
あ、いいねだけ押しておいてくださると嬉しいです!
よろしければフォローもお願いします!

最後までお読みいただきありがとうございました。グッバイ!

この記事が参加している募集

人生を変えた一冊

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?